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その日の夜、管制室の明かりが落とされていく中、片山だけがデスクで仕事を続けていた。新システムの試験運用初日で気づいた点や改善策をメモにまとめながら、次の運用日にはさらに円滑に業務が進むよう、頭をフル回転させていた。
片山がペンを走らせていると、ふと隣の席から声がした。
「片山さん、まだ残っているんですか?」
顔を上げると、北村が自分のコートを手に持ちながら立っていた。彼女は少し驚いた表情で片山を見つめている。
「初日でうまくいった部分も多かったけど、課題も見えてきた。早めに対策を考えておきたい。」
片山は微笑みながら答えた。
「私も手伝います。」
北村がデスクに戻り、片山の隣に座った。
「いや、もう遅い時間だし、無理をするな。今日は頑張っただろう。」
「いいえ、私もこのシステムになれたいです。それに、片山さんだけに任せるのは申し訳ないですから。」
その真剣な表情に、片山は少し困ったように笑いながら頷いた。
「じゃあ、一緒にやろう。」
しばらくすると、中山がコーヒーカップを持って戻ってきた。
「なんだ、まだやってたんですか?俺も手伝いますよ。どうせ明日も早いんだし、このまま泊まり込みでもいいくらいだ。」
伊東もその会話を聞いてデスクから立ち上がった。
「じゃあ僕も参加します!」
「おいおい、全員集合か。」
梶原が苦笑しながらデスクの向こうから声をかけた。
「俺も手伝いますよ。片山さんがここでくたばるわけにはいかないからな。」
こうして、4人の管制官が片山の周りに集まり、それぞれの視点で意見を出し合いながら作業を進めていった。
その様子を廊下の窓越しに見ていた高橋と牧村は静かに話を交わしていた。
「本当に良いチームですよね。」
高橋がコートのポケットに手を突っ込みながら呟いた。
牧村が頷きながら答える。
「こういう雰囲気を作れるのは片山君の人柄だろうな。みんなが自然と集まってくる。」
「新システムの導入は大きな挑戦だが、このメンバーならうまくやれるだろう。」
高橋は窓の向こうを見つめながら続けた。
その時、外では風が強まり、窓ガラスに雨が叩きつけられる音が聞こえた。
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一方、管制室内では、片山たちの作業が着実に進んでいた。北村がメモを取りながら提案した。
「ここは、次回の業務開始前に全員に再確認してもらったほうが良さそうですね。」
中山が頷きながら、意見を述べた。
「それに、通信トラブルが起きた時のマニュアルも見直した方がいいな。今回の障害対応はうまくいったけど、もう少し手順を明確にしたほうがいい。」
伊東は少し緊張した様子で、
「僕、まだまだ勉強不足だなって今日改めて思いました。でも、次はもっと迅速に対応できるように頑張ります!」
と意気込んでいた。
梶原がそれを聞いて笑いながら、軽口を叩いた。
「お前、そんなに力んでたら次もミスするぞ。リラックスしてやるのが一番だ。」
「そういう梶原さんも、さっきの指示、少し焦ってましたよね?」
北村が笑顔で切り返すと、梶原は肩をすくめて
「バレたか。」
と苦笑いを浮かべた。
片山はそんなやり取りを聞きながら、と感謝の意を込めて言った。
「みんな、それぞれの視点から良い意見を出してくれているな。こういう議論が次の業務の精度を上げてくれる。」
やがて、時計の針が深夜を回るころ、片山がようやく立ち上がり声をかけた。
「これで今日の作業は一区切りだな。みんな、ありがとう。」
北村が微笑みながら、
「お疲れさまでした。でも、明日も早いので、ちゃんと休んでくださいね。」
と念を押す。
中山と梶原も
「じゃあ、そろそろ帰るか。」
と言いながら片付けを始め、伊東は最後まで片山の資料を手伝っていた。
オフィスの明かりが消え、全員がそれぞれの荷物を手に帰路につく準備を始めた。片山は窓の外に目をやり、吹き付ける雨と暗い空を見つめた。
ふと、胸の奥に小さな違和感が芽生える。
「嫌な予感がするな……。」
片山は呟くように言いながら、コートを羽織った。その声を聞いた北村が振り返り尋ねた。
「片山さん、どうかしましたか?」
「いや、ちょっと天気が気になってな。」
片山は笑顔を見せたが、その視線はどこか遠く、まだ窓の外に向けられていた。
その後、全員が揃って建物を後にし、それぞれの帰路に着いた。片山の胸の中に広がる予感は、冷たい風とともに消えることはなかった。




