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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校2年生編・2学期】
218/258

囚われの姫はいずこに、再び。(お泊り合宿編その6)

ものすごくお待たせしてすみませんでした。不定期になりますが、更新再開させていきます。

※ 書式を変えました。

 太陽たちが学校に向かった後、私は制服に着替える余裕なく未羽のところに向かった。

 チャイムを鳴らすのももどかしく、開きかけたドアをこちらから引っ張って部屋の中に駆けこむ。


「未羽、どう?!」

「……多分まだ持ってる!あぁ、でも通信状況が悪くてはっきりしない!とりあえず四季先生のとこに行くわよ!」



 未羽が部屋のデスクトップパソコンからハンディのノートパソコンに何かのデータを移したのを見てから一緒に学校に向かう。2人とも制服に着替えられなかったので見つかるとまずいが仕方ない。

 生徒会室に飛び込むと、既に会長たちまで集まってパソコンを睨みつけたり資料をすごい勢いで捲ったりしていた。


「葉月!どう?!」

「だめですわ、お姉様!彼女の周りにあの子を気にしていた人なんてたくさんいすぎましたもの!」

「ある程度絞って今先輩方が調べに行ってくれてます!」


 ここにいない三枝くんと東堂先輩と桜井先輩と美玲先輩はどうやら直接聞き込みに行っているみたい。


「あぁ、もう!どうしてこんなことに……!葉月が、葉月がもっと気を付けてあの子の周りを見ていれば……!最近ずっとあんなに不安そうだったのに……!」

「葉月、落ち着いて。みんなそう思ってる。葉月のせいじゃない」


 泣きそうな葉月を宥めていると、目が合った冬馬がこっちに近寄ってきた。どうやら太陽から詳しい事情を聞いていたようだ。いつもは傍にいればすぐに喧嘩をし始めるはずの太陽が不気味なくらい素直に話していた様子が、事態の深刻さを感じさせる。


「雪」

「冬馬、ありがとう、みんなに連絡してくれて」

「それはいいけど、大丈夫か?雪、顔色が悪い」

「平気だよ、ありがとう。それより太陽、あんた何してるの?」

「あいつに個人的な恨みのあるやつを探すのは三枝と弥生の方が向いてる。俺は女子と交流ねーから。それより、あの車のナンバーに見覚えがある気がするんだ」

「どこで?!」

「どっかで…。それがどこか思い出せねーんだよちくしょう!」

「相田くん、学校関連でしょう。これはどうですか?」


 ガツン、と苛立たし気に机にバインダーを叩き付けた太陽に、会長が示したのは学年の集合写真集だった。


「なぜこんなものを?」

「これは駐車場で撮られているものも結構あるんですよ。もしかしたら相田くんが見た車が載っているかもしれません」


 ひったくるように写真集を受け取った太陽が高速でページを捲りはじめた。その間に冬馬は何か考えてはっとしたように葉月に近寄って指示を出している。


 私も、私も何か。思い出せ。

 あの車から出てきた男たちの特徴を。知っているところはないか。見覚えはないか。


 そういえば。祥子を車に引き込んだやつの一人に見覚えがある気がする。妙に広くて右肩だけ異様に上がってる特徴的な背中だったもの。でも、一体どこで?どこで見た?やたら広い背中でどたどたと走るくせに逃げ足は速かった。

 ……逃げ足?

 体育祭では周りは知り合いだらけだったから除外するとして、他に逃げていくところを見たのは…風紀取り締まりと…あとは……夏休み?

夏休みと言えば、葉月と一緒に、逃げ足が妙に速いって…そして祥子に、いや生徒会に恨みがある…


「新聞部…!」


 私がつぶやくとのと「あった……!あったぜねーちゃん!」と太陽が写真を見せてきたのが同時だった。太陽の指さす写真の白いバンの画像を雉が直ぐさま照合し始める。


「新聞部顧問のものです!間違いありません!」

「ありましたわ、お姉様!繋がり!」


 冬馬に指示されて写真とプロフィールを捲っていた葉月が、何枚かの女の子の顔と新聞部員の載った写真を取り出す。


「上林先輩に、祥子個人ではなく、生徒会に怨みがありそうな人たちの中で探してみてほしいと言われまして、この子たち、祥子によく突っかかってましたの。それに同じクラスではありませんが素行が……という話もありますわ」

「絞れてきたね……!」


 全員の顔が少し明るくなったその瞬間、憤慨しきった四季先生と愛ちゃん先生が生徒会室に飛び込んできた。


「あ、先生、警察の方は……?」

「ダメです!私たちが何度言っても、非行少女の家出としか扱ってくれません!」

「様子を見ろって、一点張りで」

「目の前で拉致されているというのに、なんなのですか…一体!!」


 普通だったら警察が動いてくれるようなものにも動かないのは、ゲームでの制約がかかっているせいだと思う。あわよくば、で常識的な手段を講じてみたが、予想通りこれは無意味だったようだ。

