第20話
「見事じゃ・・・・。何時ぞやのラズバクトを遥かに超えた出来じゃ。小僧には悪いがもうワシは我慢出来ん。目的は復讐だったが、最早そんなものはどうでもいい。さぁ・・・ラズバクト、ワシを楽しませてくれ。」
岩場に腰掛けていたアゼザルがウイスキーを飲みながらそう言うと、サラはニッコリと笑みを浮かべ、足元から崩れ落ちるように倒れてしまったのだが、なぜかそこには一瞬で移動して来たアゼザルが待ち構えていて、倒れ込むサラをやさしく抱きかかえた。
「おいおいおい・・・どうした?ワシはまだ何もやっとらんぞ?」
サラの顔を覗き込むようにアゼザルがそう言うと、閉じていた目をゆっくり開け、無理やり作った笑顔でサラはこう言った。
「おじさんの言っている事も、そしてあなたが誰なのかもよく分からないけど・・・・ガブリエルちゃん達の知り合いなんでしょ?それじゃ、きっといい人ね。はぁぁっ・・・魔力を使いすぎちゃったみたい・・・・。」
やはり鈍感なのか、それともそういう性格なのか、そう言い終えると、アゼザルの胸の中で眠ってしまったサラ。
「お預けか・・・・仕方ないのぅ。小僧が来るまで休むとするか。
その代わり、その時はラズバクトと小僧、両方一遍に遊んでくれるわ・・・。いや、待てよ・・・同時に二人壊してしまえばワシの楽しみが無くなってしまう。やはりラズバクトを壊してから小僧と遊んだ方がより楽しめるんじゃないかのぉ・・・。ウッシャッシャッシャッ。それで決まりじゃ。ウッシャッシャッ・・ゲホッゲホッ。」
サラを抱きかかえ、不敵な笑みを浮かべながら独り言を呟く謎の大悪魔がむせ返しているその頃、創造者であるガブリエルを失っても尚、そこに存在し続けるアナザー・ワールドの中はというと・・・
ルシファーの前に突如出現した赤い扉。軋む音と共にゆっくり開くその中から現れたのは・・・・・。
「やはりお前か・・・・。香華草と紅狂乱の花びらを香水の原料として使うのは一人しかいない・・・・そうだろ?キル。」
何と、赤い扉の中から現れたのは右腕の無いキルだったのだ。
「まさかとは思うが、アスタロトを倒し・・・・・いや、失礼。私が聞きたいのはつまり、どうやってここへ入り込んだのだ?」
ルシファーがそう訊ねると、キルは真顔のまま、
「あっ・・・で、出る所間違えちゃったかな・・・?あ、あは。失礼しました・・・。」
と、なんとも情けない台詞だけを残してまた扉の中へと戻ろうとしたのだが、その中はコンクリートの壁で塞がれていたのだ。
「無駄だ。この世界は既に私が支配した。ところでキル・・・・。お前には選択肢が二つある。一つは私と手を・・・・・・・」
既に意味の無くなった赤い扉を消し去り、怯えるキルを見つめながらルシファーがそう続けていると、そんな彼の口が突然ピタリと止まった・・・。何かに気付いたのだろうか?
