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12月24日、クリスマスイブの朝、東京コントロールにはいつもとは違う緊張感が漂っていた。今日は、新たに導入される管制システムの初めての訓練が行われる日だった。
片山がフロアに入ると、すでに北村、伊東、中山、梶原、高橋が訓練室に向かう準備をしていた。
「おはようございます。」
片山が声をかけると、全員がそれぞれの緊張した表情で挨拶を返した。
「片山さん、おはようございます。やっぱり緊張しますね。」
北村が不安そうに微笑みながら言った。
「俺もだよ。でも、こういう時こそ落ち着いてやるしかない。」
片山が優しく声をかけると、北村は少し安心した表情を見せた。
伊東は顔を引きつらせながら、肩を縮めて硬い声を出した。
「正直、僕、こういうの本当に苦手で……頭が真っ白になりそうです。」
中山がその様子を見て肩を叩いた。
「おいおい、そんなガチガチになるなよ。訓練だぞ。みんな最初は緊張するさ。」
「で、でも失敗したらどうしようとか考えると……。」
伊東の声には緊張が滲み、手元の資料を握りしめる手が震えていた。
片山が微笑みながら静かに声をかけた。
「伊東、訓練は失敗するためにあるんだ。ここで失敗して学べば、本番で同じミスはしなくて済む。焦らず、落ち着いてやればいい。」
その言葉に伊東は、
「ありがとうございます、片山さん。頑張ります!」
と力強く答えた。
梶原も
「何かあったら、いつもみたいにみんなでフォローし合えばいい。気楽にやれ。」
と肩を軽く叩くと、
伊東は
「はい!」
と元気よく返した。
高橋が全員を見渡しながら、静かに話し始めた。
「みんな、これが初めての訓練だが、新システムの性能を最大限に引き出すのは私たち管制官の腕にかかっている。今日は失敗を恐れずに積極的に取り組んでほしい。」
その言葉に全員が頷き、緊張感の中にも決意が漂う。
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訓練室に入ると技術担当のスタッフが迎え入れてくれ、早速説明が始まった。技術担当のリーダーである松本は、新システムを開発した企業である「エアロテック・ソリューションズ」のベテラン技術者で、これまで多くの航空管制システムの導入を支えてきた人物だった。
「皆さん、おはようございます。エアロテック・ソリューションズの松本です。本日は新システムの初訓練ということで、私たち技術スタッフが全力でサポートします。まずはシステムの基本的な操作を試していただき、その後、実際のトラフィックを再現したシナリオでの訓練に移ります。」
その隣には国交省航空局から派遣された永井が立っていた。永井は片山が羽田勤務時代に新システムの導入を行った際に面識があった。
「お久しぶりですね、永井さん。」
片山が声をかけると、永井は柔らかい笑顔で返した。
「片山さんでしたか、お久しぶりです。ACCに移られたんですね。羽田での新システム移行ではお世話になりました。私も、この春から本省の航空局に異動になりまして。これからは全国の管制システムの管理に関わることになりました。今回もよろしくお願いします。」
「そうだったんですね、おめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」
片山が軽く頭を下げた。
松本が引き続き説明を始めた。
「新システムは従来のものよりも処理速度が向上し、より広範囲の空域を効率的に管理できます。ただし、情報量が多いため、操作に慣れるまで戸惑うかもしれません。焦らず、基本からしっかり取り組んでください。」
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説明が終わると、各自がコンソールの前に座り、実際の操作を試すことになった。
片山は北村の隣の席に座りながら、モニターに映し出された空域のデータを確認していた。
「恵理、大丈夫か?操作は問題ないか?」
「はい、今のところは順調です。でも、このシステム、思ったより情報量が多いですね。」
北村は画面を見つめながら答えた。
「確かにな。だが、この情報量をいかに整理して使いこなすかが鍵だ。」
片山がアドバイスすると、北村は「はい!」と元気よく返事をした。
一方、伊東は少し戸惑いながらも操作を進めていた。
「中山さん、このボタンって何でしたっけ?」
「それはデータリンクの送信だ。ほら、操作マニュアルの右側に書いてあるだろ。」
中山がすかさずフォローし、
伊東は
「ありがとうございます!」
と感謝した。
梶原は全体を見渡しながら、高橋に声をかけた。
「これだけ複雑なシステムだと、全員が慣れるのに相当時間がかかりそうですね。」
高橋は頷きながら答えた。
「だからこそ、今日の訓練が重要なんだ。まずはシステムに慣れることが第一歩だ。」
松本が各席を回りながら、細かい操作の指導を行い、永井も要点を押さえたアドバイスを各管制官に与えていた。
片山たちも松本や永井の指導の下、操作方法を真摯に学んでいた。
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システムの基礎操作が終わると、いよいよ実践的なシナリオでの訓練が始まった。今回は、急激に増加したトラフィックに対応するシナリオが設定されていた。
「各自、担当するセクターを確認してください。それぞれの空域で問題が発生した場合は、他のセクターとも連携を取りながら対応してください。」
松本が指示を出す。
片山はすぐに状況を把握し、冷静に指示を飛ばした。
「JAL452、現在の高度を維持し、進路を10度右に変更してください。次の指示を待機。」
北村も緊張しながらも正確な指示を出していた。
「ANA237、速度を250ノットに調整してください。その後、高度を10000フィートに下げます。」
伊東は少し焦りながらも、中山のアドバイスを受けて対応を進めていた。
「了解です、中山さん。高度調整の指示を出します!」
全員が集中し、それぞれの役割を全うする中、徐々にチームとしての一体感が生まれていった。
片山はその様子を見ながら、小さく微笑んだ。
「みんな、よくやっている。この調子でいこう。」
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訓練が終了すると、松本が全体のフィードバックを行った。
「皆さん、初めての訓練としては非常に良い結果でした。それぞれの操作にまだ慣れない部分はありますが、連携がしっかり取れているのが印象的でした。」
高橋が最後にまとめた。
「今日は初日だから多少のミスは当然だ。これから何度も訓練を重ねて、全員がこのシステムを完全に使いこなせるようにしよう。」
永井が片山に歩み寄りながら言った。
「片山さんの落ち着いた指示が全体を引き締めていましたよ。流石ですね。」
片山は照れくさそうに微笑んで答えた。
「いや、まだまだですよ。みんなが頑張ってくれたおかげです。」
クリスマスイブの夕暮れ、東京コントロールには新たな挑戦への期待と共に、チームの結束が深まる温かい空気が流れていた。




