最終章
最終章になります。適当に書いた物語なのでしょぼい作品で申し訳ありません。
ゴツッ・・・「イタッ・・・。」
頭を打ちつけたサラが目を覚ますや否や、ぼやける視界に映り込んだキルにいきなり抱きつき、
「キャァァッ、キルちゃん生きてたの?」
と、大はしゃぎするサラ。
「あ、あはっ・・・僕、やっぱり死んでたのね・・・。」
サラに振り回されながらそう呟くキルだったが、その隣では、異様な面持ちのアゼザルがガブリエルの顔を見つめながらネクタイを緩め始めていた。
「待ちくたびれたわい・・・・。」
鋭い眼差しでガブリエルを睨め付け、やがてその視線はキルの方へと移ってそこで止まった。
まさか、ガブリエルとサラに加え、キルまで相手にしようとしているのか?
「お主・・・・死神だな?ウッシャッシャッシャッ。いい友達を持ったのぉ。羨ましいわい・・・・。」
険しい表情から一変、微笑を浮かべながらそう言うアゼザルはその視線を再びガブリエルへ向け、なんとも気色の悪いウインクを投げると、彼等に背を向けてトボトボと歩き始めた。
「彼がアゼザルかい?」
「あぁ・・・・。それにしても、何で人間に憑いてんのかなって思ってたらようやく分かったよ。きっとおっさんは人間に憧れてんだな。いや、人間というか・・・限りある命に・・・。」
何となく寂しげなアゼザルの背中を見つめ、ガブリエルが言った。
元々は無の中に存在し、この世に蔓延る恨みや妬み、嫉妬の中から生まれ、悪の中で存在し続けるという宿命を背負いながら永遠という時を過ごさなければならない。
神が創った存在ではない。況してや悪魔が創ったものでもない。
アゼザルという悪魔を創ったのは人間なのだ。
そんな彼が二十メートル程離れてからの事だった。
天から降り注ぐ眩いばかりの光がガブリエル達を包み込み、更に、少し離れたアゼザルの処にも同じ現象が起きた。
「お迎えだ・・・・。」
キルのその言葉と共に、天へと吸い込まれるように四人は地上から消え去った。
見渡せば色取り取りの花が植えられている花壇がズラリと並び、立派な樹木が生え揃う大きな神殿の中に居るではないか。
その部屋の中央には七色に輝く水がとめどなく溢れ出し、見た事も無い様な鳥や動物たちが餌を啄ばみ、水を飲んでいる。
「キャァァァッ、素敵じゃない。もしかしてここ天国?」
異様なはしゃぎを見せるサラだが、その直後、奥の扉からミカエルが現れた。
「なんかあの顔・・・・ムカつくな・・・。」
「シィィィィッ、聞えちゃうよ。っていうか双子なんだから仕方ないだろ。」
ガブリエルとキルが顔を見合わせながらそう交わす中、歩み寄るミカエルが目の前でその足をを止めるや否や、突然片膝を着き
「私の名はミカエル。大天使長という位に位置し、全ての天使をまとめている者だ。皆を代表して礼を言わせてもらう。ガブリエル、キル、サラ・ラズバクト・・・・・それからアゼザル、君達の善なる行いで全ての世界が救われた・・・本当にありがとう。」
と、頭を下げながら言った。
しかし、ガブリエルはそんなミカエルを前に、
「へっ・・・お偉いさんはいいよな・・・何もせず上からボーッと見ているだけだもんな。しかも、勝手に俺を任命したくせによ。」
と、腕を組みながらそう言い、更にそれに続きアゼザルが口を開いた。
「ワシをここへ連れてきていいのか?礼を言われる程の事は何もやっとらん。それにワシは悪魔・・・・誰かさんに代わってここを支配しても構わんのじゃぞ。」
すると、片膝を着いていたミカエルが立ち上がり、
「それらについて、一つ一つ答えていくつもりだが、途中での質問や反論は後にしてくれ。まずガブリエル、君の言う事はまさにその通りだ・・・・。犯してきた罪を帳消しにする代わり、この重荷を背負わせるよう命じたのはこの私。だが、本来は大天使長である私がそれを背負うのは当然の事。しかし、全宇宙の秩序を守る為にはここを離れる訳にはいかないのだ。かといって、私が動けないのならば、せめて他の天使達を援軍として君の元へ向かわせるという事も案じたが、彼等ではかえって足手まといになってしまう。そこでキルを使わせた。そしてアゼザル・・・・あなたは悪魔であるが故に本来はここへ立ち入ることは出来ない。が、この一件に害を与える存在ではなく、逆に大いに貢献し、多大なる成果を残してくれた。