だが、止まったのはその口だけではなかった。その異変に気付いたキルは目の前に居るルシファーの顔を覗き込む様に見入ると、口が半開きの状態で、その視線も何処か一点で固まっている。
額の部分を指先でツンツンと突いてみるが何の反応も無い。
「ったく・・・いつの間に入り込んだんだ?」
そんな中、何処からともなくあの男の声が聞えてきた。
らしくもなく、その声にビクついたキルは辺りを慌てて見回すが、なんの気配も感じられない。が、意外にもその声の主はキルのすぐ近くに居たのだ。
キルが身に纏う黒いマントの内側から、突然右腕が出現すると、それに続いて左足が現れた。
「や、やべぇ・・・。引っ張ってくれ・・・。」
マントの中から聞える声に従い、そこから伸びる右腕を引っ張るキル。すると、その中から現れたのは深く溜め息を吐くガブリエルだった。
「普通に出てくればよかったぜ・・・。お・・・?どうしたんだその右腕は?アスタロトって野郎にやられちまったのか?それにしても、どうやってここに入り込んだんだよ。」
「え・・・?ア・・・アスタロト?ま、まぁいいや。とにかく気付いたらこの真っ白な世界にいて、ここから出ようとしたらルシフェルの前に出て来ちゃったんだよね・・・。」
そう言うキルもこの状況が把握出来ていないらしい。だが、それも当然の事。
今、ここに居るキルはガブリエルの無意識という世界に氷付けにされていた、あのキルなのだから。そして、ガブリエルはそんなキルを自ら己の中へ封印し、更にその記憶を消してしまったので、まさかもう一人キルが存在している事なんて知るはずも無い。
だが、そんなキルは先程の衝撃によって開放されたのか、それともこのアナザー・ワールドを創造した時に、何等かのきっかけでガブリエルのエーテルに乗って運ばれたのかは不明だが、両者とも質問の数は同じくらいあった。
「互いに質問はあると思うが、話せば長くなるし、ややこしくなるから、とりあえず質問はこれだけにしておくよ。今僕の目の前に居るのは紛れもなくルシフェルだよね?」
石像の様にピクリとも動かないルシファーの顔を見つめながらキルが言った。
「はぁぁぁっ?ボケちまったのか?何かあんまり話しが噛み合わないが・・・まぁいい・・・。とりあえずキルがこの中に居る事が分かっただけでも助かったぜ。どうもおかしいと思ったんだよなぁ。どうやってもこのアナザー・ワールドを支配出来なくてよ・・・。ただお互いのクリエイティブ・ワールドで戦っているようなもんだったからな。だが、その答えは自ずと現れた。そう・・・お前だよ、キル。お前も知っての通り、クリエイティブ・ワールドは別として、アブソルート・ワールドを含め、この世界も同様、自分が設計した規則の中に知らぬ情報が入り込んでいては正しく機能しない。つまり、その正体はお前だ。だが、見ての通り・・・・・・無かった情報を組み込んだ今、真のアナザー・ワールドが完成した。絶対的だと思われていたアブソルート・ワールドは意外にも簡単に破られてしまう事が分かったが、ここはそうもいかねぇだろう。さぁ、そのクソ野郎に一発くれてやれよ。」
ガブリエルはそう言うと、キルの顔を見つめながら顎でルシファーを指した。
不安げな表情とは裏腹に、身に纏う黒いマントを左腕でバサリと払い、勢いよくその腕を振り上げルシファーに向けて掌を翳したキル。
するとどうだろう・・・・。ピクリとも動けないルシファーの眼前に翳した掌から放たれたのは、今にも消えてしまいそうな小さな炎と、髪が微かに靡く程度の微風・・・・・。
「・・・・・・あ、あれ・・・?」
「はっはっはっはっはっはっ・・・。」
固まったまま、顔を赤らめるキルの耳を刺すようにガブリエルの笑い声がこだました。
「はっはっはっ・・・やはりさすがの天才君も予習無しじゃ、このアナザー・ワールドは無理か。それではキル君・・・学習したまえ。」
まるで、最初の出会いを思い出したかの様に、そしてその時の立場がついに逆転したことを示しているかの様に、それは先生を気取るような口振りでガブリエルはそう言うと、不敵な笑みを浮かべながら両腕を広げ、ゆっくり瞳を閉じた。
すると、物凄い勢いで上空から何かが落下してくると、それはガブリエルの目の前で止まり、フワフワと浮遊し始めた。
その浮遊している物体は、バスケットボールほどの大きさの球体で、
