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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校2年生編・2学期】
206/258

トラブル発生は日常茶飯事。(対新聞部編その1)

進路を変え、お掃除をした(苛め撲滅)日から幾日かが経った。

進路を確定させる志望書を提出して、私は医系コースの授業を受けている。

「しっかし、雪は理系かぁー。国立文系じゃなかったっけ?」

明美に言われてここのところ何度も繰り返している言葉を繰り返す。

「これまではそのつもりだったんだけどねー。冬馬の勉強見てたら私もいいなって思っちゃって。間に合えばいいんだけど。」

「雪さんなら大丈夫だよ。」

俊くんがにこっといつも通り優しい微笑みを浮かべてくれる。未羽は事情のおおよそは推測しているらしいがこの件については、

「ゲーム関係ないとこだしね。根本原因は上林くんと付き合ったとこにあるんだろうけど、あんたの出来が良すぎたせいだろうし?私になにか言うことはないわ。」

と、特に何も言ってこなかった。

ちなみに、医系が冬馬と私、理系が俊くんと未羽、文系がこめちゃん、明美、京子、遊くんだ。

「文系の科目で分かんなくなったら任せて。多分答えられる。」

「頼りにしてるぜ〜雪ちゃん〜。」

「遊くん、あんた、理系の雪ちゃんに訊くの、男として恥ずかしくないの?」

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥!だろ?」

「遊くんの場合は訊く回数が多すぎて恥とも思っていない気がしますわね…。」

「雪ちゃん、そろそろ生徒会の方行こ〜?」

「そうだね、今日も張り切っていこっか。というわけで、みんなまたね。」

「またねぇー!」

「頑張ってくださいまし!」



茶道部のみんなに見送られ、向かった生徒会室に入ると、今日は先輩方がいなくてガラン、としていた。

先輩方が毎日は来なくなった今の生徒会室は少し寂しい。

なんだかんだ、週に2回は自習しつつ仕事を見に来てくれているのだが、やはり毎日誰かしらいた去年や一学期までとは違う。

どれだけ先輩たちの存在が濃くて、大きくて、甘えていたか分かる。

「うーん、寂しいよぅ…。」

こめちゃんがしょんぼりとして椅子に座る。

会長はその中でも登場回数が多い方だが(そしてそれは間違いなく仕事のためではなくてこめちゃんに会いに来ているだけなのだが)、それでも今は冬馬が主体の生徒会であることを周知徹底させ、私たちに慣れさせるためにあえて控えめにしているらしい。

