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何時ものようにダンジョンに来て植物の手入れをしていると不意に俺を見る視線を感じた。
すると麒麟、露草、若草、リッチ、酒吞童子、ルーベ、アーメントの7人が出て来る。
俺と一緒に作業していたドカンが驚いて回りを見た。
「リッチ、酒吞童子。何か起きたのか?」
「ああ、良く分からんが危険だ」
そう答えたのは酒吞童子だ、かなり緊張気味だ。
「酒吞童子、肩に力が入り過ぎだぞ。そんなに硬くなると動けなくなるぞ」
「は、はい」
俺の声に酒吞童子が少し緊張が解けたか両肩を回してリラックスするように深呼吸をする。
「なぁ、もう他のやつに分かるように姿を見せたらどうだ?」
配下にはわからない可能性が高いと思うが俺にはわかる、ずっと俺達の上にいて見ていた奴がいた。
畑に女が降り立つ。
天使と言うのはこういう見た目なのかも知れない、そう思わせる姿だ。
白い布を羽織り大きな翼を持ち神々しく輝いている。
「お前はここで何をしている?」
不意に女が俺に話しかけて来た。
「何をしている?
見て分かるだろ、薬草と花を育ている」
「それだけか?」
「他に何がある?
ここで酒や毒物のような物は作ってはいないぞ」
「そうか?」
そう言うと女が大人しくなる。
俺の配下達は突如出て来たこの女を見て、どれ程の強さか少し計り兼ねているように見える。ある程度の強さを持っているのは確かだ、その為か誰一人として動くかずに警戒を怠っていない。
「所でお前がコウと言う者で良いのか?」
なんだ突然、確かに俺の名前はコウだ。だけど今それと何の関係があるんだ?
「確かに俺の名前はコウだ。何かあんたに関係が有るのか?」
「そうか、するとお前が大神が言う新しい種なのか?」
「すまないが何を言ってる事が良くわからない。
俺は俺だ、例え名前が一緒だからといってお前達が言うそのコウと言う奴とは限らない」
女が俺に近付こうとした時、麒麟が出ると俺の目の前に立って両手を開いて俺を守る。
「あ、貴女が誰が知りません。
でも、主は妾達にとってとても大事な人なの。何をするかわからないからそれ以上近付かないでちょうだい」
「うん? お前は麒麟か?」
女が目を見開く。
「そ、そうだよ! 何か文句ある?」
「ふむ、まだ一匹か?
なら今死ぬ必要も無いだろう。良いからその男を私に渡しなさい、言う事を聞かないなら無明を呼び出します」
「ちょっと待ってもらおうか?」
リッチを始め酒吞童子達も麒麟の横に立っていた。
「主殿は私達の命よりも大切なお方だ。私達がいる限り誰であれ主殿を好き勝手はさせない」
「そう言う事だ。主殿は何処にも行かせない」
リッチと酒吞童子がそう答える中、ワイバーンのバーン。ナガイ、チーター、四聖獣達とドカン以外の龍族3人も一緒に出てくる。
「なるほど、総力を挙げればこのワタクシに勝てると思ったか」
「なぁ、取り敢えず今日は帰ってもらえるかな?
俺は誰かに指図されるような事が一番嫌いだし、このまま争う事になると俺はあんたが嫌いになりそうだ。
俺は嫌いな奴に従う気持は一切無い」
「そうか、貴様も大神に逆らうつもりだと言うことだな」
「悪いがその大神が誰かも知らない。そもそも、あんたが知ってるコウと俺は違う人間じゃないのか?」
「違う人間? いや、ワタクシが間違えると言う事はないと思うが。
だが、お前はネクロマンサーのようだな。
と言う事は大神では無く月読の尊の眷属か。ふむ、悪かったな、ワタクシの早とちりだった可能性が高いな」
その女が謝るが言葉ばかりのようだ。殺気を俺に向けて来る、それに合わせ若草と露草が女に一気に距離を詰めその顔を思っきり殴り付けた。
「ブゴ!!」
殴られた女が俺が作った花畑に倒れる。
「おい! そこから出ろ」
畑に倒れたのを見て、畑を荒らされた気持になってしまう。俺の怒りに普段は抑えていた魔力が漏れる。
女が顔を殴られ震えながら顔を上げる、それこそ信じられないと言った顔で若草と露草を見る。
右手で顔を抑え、左手で畑の土を握りしめいる。
その姿を見た瞬間にその女の前に飛び出して拳を握りしめる。
すると突如、俺と女の間に秋田のSランクダンジョン、九喇嘛の所で会ったおかっぱの小さな女の子が現れた。
「悪いな、この辺にしてもらえるか?」
「こいつを連れて帰えるなそうしてやる」
俺とおかっぱの女の子の目が合う、と言うかもう顔と顔がくっつく位の距離だ。
そこで互いの魔力がぶつかり合うのだ。横たわりまだ立ち上がる事すら出来ない天使のような女、が俺と女の子の圧倒的な魔力の強さに苦しみだす。
「わかった。何か迷惑をかけてすまないな」
「いや良い、俺はこいつが嫌いだ。
この次、俺の前に現れた時は容赦はしない。良く覚えておけ」
「わかった、良く言い聞かす」
俺が魔力を抑え横たわった女から少し離れる。
「ほれ、帰るぞ。
面倒事に私を巻き込むな」
「しかしっ!」
ザン!! 「グァッ!」
おかっぱの女の子が倒れた女の左腕を切り落とした。
すると俺にその切り落とした腕を渡す。
「これをここに刺しておくと良い。
ここは私が認めた場所だ、誰であれ邪魔をする事は無いはずだ」
「そうなってくれると有り難いな」
「所でこんなところに薬草を植えて何をしてるだ?」
「俺達人間のあいだで魔引病が流行っている、その為の薬を作る目的で薬草を育ている」
「魔引病? そう言えば人族は魔引病にかかりやすいと聞いた事があったな。その為か」
「ああ、魔引病にかかりやすい上に治り難くてな、薬がどうしても必要なんだ」




