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AIRPORT 4 : 東京航空交通管制部  作者: Sully Hughes and Jeff Wright
Chapter 1

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2

片山は、着任の挨拶を行うために部長室へと足を運んだ。廊下を歩きながら、初日の独特な緊張感が徐々に高まっていくのを感じる。羽田空港での経験を重ねてきたとはいえ、新しい環境での第一歩には特有のプレッシャーがあった。


部長室のドアを軽くノックすると、奥から穏やかな声が聞こえた。


「どうぞ。」


ドアを開けると、部屋の中央にはこの東京コントロールのトップである、牧村慎一が座っていた。50代後半と思われる彼は、短髪で鋭い目つきをしているが、その表情には落ち着きと人を受け入れる温かさがあった。そして、もう一人の男性がソファから振り返った。片山より少し年上に見え、鋭い目つきと背筋の伸びた姿勢が印象的だった。


「君が片山君だね。」


牧村が微笑みながら声をかける。


「はい。本日着任しました、主幹管制官の片山直樹です。どうぞよろしくお願いいたします。」


片山は軽く頭を下げ、続けてソファに座る男性に視線を向けた。牧村が紹介する。


「部長の牧村だ。こっちは高橋勲先任管制官。君の直属の上司になる。これから君は主幹管制官として、彼の下でチームを引っ張っていってもらいたい。」


高橋は片山に向かって手を差し出した。


「高橋だ。これからよろしく頼む。」


片山はその手を握りしめて答えた。


「こちらこそお願いいたします。」


高橋の握力からは、その厳格さと責任感が伝わってきた。


挨拶を終え、牧村はにこやかに言った。


「君の羽田空港での実績は聞いているよ。私も大変期待している。知っての通り、ここACCは東日本全体の広い空域を管轄する。責任も重いが、その分やりがいも大きいはずだ。どうかその経験を存分に活かしてほしい。」


「ありがとうございます。精一杯努めさせていただきます。」


片山は力強く答えた。


部長室を出ると、片山と高橋は廊下を歩きながら話を始めた。高橋がふと口を開く。


「片山君、いろいろ聞いたぞ。羽田では4年前のサイバー攻撃や、一昨年のサウスアジア航空の緊急着陸、どちらも君が陣頭指揮を執って事態を収めたと。」


片山は少し顔を赤らめながら、控えめに答えた。


「いえ、大勢の協力があったからこそ、何とかなっただけです。」


「謙虚だな。でも、そういった実績があるからこそ、ここに来たんだろう。それで、片山君、年齢はいくつだ?」


高橋は少し微笑み、話題を変えた。


「今年で51歳になります。」


高橋は少し驚いた表情を見せた。


「その年齢と経歴なら、先任や管理職に昇進していてもおかしくないだろう。現場が好きなのか?」


片山は言葉に詰まり、一瞬考え込む。


「そういうわけではないですが、自分にはまだ学ぶべきことが多いと思っています。」


高橋は軽く肩をすくめた。


「なるほど。とにかく、ここでも期待している。ACCは日本の空を管理する重要な場所だ。経験豊富な君が来てくれて心強いよ。」


「ありがとうございます。」


片山は静かに答えた。


歩みを進める中、高橋はさらに話を続けた。


「ここACCでは、羽田や成田だけでなく、東日本の地方空港や軍用機の運用も絡んでくる。一空港の管制よりもスケールが大きい。空域の制御は複雑で、プレッシャーも大きいと思うが、まずは肩の力を抜いてやってくれ。」


「はい、そうします。」


片山はうなずきながら、徐々に新しい職場の雰囲気を感じ取り始めた。



________________________________________



会議室に到着した片山と高橋。片山がドアを開けて入ると、数名の管制官たちがすでに着席していた。それぞれが資料を手にしながら談笑していた。しかし、片山の姿を見ると、全員の視線が彼に向けられた。


高橋が前に立ち、軽く咳払いをして口を開いた。


「おはよう。早速だが、今日は以前にも言った通り、新しい管制官を紹介する。片山直樹君だ。以前は羽田で勤務をしていた。これからはこのACCで、主幹としてチームを支えてもらいたいと思っている。よろしく頼む。」