「とにかくやろうか!そのうち一年の子たちも来るだろうし。」

俊くんがそう言って席に着き、先に来ていた雉が早速作っていたプリントを冬馬に見せに行き、猿がお茶を淹れてくれる。

私は二学期始めの会計処理があるのでそれを始めるために電卓と書類を並べて作業開始。


そんなことをしている間に外に人影が見え始め、バタン!とドアが開く。

「遅くなりましたー。」

「お姉様ぁ!!」

「だからねーちゃんに飛びつきに行くなっ迷惑女!」

「はっ、葉月、そんなに慌てたらだめだよ!!スカート捲れてるっ!」

「大丈夫ですわっ、葉月は常にスパッツを着用していますもの!」

「…葉月、公言しなくていい。」

途端に騒がしくなった生徒会室はあっという間に活気を取り戻していく。

「おっねえっさまっ!」

「うんうん、葉月、お疲れ。今日も元気そうだね。」

「はい!葉月はお姉様にお会いできれば元気百倍!いつでも万力ですの!」

「お前はそれでもいいだろうけど、ねーちゃんの元気は落ちてってんだよ自覚しろ!」

「あ、あははは。あ、上林先輩。頼まれていたことをやって来ました。これ、まとめたプリントです。」

「神無月ありがとう、助かった。」

冬馬が神無月くんに近づくと、近くにいた太陽が冬馬を睨みつけた。

「…父さんや母さんがなんと言おうと、俺は、あんたのこと許したわけじゃねーからな。ねーちゃんを巻き込みやがって。」

「それに関しては、俺は甘んじて文句を受けるよ。」

「冬馬!太陽!」

鋭い声で二人を止める。

何事か分かっていない全員が雲行きが怪しくなった様子に困り、暫し沈黙と気まずい空気が流れた。


が、

「あのー?」

その空気を、持てる主人公パワーで見事破壊してくれた子がいた。

「し、師匠…あの前に渡された宿題なんですけど…なぜかここがマイナスに…。」

書類の突き合わせに時間がかかる祥子のため、私は特訓用に、一学期に処理済みの今年度会計書類の一部の計算を宿題として渡していた。その書類を持ってある部分を睨み付けてうんうん言っている。

「何度計算してもなんです…。」

「…お前。また計算ミスじゃねーのか?どーせ電卓打ち間違えたんだろ?」

「やってきたのに、どうしても合わないの!4回確認したんですけど…赤字ってどーゆーことなんでしょう?」

「年度初っ端から赤字なんて意味わかんねーだろ。見せてみろよ?」

祥子のファインプレーで冬馬から目を離した太陽が、祥子に近づいて上から書類を見ている。声に気づいて顔を上げた祥子は、太陽の顔が目の前にあったことで顔を真っ赤にした。

「うひゃああ!」

「~っ、耳元で何いきなり大声あげてんだよバカ!俺の耳を壊す気か?!」

「ちちちち違うっ!そうじゃないけど!」

「はーいはい。祥子見せて?どこ?…あぁ。これは合ってるよ。新聞部だもん。」

「どういうことですか?」

「いい機会だな。まとめて話しておくから全員聞いてほしい。」

冬馬が一年をまとめて話し始めた。

「端的に、この生徒会にとっていい関係じゃない相手が二つある。」

「一つは先生方ですよね?」

「そう。だが、これは去年の天夢高校での編入騒動で少しマシになった。それで、そのもう一つが新聞部だ。」

「新聞部?なぜですの?」

「それは…去年会長が圧力をかけたから。」

「…会長って海月会長ですね?どういうことです?」

「まさか、増井先輩関係ですか?」

見事的確に事態を把握した三枝くんと太陽に、冬馬が補足する。

「太陽くんの想像通り。あいつらは俺らのやる広報と違ってゴシップネタもかなり書く。部活間の恋愛事情とかそういうのな。で、それを売ってその収益でまた書くわけ。」

「特にこの生徒会の人たちのネタは大好きみたいでね?桃くんが来る前は大変だったんだって。桃くんのおかげでかなり排除されて今は強硬な取材とかないけど。」

俊くんの言葉に桃が照れて、

「生徒会のみなさんのためなら命も惜しくないんす」

なんて言っている。それを会長に聞かれたら本当に命を奪われるぞ、桃。

「それでだ。去年会長と増井が付き合った時にその特集をしようとしてな。会長には、なんでもファンクラブみたいなのがあるらしくて、情報はそっちの方が詳しいからあまり売れなかったらしいんだが。問題は、やつらの持ってる特権なんだ。」

「特権?」

「写真を撮ることだよ〜。普通はダメなんだけどね?記事に貼る範囲なら部活の権利として取材写真が許されてるの~。もちろん、本人が嫌がったらダメなはずなんだけどね、それを無理矢理了承したとして写真とか取材しようとするの…。」

「酷いですわ!」

「去年増井がかなりしつこくつけ回されて、それで会長の逆鱗に触れた。会長はなんだかんだうまくやって新聞部の予算を3分の1まで減らして実質活動資金を奪ったんだ。」

「…えげつねー。でもあの人ならやりそうだ…。」

太陽が呆然と呟く。

「だから予算欄はおそらく今年は赤字になっているはず、ってことだ。分かったか?湾内。」

「な、なんとなくは。」

「今年度一学期はどうだったんですか?」

「それなりに大人しくしてたよ。生徒会に絡むこともなかったし。…と思うんだけどね?」

「だけど?雪、どういうこと?」

「んー。実は今ちょうど9月1日に提出された部活の夏休み期間の経常収支チェックしてんだけどさ、新聞部だけこれまでのものと合わせた全体の計算が合わないんだよね。こんなに赤字少なくないはずなのに、毎月を比較して減り方がおかしい。あと、なんだろうな。全体的に整いすぎてるの。予想外の出費とかで変動するのが普通なのに、毎月特に何もない。違和感があるんだよね。」