銀色の表面は鏡面の様な輝きを放ち、それがルシファーの目の前に一つと、ガブリエルの頭上、左斜め上にもう一つの計二つ。
閉じていた瞳を再び開くガブリエル。そして、そのガブリエルの瞳が開くと同時に、頭上に浮遊する謎の球体もパックリと割れる様に開いた。
瞳だ・・・・。口を開く銀色の球体から現れたのは緑色の不気味な瞳だった。
そして、ルシファーの目の前に漂うもう一つの球体からはキュゥィィィンっという機械的な音が奏でられたかと思うと、そこから銀色の細く長い蜘蛛の様な足が六本ほど飛び出してきた。
「何となく読めてきたけど・・・・やばくない?っていうか僕が一番危ないよね・・・これ。」
苦笑いでキルがボソリと呟く。が、そんな事はお構いなしと言わんばかりにガブリエルの頭の中の出来事が着々と実現化されてゆく。
球体から飛び出してきた鋭く長い足がルシファーの胸部に突き刺さり、それがどんどんとめり込んでいくと、その動きが止まった。
「今、このクソ野郎の魔力を吸っているところだ。全てを吸い終わると同時にカウントダウンが始まり、やがて爆発する。そして、その原料は吸い取った魔力。つまり、凄まじい魔力の持ち主ほどその威力は絶大なものになるって訳だ・・・・。逃げる準備は出来たかね?キル君・・・。」
「嫌な性格してるね・・・・。」
不貞腐れた顔でキルがそう言い終えた頃、全ての魔力を吸い取ったのか、球体の表面に青い数字が浮かび上がってきた。
9・・・8・・・7・・・・・・
ついにカウントダウンが始まった。
「ボサッとしてねぇで後ろを見ろ。マジで死んじまうぞ。」
悠々と腕を組み、減りゆく数字を見つめながらガブリエルがそう言うと、慌てて後ろを振り返るキル。
すると、そこにはいつの間にかに現れた黒い扉が静かに待ち構えているではないか。
「やっぱり、さっきの言葉・・・撤回するね。」
いつもより大きく見えたガブリエルの背中を見つめ、キルはそう言うと、黒い扉の中へと姿を消した。
「遅ぇぞ・・・。デカイ花火を特等席で見てやろうじゃねぇか。」
キルが入った黒い扉の中には別の小さな空間が存在していて、何とガブリエルは既にその中に居たのだ。
そして、そんなガブリエルの視線の先には大きな画面が設置されていて、球体の割れ目から現れた緑色の目玉からの映像が映し出されていた。
3・・・・・2・・・・・1・・・・・
目に見える程の衝撃波が果ての無い空間へ広がり、それに若干遅れること轟音と共に巨大な炎が広がった。
その衝撃は二人が居る別の空間をも揺るがすほどの威力で、ルシファーの持つ魔力がどれだけ強大なものかが窺えた。
そして、それを映し出していた球体は、それ相応の衝撃に耐え得るべく凄まじい強度で創ったつもりのガブリエルだったが、その想像を遥かに凌ぐ威力だったので、最初に広がった衝撃波の時点で既に破壊されてしまい、ルシファーの安否を確認する事は出来なかったのだ。
「せ、先生・・・・あのカメラとこの画面は何か意味があったのでしょうか・・・?」
既に砂嵐しか映らないそれを見つめながらキルが訊ねると、誇らしげにガブリエルはこう言った。
「ゴホンッ・・・。終わり良ければ全て良しという言葉を覚えておきなさい・・・キル君。」
そんな言葉で終わらせたガブリエルだったが、ようやくキルに笑顔が見られ始めた。
「フフフッ・・・そうだね。あの威力、ここじゃなかったら国一つが消滅してしまう程の衝撃だったもんね。さぁ・・・帰ろうか。」
終わった・・・・・。
今頃、地獄に居るルシファーは今か、今かと待ち侘びてるに違いないだろう。
「フゥゥゥゥッ・・・・なんか・・・永かったな。まぁ、これでようやく俺の仕事が終わり、お前のフヌケ面も見なくて済む。心臓を返してもらったらまた若い女を殺りまくってやる。ストレス発散ってやつだ。」
「また心にも無い事を・・・。」
微笑を浮かべながらキルがボソリと呟いた。
「さてと、最後はキルに頼むか・・・。例のあれ・・・やってくれよ、パチンッてやつ。」
「え?いや無理だってば。」
「大丈夫だよ。いいから弾いてみろって・・・指を。」
ガブリエルに言われるがまま、指をパチンッと弾いたキル。
それにしても、最後になぜキルに頼んだのだろうか・・・?何だかんだ言っておきながら、キルとの別れが少し寂しいのではないだろうか・・・?
