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ランドスケープ  作者: 井上達也
私、誕生篇
21/35

[それどころじゃなかったみたい]

 なんということでしょう。俺が、愛して愛してやまない彼女からまさかの愛の告白。しかし、俺らは中学生である。こんなもの愛の告白でもなんでもなく、友達以上恋人未満な関係で居ましょうね的な話に違いない。

「えっと、それはどういうことですかね」

 俺は、質問してみた。

「それは……」

 彼女は座っていて、俯き加減な清き黒髪の乙女を俺は見下ろしていた。どことなく、中学生のくせに胸元がユルユルな気がして、見えそうで見えなかった。というか、周りの女子たちは皆胸元がユルユルな気がする。ちょっとした、成長期を誇示したいのか。私は、大人の。あなたたちみたいな、午後6時からのアニメを見ようと必死こいてる馬鹿みたいな男たちとは違うの、とでも言いたいのだろうか。

「それはね、シンジくんといろんなことができる関係になりたいの」

 彼女は顔を赤らめてこっちを見ながら言ってきた。おいおい。可愛いではないですか。ちょっと。

「だから、えっと、それはどんなこと……」

 多分聞いてはいけないことだったような気がする。

「例えば……キス……とか」

 ああ、なんだキスかと俺は思った。そういえば、先日もこの同じ場所同じような時間に、違う役員の方ともしたような。チュッと。

「いいよ。うん。しようよ」

「え」

 俺は、はっきりと言った。どうやら、俺の中でその行為に対する耐性のようなものが付いているらしい。そして、キスとはいきなりする者だというよくわからない先入観も持ってしまったらしい。

「はわわわ」

 彼女は、言葉にならない言葉を発していた。それを遮るように俺は、彼女の唇に自分の唇を重ねた。時間が一瞬止まったような感覚が俺の中にあった。なんだろうか。先日とは感覚が違う。そして、幾分ピュアだ。

 俺は、3秒くらい同じ体勢でいた。し終えると、まだ彼女は目を閉じていた。天使がそこに居た。

「はわわわ」

「ごめん、いきなりで」

「うん……初めてだったからビックリした」

「初めてだったんだ。ごめん」

 俺は、慌てた。百戦錬磨の先輩とは違って、彼女はまだまだ純情少女だったのだ。でも、彼女は「カボチャ味じゃなかったな……」と笑っていた。彼女は、どこでファーストキスはカボチャ味という文化を学んだんだろうか。それも、彼女がよく読んでいる本たちから学んだ知識なのだろうか。



 気がつくと、外は真っ暗だった。結局、先輩たちは来なかった。直接帰ってしまったのだろうか。下校時間になってしまったので、俺たちは生徒会室の鍵を閉めて、教室を出た。

 真っ暗な学校というは、正直な所怖い。冬は、特に寒い上に日が落ちるのが早いので怖さも俺の中で少々増している。

「シンジくん。教室寄って良い?忘れ物しちゃった」

「わかった」

 そういって、俺は彼女の後をついていった。電気は、俺たちが居るというのに真っ暗であった。先生が消してしまったのだろうか。目が慣れてきたとはいえ、暗すぎる。俺は、腰が引けていた。

 教室の前についた。学校は四階建てで、東棟と西棟に分かれている。といっても、校舎自体は狭くて小さい。小さい土地に頑張って建てた感が随所に感じられた。現在居る教室は東棟の三階だった。ちなにみ生徒会室は四階にある。

「ちょっと、待ってて」

 そういうと、彼女はそそくさと教室の自分の机のある場所に向かった。俺は、誰かが入ってこないかどうか確認をするつもりはないのだが、教室の外の入り口に立っていた。

「きゃあああ」

 彼女の悲鳴が教室の中から聞こえてきた。俺は、丁度教室の入り口から見える窓に映るオレンジ色の満月を見ていたのだが、慌てて教室に入った。

「ど、どうしたの!」

 彼女は、机の下に尻餅をついていた。あわや、パンツがというセクシーショットだったのだが、そんな卑猥なことよりも重大なことが目の前で起こっていた。彼女の机の上にゴキブリの死骸が三匹ほどひっくり返っておいてあったのだ。そして、一枚の紙も置いてあった。



「キミハニゲラレナイ」

 彼女は、恐怖のあまり涙を流してないていた。そんな彼女を俺は抱き寄せた。

「大丈夫」

 そう言ってなだめたのだが、実際の所自分がおしっこをちびりそうで仕方なかったのだ。何が、なんだかわからない。一瞬の気の弛みも許されないジェットコースターホラーでもこれから始まるのだろうか。もし、誰かが彼女の机の上にこの奇妙で悪趣味な物体と紙をおいたのだとしたら相当な変質者である。俺は、友達にはなれそうもないと思う。

「今日は、もう帰ろう。立てる?」

 そういって、彼女に聞いた。彼女は、ふりしぼるようにして、うんと答えた。俺は、彼女の机の上にある悪趣味なセットを教室のゴミ箱にぶち込んだ。明日になったらみんな気がつくのだろうか。いや、もしかしたら、いの一番に犯人がやってきてゴミ箱からそれを持ち去って、クラスメイトにバレないように処理するのかもしれない。いずれにしても、こんなやり方は卑劣なのだ。

 彼女が立ち上がった瞬間、学校全体もなにかの拍子で立ち上がったのか、ゴゴゴという大きな音が学校全体に響いていた。このとき、俺はなにもわからなかった。この学校で今何が行われているかということを。


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