[天狗人]
教室から出て、しばらく歩くとすぐにその異変に俺は気づいた。さっきまでなかったものが、そこにあったのだ。階段の所にある防火シャッターである。俺は、なんとかそれを開けようとしていたがうんともすんともしなかった。
さっきの今であるため、奈津子ちゃんは今にも泣き出しそうな顔をしていた。もう、彼女が泣いている姿は見たくはなかった。
「開かないの?」
彼女は不安そうに聞いてきた。俺は「開かないね」と正直に答えた。そして、この階には階段が二つと西棟への連絡通路があることを俺は思い出した。
「とりあえず、反対側の階段の方も見てみようよ。それにしてもなんで、防火シャッターが下りてるんだろうね」
俺たちは、歩いて東棟の反対側へと向かった。しかし、案の定反対側の階段においても防火シャッターが閉まっていた。この学校では、火災でも発生したのであろうか。そんなことはない。火災があったらさすがに気づいているからだ。なんだか、ホラー映画の様相を呈してきてはいないだろうか。いきなり、窓を割って入ってくるゾンビの集団。防火シャッターが閉められ、この場所から脱出が困難な男女二人。這いずり迫り来るゾンビの大群になす術無く喰われていくのである。
いやいや。さすがにそれはないだろう。ここの普通の中学校である。しかし、俺はもしかしたらここから出られないのかもしれないと思ってしまった。
「なんか、なんか、なんかないかな……」俺は言った。
「さっき、西棟がなんとかって……」奈津子ちゃんは言った。
そうだ。西棟だ。どうして、俺はこうもすぐ言ったことを忘れるのだろうか。そんな性格設定をした覚えなどないのだが忘れやすい。
俺は、小走りで西棟へと向かった。この間、俺は彼女の手を握って小走りであった。これが、吊り橋効果というものなのかもしれない。しかし、万が一死ぬようなことがあればそんな効果はなんの意味も持たない。案外、吊り橋効果というものは諸刃の剣なんですかね。
西棟についたが、驚いたことに防火シャッターは下りてはいなかった。やはり、東棟で何かがあったのかもしれないと思った。
「よかった……これで一階に下りれるよ」
彼女は安堵の表情を見せて言った。
「さっさと降りよう」
一階につくと、一階の窓からグラウンドが見えた。俺は、一瞬にして全身から力が抜けた。一時は本当に帰れないんじゃないかと思っていたからだ。まぁ、さすがに夜中まで帰ってこなかったら親たちが何かしらの行動は起こしてくれるかもしれないが。やはり、中学生とはいえ携帯電話は持つべきなんじゃないかと思ったのだった。
そんな平凡なことを考えていると、コツコツという足音が目の前から聞こえてきた。よく見てみると懐中電灯を照らして、こちら側に歩いてきている様子だった。しかし、俺はそれを警備員かなにかだと期待したのだが自分の中学校には警備員など居ない。また、先生だったとしてもあそこまで身長の小さい先生は在籍はしていない。なぜなら身長が30センチほどであるからだ。
「ちょっと、シンジくん誰だろう……」彼女は怯えながら言った。
その中途半端な小人は、顔にお面を着けていた。たぶん、鼻が長く真っ赤であったため天狗であると俺は推測した。そして、身長が異様に小さい。端的に言えば、エイリアンと言っても過言ではないのだ。
俺たちは、この場所まで誘導されたのだろうか……。よく見ると、グラウンドの隅っこで小さなたき火が行われている。何人ものその小さい天狗モドキが踊りながらたき火を囲んでいた。