そして、私の神眼であなたを見るところ、闇の中に小さな光が見える。つまりは・・・・まぁ、そういう事だ。この辺で勘弁してくれないか?まだ君達には言いたい事が残っているので・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「では、次に話を進めてもよろしいかな?私が出来る範囲で君達の望みを叶えよう・・・。まず、サラ・ラズバクト・・・君の望みは何だ・・・?」
突然のその言葉に驚くサラ。
「え・・・?急に言われても・・・。そうだなぁ、あっ、分かった。
魔術の心得を失くしたい。つまり、ご先祖様には申し訳ないけど、
代々伝わるラズバクト家の伝統は私の代で終わりにしたいの。普通に結婚して普通に子供を育てたい。うん・・・これが一番ね。」
なんと、意外な事を口にしたサラ。
「なるほど・・・分かった。次はキル・・・と言いたいところだがお前は無しだ。さぁアゼザル、遠慮する事はない。望みを言え。」
「はぁぁぁっ、ひどい話だよね・・・。」
飛ばされたキルは口を尖らせそう言うと、子供の様に座り込み、ふて腐れていた。そして、急に振られたアゼザルはというと、
「望みじゃと?そんなもの無いわい。」
と、そっぽを向いてしまった。だが、それを聞いたガブリエルが突然口を開いた。
「おっさん・・・・そんな事言わねぇでよ、人間に生まれ変わらせてくれって言った方がいいんじゃねぇのか?」
それに続き透かさずミカエルが口を開く。
「アゼザルよ・・・それでいいのか?」
口を挟むガブリエルの言葉といい、それに進めるように言うミカエルの言葉に激怒して反論するかと思いきや、そっぽを向いたまま口を開こうとしないアゼザル。
「・・・・・では、決まりだな?」
それでも尚、堅く口を閉ざすアゼザル。
だが、その表情はどこか恥ずかしそうにも見えた。
「最後はガブリエル。お前には望みというか、約束だったな。犯してきた罪を帳消しにし、預かっていた心臓を返すと・・・。」
「あぁ・・・そうだな。だが、罪を帳消しにするってのは別にいいや。どうせ人間に戻ったらまた同じ事を繰り返すつもりだからな。」
薄気味の悪い笑みを浮かべながらガブリエルがそう言うと、ミカエルが軽く手を二回ほど叩いた。
すると、ミカエルの後ろに突然現れたのはウリエルとラファエル。
そして、そのウリエルの手にはガブリエルの心臓が入った木箱が。
「そうか・・・残りの人生をどう生きようが勝手だが、地獄行きは確定だな。ところで・・・・キル。ライラス・バートンの余命はあと何日だ?」
突然不思議な事を言い出すミカエル。そして、それまで座り込んでいたキルがニヤリと笑い懐から取り出したのは、分厚い死神の書。
「ライラス・バートン・・・・・あら、余命二日と六時間だって。」
パラパラとページを捲り、微笑を浮かべながらキルが言った。
「な、なに?二日だと?んなの聞いてねぇよ!」
死神の書をキルから奪い取り、慌てて確認するガブリエル。だが、確かにそこにはそう記されていた。
「そんな事は当然だ。自分の余命を知りながら人生を歩む者など居るはずがない。・・・・ほら、心臓を返すぞ。とは言っても、あと二日しか生きられないがな。」
激怒するガブリエルを尻目に、なぜかクスクスと笑うミカエルとキル。そして、そんなキルの視線の先にはガブリエルが放り投げた死神の書が・・・・。
一体、何がおかしいというのだろうか・・・・。
ライラス・バートン・・・・余命一万八千九百八十日と四十二分。
今、キルが見つめているそのページにはそう記されているのだが、先程見たときにはあと二日だったのに・・・・・年数に直せば、あと五十二年。
一体どういうことだ?
