第1章 幼児期 成長編 1話転生
んっ……。
温かい光が目に差し込む。
……眩しい。
「おぎゃああぁ!! おぎゃあ!! おぎゃああぁ!!」
誰だ誰だ……こんなに騒がしいのは!
重い瞼をゆっくりと開ける。
ぼんやりとした視界に映ったのは、二人の男女だった。
女の方は――おうおう、これはこれは。
美しい金髪ロングのセンターパートのお姉さんではありませんか。
目鼻立ちはくっきりとしていて、どこかロシア人を思わせるような整った顔立ち。
高校生男子だからって、すぐ惚れたりなんかしないんだからね!
……勘違いしないでよね!
その隣にいるのは、髭を綺麗に整えた、おしゃれなオジサンといった感じの男。
顔立ちはどちらかというと日本人寄りか。
いい意味で、顔が薄い。
なんとなく親近感が持てるぜ。
黒髪には白髪が混じっていて、さながら○ラック・ジャックを思い出す。
「やった!!!!! やったぞ!! アリスっっ!!!」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ん~~~~?
どういう状況よ。
お姉さんたち、何者?
問いただそうと口を開く。
……開く?
あれ?
声が出ない。
いや、正確には――発音ができない。
なぜだ?
そのとき、ようやく気づいた。
「おぎゃああぁ!!」
……今の声。
俺の喉から出てる?
まさか。
そんなわけ――
恐る恐る、自分の腕に目を落とす。
……。
…………。
あらまぁ!
なんということでしょう!
あんなにも逞しく引き締まっていた俺の腕が、こんなにももちもちぷよぷよになっているではありませんか!
俺の筋トレの成果を返してぇぇぇ!!
いや、待て。
落ち着け俺。
状況を整理しよう。
声が出ない。
身体が小さい。
腕がぷにぷに。
そして目の前には、俺を抱き上げようとしている男女。
……まさか。
俺――赤ちゃんになってる?
いやいやいや。
そんなことある?
普通、人間って死んだら終わりじゃないの?
天国とか地獄とか、そういうのじゃないの?
それとも……。
これが最近のラノベでよくある――
異世界転生ってやつなのか?
いや、まだ決めつけるのは早い。
ここがどこなのかも分からない。
そもそも、この二人が誰なのかすら分からない。
情報が足りなさすぎる。
まずは冷静に――
……待て。
何か忘れている。
頭の奥に、ぼんやりと蘇ってくる。
トラック。
あのフードを被った男。
そして――
『あとは頼んだぞ』
……あの言葉。
まさか。
あいつは、この状況を知っていたのか?
考えれば考えるほど、頭が混乱してくる。
そんな俺のことなどお構いなしに、目の前の女性が俺を抱き上げた。
温かい。
なんだろう、この感覚。
妙に安心する。
さっきまでの混乱が、ほんの少しだけ和らいでいく。
「あなた……」
女性が、涙を浮かべながら俺を見つめる。
「やっと……会えたわね」
……え?
誰と?
俺と?
いや、俺はあなたのこと知らないんですけど。
そもそも、俺は――
「俺は……」
声にしようとする。
けれど口から出てきたのは、
「おぎゃ……」
だった。
……。
…………。
マジか。
俺、本当に赤ちゃんになってるじゃねぇか。