「8月に何か収入があったってことか?」

「号外とか出してたっけな?」

「あ、あったッスよ!」

猿が言ってくる。

「これッス。」

出されたのは、薄いA3用紙の記事だ。

「俺っち、ファイルの整理あるんで新聞部の活動整理してたッス。なので購入したッス。」

「え、ねーちゃん?!」

そこに貼られているのは『1年もの宿敵・2年双璧 夢城愛佳と相田雪ついに和解!』 という大袈裟な見出しのついた記事だ。

「あ、師匠、これ。」

「夏休みの頭に隠し撮りされたあれだろうね。」

「雪さん、夢城さんと仲直りしたんだ?」

「仲良いとは言えなかったけど元々喧嘩なんかしてなかったよ?最近話してなかったけど、たまたま。太陽にお弁当届けてもらう時に話してさ。その時の隠し撮り。」

「女王陛下、この記事はいいと思うんすけど……実はこんなもんがありやした!」

「え、これ…。」

「酷い!!酷いですわっ!!」

桃が渡してきたのは、その写真単体だ。そこには、「死ねブスバーカ」と私のところに黒マジックで書かれたりしている。

「さっき廊下で近くで騒いでた女子生徒を追い払った時に落としたもんす!」

それを聞いた冬馬や太陽、俊くんは表情を険しくさせているし、神無月くんや葉月や祥子やこめちゃんはムッとしている。

が。

「いいんじゃない?」

「よくないよぅ!!何がいいの、雪ちゃん!」

「えーこんなの個人の持ち物でしょ?その写真、他のところで画鋲で顔のところ刺されてるのとかも見たことあるよ。わざわざ私の机に入れられてたりしたことあるくらいだもん。それは大したことないよ。」

「雪さん…少しは怒っていいんじゃないの?」

「これだけの(イケメン)に囲まれてるし、去年は秋斗と冬馬の間でふらふらしてるようにしか見えなかっただろうし、恨みを買ってることも知ってるからね。写真で収めてくれるならそれに越したことはないよ。私にも周りにも害ないじゃない?」

ほら、この前の制裁から、私や私周辺への嫌がらせはぱったりなくなっているしね。


「お姉様にブスバーカ!など、最も程遠い言葉ですわっ。なんと安直な表現なのでしょう!こんなことしか書けない低能ゆえにお姉様の素晴らしさが分からないのですわっ!」

「いやいや葉月、ブスバーカって可愛いからね。」

「何をおっしゃいますの!?いかにお姉様と言えどもこればかりは譲れませんわ!」

「いやいや、冷静に考えてみなよ?自分のうっぷん晴らすため持ってる嫌いなやつの写真に、ものすごく論理的にいかに嫌いか、なぜ嫌いかを書き連ねてたり、多種多様な罵詈雑言を表現豊かに書いてたり、どこの国の言葉とも知れない言葉で悪口を書いてる方が絶対怖いから。これだったら『あぁ、ただ嫌いなんだなぁ』とか思って安心できるじゃない。」