そして、キルの弾いた指の音に合わせて風景が一変し、元の褐色の大地へと戻った。
二人顔を見合わせながら、キルは「きっと僕の力ではなく、ガブリエルがタイミングを合わせてやってくれたんだな」と、口には出さずともそれを知りつつニコリと笑い、ガブリエルはそれを隠そうと
「やるじゃねぇか・・・」と言わんばかりに笑みを浮かべた。
風も無く、殺風景なこの大地・・・・
一度はこの地を踏んだはずなのに・・・まるで別空間の様・・・
何かが違う・・・何かがおかしい・・・・
歩み出してから間もなくすると、異様な胸騒ぎを覚えたキル。
だが、ガブリエルの表情を窺うとそれらしきものは見受けられない。
勘違いか・・・・・?
隣で悠々と伸びをしながらダルそうに歩くガブリエルの顔を見つめながら、そう自分に言い聞かせていたキルだったが、その不安は的中したのだ。
突然ガブリエルの足がピタリと止まった・・・・。
「ぐおぉぉぉっ・・・な、なんだ・・・。」
片膝を着き、急に苦しみだしたガブリエル。
「ど、ど・・・どうしたんだい?ガブリエル・・・。」
慌てて歩み寄るキルだが、苦悶の表情で俯くガブリエルを見た瞬間、
不安という表情からそれが愕然へと変わった。
ガブリエルの腹部から何かが飛び出しているではないか・・・・。
屈んでいるせいでそれが何なのか良く見えないが、キルにはそれが一目で分かったらしい。
何だ・・・・一体何が起きてるというのだ・・・?
「ル・・・ルシ・・・フェル?」
震える声でそう呟いたのは腰砕けた姿のキルだった。
一点を指している様で定まらないキルの視線を追ったその先には、ガブリエルの腹を内側から突き破り、何者かの右腕が伸びていた。
やがて、背中の表皮を一気に突き破り現れたのは、左腕を失い、更に善美とも言える十二枚の翼がボロボロに朽ち果てていた姿のルシファーだった。
「さすがにさっきのはマズかったぞ・・・。おかげでこの様だ。だがキル・・・・お前を消し去る事くらいは訳無い。それに、お前の友達はもう・・・・。」
偽りとしか思えないこれは・・・現実なのか・・・?
正義は勝つという使い古された台詞をほくそ笑みながら覆し、そして、この結果が必然的であると断言せざるを得ない事実を口にした。
「私は偶然助かったのではない。助けられたのだよ・・・・。それは明確に誰にとは言えないが、私はこう理解した。あのアナザー・ワールドとはそれ自体が意思を持ち、真の支配者とは創造者ではなく、それ自体にあると・・・・・。アナザー・ワールド(もう一つの世界)・・・・その名の通り、神が創り出した全ての世界を超えた意思を持つもう一つの世界。つまり、創造者の人智を超えた究極の世界が私を認め、ここへ導いてくれたとしか言いようがない。」
晴れ渡る天を見据え、そう言い終えるとゆっくりその視線をキルに移した。
しかし、現にこうして目の前に存在するルシファーを前に、ただの戯れ言だとは思えない。
絶対的な権力を握るガブリエルが創造した、あの目玉式のカメラは、どんな衝撃にも耐え得るべく創ったはずなのに、あっさりと破壊されてしまったのは、ルシファーが言う意思を持つ世界が目論んだ事で、ここに辿り着く経緯を断ったとでもいうのだろうか。
ジリジリとキルとの距離を詰めてゆくルシファー。
だが、その先には腰砕け呆然と座り込んでいたはずのキルがそれまでとは一変、キリリとした表情で構えているではないか。
「もし、ガブリエルがこんな様を見ていたらこう笑って馬鹿にするだろう・・・・・情けねぇな、死を恐れる死神が何処に居るんだよバカヤロウ・・・ってね。さぁ、最後の悪あがき、付き合ってもらうよルシフェル。」
「ほう・・・私を前に大したものだ。敬意を表して一瞬で葬り去ってくれよう・・・。」
こうなる事が定めなのだろうか?