 だがそんなものは予想済みだ。


「四季先生、車を出してもらえませんか?私、多分、場所を特定できそうなんで。なぜとは訊かないでください」

「ワタシのもあるわよ?」


 挙手する未羽の不審な言動を誰も聞き咎めずに、真面目な答えが返ってくる。  まぁツッコむ担当の私もそれどころではないので放置だ。


「四季先生の方が危険ですが速いと思いますから」

「じゃあ後続はこっちに乗りなさい。東堂くんたちには現地集合するよう連絡係を」

「私がやりますっ!私、足手まといになりそうなのでみんなの連絡の連携をしますっ!」


 こめちゃんが勢いよく手を挙げて持っているケータイをすごい速さで操作し始めた。彼女はケータイ操作は尋常じゃなく速いし、会長もいるから問題ない。


「じゃあ行くわよ」


 四季先生の車に乗り込んだのは、未羽、雉、太陽、俊くん、私、そして冬馬だった。いつもなら叫び出すはずの荒い運転に誰一人文句を言うこともなく、黙って車にしがみついている。


 隣の未羽がGPSで追い、雉がそれを全員に送り、太陽は黙って座って辺りを注視。俊くんは四季先生のカーナビ担当。私はひたすら座って念じる。


 これはイベントの一つだと祥子は言ってた。

 これが、普通のイベントならば、最悪のことなんか起こらないはず。

 でも学校じゃないとこで、こんな大掛かりになってて。相手も免職になった教師とか退学になった生徒だ。捨て身で何するか分からない。あの子にもしものことがあったら…もしもの…。


 急速に押し寄せては引いていく不安の波でいつもに増して酔いが早くて気持ちが悪い。吐き気を堪えて唇を引き結んだとき、隣の冬馬に握り込んだ手を柔らかく包まれた。


「雪、落ち着け」

「落ち着いてる。大丈夫」

「大丈夫じゃない。さっきから顔色が悪い。まだ移動してるってことは最悪のことはないはずだろ?」

「でも!」

「雪、上林くんの言う通りよ。あんたが一番顔色悪い。まだ平気なはずよ、そう信じなさいって……あ、止まった!Q交差点の3キロ先交差点を左に行って、真っ直ぐ突き当たり倉庫です!」


 未羽の言葉と同時に何も訊かずに四季先生がアクセルを踏み込む。


「Q交差点ですか…ここから距離がありますね。…みなさん、しっかりつかまっててくださいね!」


 先生は交番の目の前ではなく横道にそれて脇道を絶対制限速度オーバーだと思われるスピードでかっ飛ばしている。それでも未羽の持つパソコンに示された点が動かないその時間があることが怖い。この間にもあの子に何かがあったら…。


 ガチガチと歯がなりそうになり、歯をくいしばる。


 不安なのは私だけじゃないんだから、自分だけ被害者面するな、私!






 倉庫に着いたと同時に太陽が車のドアを蹴破るようにして飛び出した。


「何番ですか?!未羽さん!!」

「8番倉庫!角のやつ!!」


 なぜ未羽に分かるのかとかそういう話は既に訊かれてすらいない。

 太陽が走るその後を残りのみんなで必死で追いかける。


「太陽、飛び込むのは危ない!!」


 私の声も聞かず太陽は倉庫に飛び込んだ。


「湾内?!どこにいるんだ!?」



 しかし、そこに祥子の姿はなかった。

 いたのは、なぜか気絶して縛られている同世代くらいの男女とそれから新聞部顧問だったはずの青い顔のおっさんだけだ。

 太陽が「おい!!湾内はどこだよ?!」とガクガク揺さぶっているせいでおっさんが白目をむき、俊くんが「太陽くん、ストップ。それ以上やったらだめだよ!」と羽交い絞めにして止めている。


「未羽、ここじゃないの?」

「GPSによるとここのはずなんだけど……おかしいわね」


 辺りは、どうやらよく使われているのか、机やら椅子やら紙やらなにやらコードやらが散らかっていた。そのうちの一つの椅子の上に乗ったカメラをよくよく見ると、大きく「証拠品だよ」と書いたファンシーな柄のメモが貼ってある。


「証拠品?……これ、どういうこと?」


 メモには

『相田雪ちゃんは保護しているよ。きちんと来るようにね♡待ってるよー! お兄ちゃん』

と書かれてあった。



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