「だが、心配するな・・・。お前にはもう一つ選択技がある。それは、ここで働くという事だ。これは光栄な事だぞ。しかし強制はしない。あくまでもお前が決める道だ。ここでキル達と働くか、それとも地上へ帰り、二日後に死を待つか。」
そう言い放つミカエルの眼は、ガブリエルではなくなぜかキルを見据えていたのだ。
そう・・・実は、これがキルの望みだったのだ。
前々からミカエルにこの話を持ちかけていたものの、自分の独断では決め兼ねないという理由で保留にされていたが、恐らく神の許しが出たのであろう。
今、この時までその許しが出たことを知らなかったキルは、ミカエルの「・・・余命はあと何日だ?」の言葉で気付いたらしく、死神の書へとっさに細工を仕掛けたのだ・・・。
だが、ミカエルの言う通りあくまでもこれはガブリエルが決める道。
「あと二日か・・・・。まぁ、その二日で新記録を作るのも悪くないな。それに、俺が死ぬ時はお前が迎えに来るんだろ?キル。って言ってもそん時はお前の記憶は・・・・・・」
眉間にシワを寄せながらガブリエルがそう続けていると、突然アゼザルが口を挟んできた。
「小僧、素直に言ったらどうじゃ?ここに居たいと・・・。」
それに続き、透かさずサラも割り込んできた。
「うん。私もそう思う。だって、なんかいいコンビじゃない?ガブリエルちゃんとキルちゃん。」
そして更に追い討ちを掛ける様にキルがとどめの一発を放った。
「ちなみにガブリエル・・・二日後に迎えに行くのは僕だけど、その時には素晴らしい死をプレゼントするよ。痛みと恐怖を兼ね備えた最凶の惨い死をね。フフフッ・・。」
「マ・・・マジで・・・?」
困惑の表情を浮かべるガブリエル。そしてそんな中、本来の余命が記された死神の書をそっと懐に隠し、その答えを固唾を呑みながら見守るキル。
「まぁ・・・いいか。これがあと二日じゃなく、何十年も残っているなら話は別だが、決めたよ・・・。ここで働いてやる。それに、そこのクソ死神に殺されるってのも癪だしな。」
ガブリエルの口からそう放たれた瞬間、万遍の笑みを浮かべたキルが飛び上がり、左腕を高々と掲げながらガブリエルに抱きついた。
「もうガブリエルったら最高!そしたらさ、僕がいろいろ教えてあげるよ。例えば香水の作り方とかさ。業界では僕の香水って有名なんだぜ?綺麗な天女がいやってほど寄って来るしさ。そしたらさ、あのさ・・・・」
「分かったから纏わり付くんじゃねぇよ。ったく気持ち悪ぃな。」
そんな光景を皆の笑い声が包み込んだ。
だが、そんな余韻に浸っている時間はそう長く続かなかった。
ミカエルの放った一声により、微妙な哀愁が漂う事になる。
「それまでだ。さてと、サラ・ラズバクト・・・・皆に一言あるのならば今のうちだぞ。」
サラに歩み寄るミカエルがそう言い、彼女の頭上に掌を翳すと、涙を浮かべたサラが震える唇を抑えながらこう言った。
「みんなの事、忘れちゃうのは寂しいけど・・・・私、新しい人生を楽しんでくるね・・・。それと、キルちゃん・・・お迎えの時は
怖くないのがいいな・・・・。」
キルが優しく頷き
「任せて。」
と、言った瞬間、サラは消えてしまった。
「次はアゼザル・・・・あなたには輪廻の泉に入ってもらう事になるが、まずそこで浄化され、全ての記憶と闇が取り除かれた時、あなたは既に母親の胎内に居るだろう・・・。だが、どの国で生まれるのかも分からないし、性別や母親を選ぶ事も出来ない。もう一度訊くがそれでいいか?」