神の力をも超える運命というものはこの世に存在するのだろうか?そして、それが確かなものであっても、それに逆らう事は出来るのだろうか?
いや・・・・・それに逆らう事もまた運命・・・
頭を過ぎるその刹那、全てが終わっていた。
「う・・・嘘・・・だ・・ろ・・・?」
微かに口が開く程度に、それは今にもかき消されてしまいそうな小さな声でキルが言った。
「嘘であってほしいのか・・・?」
それに続いて聞えたこの声は・・・・・
地面に転がり落ちるルシファーの首。
そして、それを失くした身体がドサリと倒れ込むと、その後ろには煌々と眩い明かりを放つ光の刃を手にしたガブリエルの姿があった。
「ったく、笑いこらえるのに大変だったぜ・・・。」
ガブリエルはそう言いながら、だらしなく寝そべるルシファーの背中に、光の刃をまるで墓標の様に突き刺すと、その身体は真っ赤に燃え上がる炭のように紅い光を放ち蒸発する様に消えてしまった。
「き・・・貴様・・・」
キルの足元で無惨にも残された首がガブリエルを睨め付けながらそう言うと、蔑む様な眼でそれを見下し、懐から取り出した巨大なハンマーをそれに打ち下ろしたキル。
バコォォッン・・・という衝撃音と共に地面が陥没し、打ち下ろした巨大なハンマーの下から紅い光が漏れ、薄っすらと煙が上がると、全てが終わったという安住感からなのか、崩れ落ちるように座り込んだキル。
「こ、これで本当に終わったんだね・・・。ところでガブリエル、これは一体・・・?」
「ったく、ドンくせぇ野郎だな。まだ分かんねぇのか?ここはまだアナザー・ワールドの中だよ。全て俺様のシナリオ通り。っていうか、あんな終わらせかたより、こっちの方がカッコいいだろ?それにお前の情けない面も拝めるし・・・・。」
「はぁぁぁぁっ、ホント嫌な性格してるね君は。まぁ・・・いいか。
それにしても笑っちゃうよね・・・・ガブリエルの術中にどっぷり浸かっていたくせに、アナザー・ワールド自体が意思を持っていて、そう理解した私はなんとかかんとかって戯れ言を言っちゃってるルシフェルには・・・。」
キルがそう言うと、若干の間が空き、なぜかガブリエルの表情が曇ったようにも見えた。
「いや・・・・満更嘘でもなさそうなんだな・・・これが。」
「え?じゃぁ、意思を持つ世界って本当なの?」
「俺もよく分からねぇが、その・・・何て言うか・・・この中に居ると・・・・温もりを感じるっていうか・・・お、穏やかな・・・
気持ちに・・・な、な・・・なれる・・・っていうか、その、あれだ・・・。べ、別にいいじゃねぇかそんな事。」
口を尖らせながらガブリエルがそう言うと、キルがクスクスと笑いながら
「なに一人で言っちゃって照れてんの?まさか、母親に抱かれていた時の感覚って言いたいの?キャハハハハッ。」
と、高々と笑い声を上げたのだ。
そして、平和が訪れたこの空間でしばしのジャレ合いが続くと、思い出したかのようにガブリエルが口を開いた。
「・・・そう言えば、あの馬鹿女はどうした?」
そんな問いにキルは不思議そうな顔でこう訊き返した。
「馬鹿女・・・・?って誰?」
当然ながら話しが噛み合わない中、彼女達が居る表の世界はというと・・・・・
岩場に腰掛けるアゼザルの膝枕でスヤスヤと眠るサラ。
「遅いのぉ・・・やられちまったのか小僧・・・。」
ウイスキーを飲みながらアゼザルがそう呟く中、突如、そんな彼の前にガブリエルとキルが現れた。
「うおぉぉっ、おっさん来てくれたのか?・・・っていうか、どんな関係なんだよ・・・お前ら。」
意外な光景を目の当たりにしたガブリエルがそう言うと、ウイスキーのビンを投げ捨て、膝元で眠るサラを気にする事無くアゼザルが立ち上がった。




