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25 体に覚えさせる

すみません、更新を途絶えさせてしまいました

本日もよろしくお願いします

 (オニール君)と取引してから真面な授業をしてくれる様になったブルックだが、あれから3ヶ月経った今でもそれは続いている。質問すれば丁寧に返答してくれるし、その場で分からない事は調べてから後日教えてくれたりもするし、頼めば書籍の取り寄せまでしてくれる。

 虐待教師だったブルックは、あんなでも意外と根は良い奴なんだ。

 しかも、「教え子が自分の教えによって成長する様子を見るのは、存外の喜びを感じるものだな」と、こそっと漏らしていたんだぜ。

 勿論、俺は空気が読める男だからな。聞かなかった事にしてやった。


 まぁ、そのお陰でこのオニール君の生きているこの世界の事がずいぶん分かる様になった。

 最近は成人後の身の振り方について相談したりしている。


 貴族家は長子相続で、次男はスペア。三男以降はたいていは実家から出て、他家で騎士に成る者が多い。変わり種としては商人や冒険者、他国の学院に留学して学者になる等の道がある様だ。

 オニール君の住むプリルベン国には学校制度はないが、パミドロル帝国には貴族向けの学院、平民向けの私塾、職人向けの職業訓練校などがあるそうだ。

 これらの卒業生の進路として、パミドロル帝国では出身国に関わらず能力で採用される枠があるらしい。

 ブルックは貴族向けの学院を卒業したらしいが、あちらでは就職せずに帰ってきたとか。

 才能があれば、こちらに戻って来ずパミドロル帝国で仕事を探した方が良かったのではないかと思うのだが・・・家の事情か、ご本人の能力や性格に事情があるのか・・・まぁ、そこは追求すまい。


 オニール君は次男で、通常なら長男のスペアとして、領地経営を学んで手伝ったり、領兵の統括を担ったりするのだろうが、今の扱いではそんな安泰な未来は期待できない。そもそも、庶子だしな。

 俺の中では成人後は家を出る方向に傾いている。

 プリルベン国は気候的に農耕があまり盛んでないせいか、鉄鋼と武力に比重が向いていて、俺としてはパミドロル帝国に行ってみたいなと思った。



 他の【代役】の皆もそれぞれの分野で着実に知識や実力を伸ばしているし、数度のパーティ侵入・食料採取の結果、栄養状態が改善したお陰でオニール君の体もグンと成長した。

 パーティ侵入の成果は食糧問題だけではない。マナーの実践や社交ダンスと言った書庫の書籍を読むだけでは足りない知識や技能の習得にも成果を出している。

 

 

 オニール君に現れた変化は栄養状態と体の成長だけじゃない。びっくりするような嬉しい変化が2つ見られたのだ。

 【控室】に来ているオニール君は、今まで只管眠ってばかりだったのが、最近は時々目を開ける事があるのだ。目を開けると言ってもぼーっとしていて俺達と視線は合わない。会話する事も出来ない。短時間、不思議そうに周囲を見渡して・・・そして眠ってしまう。

 それでも大きな進歩だ。心の傷を少しずつでも癒すことができているのかも知れない。いつもオニール君を抱っこして、安心感を与え続けてくれている九条さんには感謝だ。


 それと、もうひとつ。大きな変化がある。

 それは俺達【代役】がオニール君の中に入って繰り返し行った事がオニール君自身でもできる様になったんだ。

 例えば、“魔力操作”でお尻に刻まれた円環術式を迂回させること。

 オニール君のお尻に刻まれた円環術式から日々奪われる魔力量を制限して、体内魔力量を増やすためにはとても重要な技術なのだが、毎日就寝前に木下君がオニール君に入って練習していたし、他にも魔術使用が求められる場面で使ってきたからなのか、オニール君も自分でやる様になったんだ。


 これに最初に気づいたのは木下君だ。

 ある日【舞台】から下りてきた木下君が怪訝な表情をしているのに、「どうかしたか?」と聞いたら、オニール君の魔力欠乏の症状が軽減していると言う。

 そしてオニール君の記憶を探ると、「何だか自然とできる様になった。体内の魔力を循環させる時にお尻を通る量を少なくなるようにすると体が楽な気がする」ってオニール君が考えているって言うんだよね。しかも、奪われる魔力量の制限量は木下君がやるのと同じ程度に緩やかに調節までしてるんだよ!

 凄くね?

 今では、魔術を行使しない状況で10日程でオニール君のMPがフルになる様だ。


 それと山田君が朝に、腹筋や腕立て、スクワットなどの基礎体力訓練と柔軟体操をしてくれていたんだけど、それも朝起きたら行うルーチンワークであるかの様に山田君が【舞台】に上がらなかった時にも、オニール君が自主的に行う様になったんだよ。


 “体が覚える”ってやつなのかな?


 そのお陰で、オニール君に入った時の全身の怠さや、頭に霞がかかった様にボーっとしてしまう事がなくなり、【舞台に上がる】のがずいぶん楽になった。

 筋力もついたお陰で分厚い書籍を持ち上げるのも楽になった。

 こんな素晴らしい変化が起きるなんて、誰が予想できただろうか?【代役】の誰も想像もしていなかった。

 困難が起こる度に、俺達が【舞台】に上がってオニール君を助けてあげなきゃとしか考えていなかった。子供の可能性を見くびってはいけないなと、反省しきりだ。



 俺達の反復行動で色々な技術をオニール君にも修得させる事ができると分かった。

 なので、優先度の高い物から積極的に覚えさせようと言う事になった。


 まずは毒の回避。

 毎回食事を『鑑定』して、毒入りの食事を『収納』に取り込みながら食べるふりをして、途中で具合が悪くなったような演技をして自室に戻る。

 これをオニール君が自分でできる様になれると良い。

 毎回木下君に【舞台】に上がってやって貰うのは負担が大きいし、九条さんの当てが外れて木下君が【舞台】に上がらなかった時にオニール君が毒を食らってしまう事もあるからね。


 それから基礎体力作りは少しずつ難易度を上げる事にして、レベルアップ週間には山田君に【舞台】に上がって貰う事にした。ただし、自室で音を出さずにできる簡単なものだけだ。

 


 絶望的に暗かったオニール君の未来に少し光が射して見えた気がした。

 【代役】達の表情も明るい。


お付き合いありがとうございます

週1更新をがんばります

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