「雪ちゃん~その発想に至って安心する雪ちゃんの方が私は怖いよう~!」

「問題はそれだけじゃない。」

冬馬が険しい表情のまま続ける。

「え、私に問題があると?」

「雪のこういうことに対する危機感のなさも怖いけど、そうじゃなくて。これ、撮ったのは新聞部なんだよな?」

「そうだね、写真一緒だし、撮られた時に見たし。」

「写真の単独販売は禁止されているのを忘れた?」

「!!」

「それに隠し撮りが常習化してるとすれば、他のプライベートも撮られて売られている可能性があんだろ?それは立派な肖像権侵害じゃねーの?」

「プライベートな写真は撮影禁止。構内に限り、そして本人の許諾のある時のみというのが厳密な制約だったよね。違反してるんだとすれば活動停止にさせる必要があるね。」

冬馬に続き、太陽、俊くんが問題点を指摘する。

三人の厳しい顔はそのせいだったらしい。

「自分の写真だったからどーでもよくて忘れてたけど、そういえばそういう問題もあったね。」

「雪は自分のことに疎すぎるんだ。」

「じゃあ、冬馬くん、どーする〜?生徒会長の冬馬くんの判断に私たちは従うよ?」

こめちゃんの言葉に冬馬がしばし黙考して、そして口を開いた。

「これだけじゃ実際に販売してるかの確証も得られない。まずはそういう証拠を集めるとこからだな。雉。」

「なんでしょうか?会長殿下。」

「…会長殿下?」

「そうですよ、湾内さん。俊のアニキのお兄上が会長閣下、現会長は会長殿下とお呼びすることにしました!」

「…それはもうなんか…まぁ、置いとく。それより、ネットで販売網とか調べられるか?」

「もちろんです!お任せください!」

「それから、後は個別にいくつか集めてみるか…。伝手は…。」

「なら、ファンクラブの方にご協力いただいたらどうですの?そういう規則違反の物はファンクラブでは徹底して禁じられていますけど、やはりお好きな方の写真は欲しいもの。持っていらっしゃる方はいるのでは?」

「…ふ、ファンクラブ…?」

神無月くんは絶句しているが、冬馬は平然としている。存在を知っているからね。

「コンタクト取れるかな…。大体いくつくらいあるんだ?」

「美玲先輩なら知ってそうじゃない?連絡してみるよ。」



連絡した美玲先輩はあっという間に来てくれた。

「会いたかったな!美少女たちよ!」

がばぁっと手近にいたこめちゃんと祥子を抱きしめる先輩。

「お忙しいところすみません、美玲先輩。あの、ファンクラブってご存知ですか?」

「もちろんだ!」

「それが誰にあってどのくらいあって…など、ご存知ですか?」

「ふふふ、私を誰だと思っているんだい?雪くん。美しいものに関する情報は私の右に出るものはいない!そうだな、まず海月、夏樹はあるぞ。それから上林くん、四季先生、最近は相田くん、神無月くん、三枝くんもある。」

「えぇ?!僕のですか?!」

まぁ、攻略対象者だからな。

神無月くんは驚いているが、太陽は面倒そうな顔をしているだけだし、三枝くんは至極どうでもよさそうだ。

「それから、雪くん、夢城くん、祥子くんに葉月くんもだ。規模がもう少し小さければ私や尊のもあるな。」

はぁ。未羽の情報はデマじゃなかったということか…私の何がいいんだよ…。

「所属メンバーまでは分からんが、校内生徒に聞けばどこかしらには所属していると思うぞ?」

「そんなにですか…。」

「だがそれを俺たちが聞くのは難しいな…。」

それはそうだ。あなたはファンクラブに入っていますか?と訊いて、貴方のですとは答えづらい。

「じゃあ、私やります〜!」

「こめちゃん!?」

「私はないみたいだし、役に立てそうだもん!珍しく私がやれるので、気合入れてくー!」

小さいがっつぽーずで気合いをいれるこめちゃんに、俊くんも頷いた。

「あ、僕もやるよ。こめちゃんをサポートするから。」

「どれくらいで出来そう?」

「夏休み明け試験挟んで5日かなぁ?任せて〜!」

「分かった。じゃあ任せたからな。」

「合点承知〜!」

「 任せておいて。」

「な、夏休み明け試験…うぅ。」

ただ一人、祥子だけが全く関係ない部分で詰まっていた。



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