片山は一歩前に進み、みんなに向かって軽く頭を下げた。


「本日よりこちらに異動になりました、主幹管制官の片山直樹です。これまで羽田空港で4年間勤務してきましたが、こちらでは新参者です。皆さんと共に学び、協力しながら務めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。」


部屋には拍手が起こり、温かい雰囲気が広がった。その中で一人の管制官が立ち上がった。背が高く、落ち着いた雰囲気を持つ彼は、ベテラン管制官の梶原政信だった。


「はじめまして、主幹管制官の梶原政信です。片山さんのご活躍は耳にしました。これからよろしくお願いします。」


梶原の柔らかい笑顔に、片山も少し肩の力が抜けた。


「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」


次に立ち上がったのは主任管制官の中山新。彼は少しやんちゃな雰囲気を持ちながらも、親しみやすさがにじみ出ていた。


「どうも、主任管制官の中山です。」


中山は30代後半の快活な雰囲気を持つ男性だった。軽く片山に頭を下げると、茶目っ気のある笑顔を見せた。


「しかし、片山さんが来てくれるなんて心強いですよ。羽田のすごい活躍だったと聞いていますが、ぜひこちらでもその手腕を発揮してください。」


「期待に答えられるよう頑張ります。」


その冗談めいた言葉に部屋が少し和らぎ、片山も小さく笑みを浮かべながら答えた。


続いて立ち上がったのは若手の伊東拓海。まだ少し緊張した様子で、ぎこちない動きが見受けられた。


「はじめまして!伊東拓海です。片山さんの羽田でのご活躍は聞きました!実は自分も、いつか羽田で働きたいと思っているです。2年目でまだまだ未熟ですが、よろしくお願いします!」


「そうなんだ。よろしく。一緒に頑張ろう。」


伊東の真摯な態度に片山は微笑みながら声をかけた。


最後に立ち上がったのは女性の管制官、北村恵理だった。片山が視線を向けると、明るい笑顔を浮かべた彼女は、しっかりとした声で挨拶を始めた。


「はじめまして、北村恵理です!これから片山さんと一緒に働けるのを楽しみにしています。私もまだ未熟な部分が多いですが、どうぞよろしくお願いします!」


その快活な様子に、片山は一瞬驚いた。北村の明るい声や仕草に、羽田で共に働いた山口真奈美の面影が重なる。だが、それ以上深く考える暇もなく、彼女の目の輝きが目の前の現実に引き戻した。


「こちらこそよろしく、北村さん。これからいろいろと教えてください。」


片山が答えると、北村は満面の笑みを浮かべて

「はい!」

と力強く返事をした。


ミーティングが進む中、高橋が全体の進行を務めた。


「さて、今日は片山君を迎えることも含め、今後の運用計画について話を進める。梶原、運用の概要を説明してくれ。」


梶原が前に出て、手元の資料を広げながら話し始めた。


「現在、ACCでは東日本一円の広域空域を担当しており、日々1000便以上の航空機を管理しています。特に繁忙期には、一つの判断ミスが大きな影響を及ぼすため、チームワークが何よりも重要です。」


片山はその説明を真剣に聞きながら、これからの任務の責任の重さを改めて実感していた。同時に、この新たな環境でどのように自分の経験を活かし、チームに貢献できるのかを模索していた。



________________________________________



ミーティングが終わると、北村が片山に話しかけてきた。


「片山さん、早速で恐縮ですが、午後のシミュレーションでご一緒できますか?ご意見をいただけるとうれしいです!」


片山は少し驚きつつも、

「いいですよ。もちろん。」

と答えた。


その返事に北村の顔がぱっと明るくなった。


その様子を見ていた高橋が笑いながら言った。


「北村はすごく積極的だろう?3年目だが、彼女の判断力と冷静さは、経験豊富な管制官と肩を並べるほどだ。期待していいぞ。」


片山は静かに頷きながら、東京コントロールでの新たな挑戦に胸を高鳴らせていた。



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