「気が変わらんうちにさっさとやってくれ。」
アゼザルはそう言うと、誰とも眼を合わせる事無くラファエルに連れられ、右側にある扉の方へと歩き出した。
「おっさん・・・!楽しんでこいよ!」
静まり返った広い室内にガブリエルの声が響き渡った。
そして、それを聞いたアゼザルは一度扉の前でその歩みを止めると、
振り返る事はしなかったものの、背を向けたまま
「小僧、お前と会えて良かったわい・・・。」
と、呟きラファエルと共に扉の中へと姿を消したのだった。
「さてと、最後はお前か・・・。」
ガブリエルの顔を見つめながらミカエルが言い、次の行動に移ろうとしたその時、ガブリエルがこんな事を口にした。
「ちょっと待てよ。納得いかねぇんだよな。なんで一緒に戦ったキルには何もねぇんだよ。」
「もう叶えてやったさ・・・・。」
鼻で笑う様にミカエルはそう言いながら、後ろに居るウリエルから金色の小さなナイフを受け渡されると、徐にガブリエルの右腕を掴み、手首の部分をそのナイフで切りつけた。
「な、なにしやがんだテメェ・・・。」
いきなりの行動に驚き、暴れるガブリエルをキルが押さえ込む中、手首から滴り落ちる赤い液体を小さなグラスで受け止めるミカエル。
「覚えているか?これはキルがお前に呑ませた神の血。もう、前の様な力は使えない。」
「おいおいマジかよ?この力があるからこそ、ここに残るって決めたのによ・・・・。」
愕然とするガブリエル。
だが、そんな彼にもう一度衝撃の事実が訪れる事になろうとは。
小さなグラスに神の血と呼ばれる赤い液体が注ぎ終わると、そのグラスを片手に、ミカエルがこんな事を口にした。
「さっそくだが・・・・君に仕事を与えよう。」
その後、「俺はパシリじゃねぇ」だとか、ブツブツ文句を言いながらも、渋々その内容を聞いたガブリエルは絶叫し、固まってしまった。
一体、どんな仕事の内容だというのだろうか?
「じゅ・・・受胎の告知だと・・・?」
「あぁ、そうだ。簡単だろ?」
ニヤリと笑うミカエル。
「し・・・しかも・・・あの馬鹿女に・・・おっさんが宿ってる?」
「だからさっきもそう言ったろ?同じ事を何度も言わせるな。ではよろしく頼むぞ。」
そう言いながらミカエルは先程現れた奥の扉の方へと消えていってしまった。
「あっ・・・そうそう。ミカエルは忘れて行っちゃったけど、名前も決まってるらしいから、そう名付けるようにしっかりと伝えてね。」
「な、なんだよ名前って・・・もしかして・・・・」
眼を丸くしたガブリエルにそっと耳打ちするキル。
「な、なにぃぃぃぃぃっ?・・・・に、二世?じゃ、あれはホントの話だったのか・・・?」
「あぁ、そうだとも・・・。」
それから一ヶ月後、新たな生活を送っているサラの元へ降り立ったガブリエルは、男を知らないはずの彼女にこう告知したのだ。
「おい馬鹿女・・・疑わねぇでよく聞けよ。テメェの身体には子供が宿ってるんだってよ・・・。んで、そいつが生まれたら、名前はこう名付けろ・・・・・・・・」
と、相変わらずのこの様な口調で伝えたのだが、一緒に同行したキルの力により、サラにはこう聞えたのだった。
「汝の身体には・・・・・・」
と・・・。
どうでしたか?時間の無駄になってしまいましたね。最後まで読んでいただきありがとうございました。




