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ブラバン・B・アンビシャス ~吹奏楽で大志を抱け~   作者: 庭城優静
大会編:これこそが吹奏楽部?
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大会のおさらいをしよう

 中部日本吹奏楽コンクール、通称中日吹(ちゅうにちすい)

 毎年6月初旬に行われる大会である。

 

 しかし、話を聞く限りではこれに力を入れている高校は少ないとか……、


「みんなの本番は夏の全国吹奏楽コンクールだからよ」


 弥生さんはいつもよりも力強く力説する。


「中日吹はいわば大会前の最後の前哨戦?みたいなものよ!勿論、どの高校も手を抜くことはないんだけどね!」


「分かってますよ」


 ヒートアップする弥生さんをなだめる。もう少し丁寧な説明が欲しい。

 俺は彩矢さんに眼を向けると、「うーん」と困った顔をしながらも口を開く。


「――私もこれが2回目だし去年は出ていないからしっかりとは理解出来ていないんだけどね。A・B編成は別としても、まだ1年が入ったばかりで上級生は1年の指導とベストメンバーになるまでの練習がし辛いと言うのもあると思う。……まあ、私達には()()()()かもだけど、夏の方は全国までの切符があるし、最後の大会だからそっちの方に力が入るのも納得……かな?」


「A・Bと言うのは?」


「オレが説明するよ。A編成というのは大編成のこと。55名以下で編成されるバンド形態のこと。B編成は小編成で35名以下のバンド――つまり、凱旋はB編成で大会に挑むんだよ」


「へえ……知らなかった。ん?待てよ新美、俺達がB編成ってことはさっきの彩矢さんの説明からすると……」


 彩矢さんは「関係ない」と言った。その真意は……、


「B編成は支部大会が最終地点なんだよ。オレ達の地区だと東海大会ってこと」


「そういうこと」


 そうなのか……。てっきりどこの高校でも全国を目指せると思っていたがそうではないのか。でも……、


「――たとえ東海大会で終わりでも、そこに行くのは十分に大変なんだろ?」


 俺の一言に弥生さんと新美は黙って頷く。

 この2人は中学の時から大会に出ているのだ。大変さは重々承知しているのだろう。


「それと彩矢が言ってなかったけど、中日吹が前哨戦扱いになりやすいのにはもう少し理由があるのよ」


「え?そうなの」


「まず中日吹はA編成の様に課題曲・自由曲を演奏するんだけど、課題曲に関しては中日吹と全国とでは曲が違う。自由曲はほとんどが夏と同じ曲を演奏する……つまり、どういうことだと思う?」


 弥生さんは矯正されている歯をニヤリと見せながら質問を振ってくる。


「……自由曲に力を入れたいから、大会よりも曲の方に意識が高い――ということですか?」


「正解……。大会を見学して感じて貰った方が良いんだろうけどね、どこも自由曲の演奏を制限時間内に収めるつもりがないのよ。時間切れまで吹き続けるのよ……舞台が暗転して急いで演奏終了、みたいなね」


「そこまでして自由曲を?時間に収まる様に調整しないんですか?」


「しないとこがほとんど。大会をやるようなホールでの演奏って1年を通しても数回くらいなのよね。少しでも自由曲の課題点や、ホールでの演奏感を体験したいものなのよ。大会ぐらいじゃないとあんなにお客さんが入った状態で演奏する機会ないからね」


「なるほど……」


 それほど夏の大会に込める思いが違うということか……。


「ちなみに中日吹で優勝すると県大会になるんですか?」


「いいや、すでに静岡県大会という名目になっているから本大会ってことになるはず。まあ、行ったこと一度もないからそこまでは分からんね……たはは」


「本大会ってことは、中部地方の強豪校が一堂に集まるんですか、凄そうですね」


「でしょうな。たしか、1、2校しか代表に選ばれないんだっけ?彩矢」


「だと思った。B編成ではあまり経験のない()()()が出るからね」


「ダメ金……テレビで聞いたことあるな」


 ダメ金――大会で金賞を受賞したけれど、代表校に選ばれない金賞を指すとテレビでやっていた気がする。


「そうそう、順位を会場とかでは公表しないかわりに金・銀・銅と賞をつける。金賞を取った高校で1番優秀な学校が代表校になるってこと」


「――ということは、夏の大会ではダメ金はない?」


「そ、B編成に限り金賞を取れば次の大会に出られるのよ!それに課題曲の演奏はなくて自由曲のみ!ね?中日吹と夏の大会、どっちに意識が向くか簡単でしょ?」


 弥生さんの言う通りだ。中日吹では倍率が高く、6月の初旬が開催日となれば曲の練習時間が足りない。

 4月前から曲を決めて練習するのも手だと思ったが、吹奏楽部のイベントの多さに俺は早くも圧倒されている。来週も合同演奏会があるのだからな……。

 おそらくというか、間違いなく俺達1年が入部する前にも色んなイベントがあるに違いない。


「……大変なんですね、吹奏楽って」


「何弱気になってるのよー!これからが過酷なんだから!」


「――七瀬の言う通りだ」


 急に低音声が後ろから聞こえてきて、慌てて後ろを振り返ると玲哉さんが怖い顔をしていた。


「これからについて熱く語るのは一向に構わん。だがな、練習場でやるな。お前等以外はもう帰っているぞ。話すなら部室で話せ、練習場を閉めれないだろうが――!」


『ああ!!』


 俺達は慌てて周りを確認するが、周りは閑散としている。


 そう、今は楽器講習会から帰ってきて部活終了後でのやりとりなのだ。

 つまり、部活動は終了していて周りは帰っているのだ。俺達を除いて……。


「状況が分かったのなら早く動け」


『はい!』


 俺と新美は逃げる様に練習場から逃げ出す。


「ちょっと彩矢!私達楽器の片づけ!!」


「ああ!やってない……!」


「お前等……!!」


 早くも過酷な状況が2人を襲う。


 ごめんなさい。と心の中で思いながら部室へと逃げるのだった――。


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