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第十四話「エルナ王国・1」

 ローレリア大陸の中心部に広がるヘピロス地方。古の時代には遥か西のメーゲレン地方と東の閃珂地方を繋ぐ要衝地として栄え、いくつもの国家が興亡を繰り返してきた。

 そんな大陸中央部には現在3つの国家がしのぎを削っていた。一つはアギト国、もう一つがエルナ王国、最後がイルミテット王国である。これらはへピロス三国としてくくられているがその国力には明確な差が存在していた。国力の順番にすればアギト国、イルミテット王国、エルナ王国となる。アギト国は閃珂地方の大国、厘が存在していた時に誕生した国家であるが朝貢関係にあり、多大な恩恵を受けいていた。厘が衰退して以降は厘に仕えながら外様として冷遇されてきた優秀な将兵を抱え込み、勢力の拡大に成功した。結果的に三国の中で最も早くに拡大する事が出来ていた。

 しかし、それは近年急速に崩れつつあった。アギト国の南東部に位置するイルミテット王国が台頭し始めたのである。閃珂地方では厘の崩壊によりいくつもの諸侯が独立し、戦国時代の様相を見せている。そんな戦火から逃れる為に西へ逃れてきた難民を保護し、自国の国力に換算させているのである。現在でこそ国力を垂れ流すだけだが荒れ地の開墾や徴兵を行っており、数年以内にアギト国と対等に戦えるだけの戦力や国力を用意できる可能性が高かった。それに焦りを感じているアギト国は隣接する独立した村を襲撃し、略奪したり村人を奴隷として連れてくる事で対抗しようとしていた。

 その一方でエルナ王国ではこのような国力拡大が行えていなかった。というのも閃珂地方の難民を得ようにもイルミテット王国によって防がれており、それは出来ない。更に南西部にはバレシア帝国という大国と領土を接しており、そちらへの警戒を怠る事が出来ない状態にあった。幸いにもバレシア帝国は遥か西方の国家に兵を集中している為にエルナ王国に対して何かしようという気は起こしていない事だがそれでも警戒を怠る事は出来ない相手だった。

 このようにエルナ王国は運に恵まれずに国力を伸ばすことが出来ずに2国との差が広がっている状態にあった。今でこそ2国がお互いにのみ視線を向けている為にエルナ王国は放置されているがどちらかでも兵が向けられれば抵抗むなしく滅亡へと至ってしまうだろう。そうならないためには国力を高めるしかないのだがその方法はなく、ただただ時間だけが流れていくだけだったのだ。






 エルナ王国の王都リミリアに聳え立つ、とまではいかないがそれなりの大きさを誇る王城では国王エルナ3世が何度目かもしれないため息をついていた。彼の前にはエルナ王国の宰相がおり、国家の現状を報告したばかりだった。つまり、他のへピロス諸国と益々国力に差がつけられたという報告を。


「どうにもならんか、宰相よ」

「残念ながらいざという時に備えて防備を整えておく以外に方法が見つかりません。我が国は立地に恵まれなさ過ぎましたな。アギト国は厘の支援を受けられた過去を持ち、イルミテット王国は今まさに閃珂地方から人を集めて力に変えている。

対する我が国はバレシア帝国という大国と領土を接しておりそちらに警戒を割かざるを得ず、思うような国力拡大が行えていない。このままいけば遠からぬうちに我が国は……」


 宰相はそれ以上は何も言わなかったが言わんとしている事は国王にも理解できた。国王はこんな大変な時期に王となってしまった事を恨むがなってしまった以上どうしようもないと再びため息をついた。最近ではどうすればいいのか頭を悩ませて心労が募るばかりだった。後継者候補である子供たちが幼い為にここで倒れるわけにはいかないがこのままではいずれ倒れてしまうだろう。


「そう言えばアギト国が西方に兵を派遣しているそうだな」

「そのようです。どうやら西方でエルフが集まり勢力を拡大しているようです」

「そうか。アギト国をけん制できる要員の一つとなればいいが……」


 エルナ王国はエルフに対して偏見を持っているわけではない。むしろエルフを人間と同様に大切に扱っている。何しろエルナ王国の人口の2割はヘピロスエルフが該当し、エルフは近しい存在だったのだ。

 ただ、それでもその勢力に期待はしていなかった。それはエルフを過小評価しているとかではなくアギト国がそれだけ強大であるためだ。いくら小部隊を退けたところで煩わしいと感じたアギト国が大軍を出せば瞬く間に蹂躙されてしまうと考えていた。だが、アギト国がそれをする事は当分ないと国王は予想している。そんな大軍を出せばイルミテット王国が好機と見て侵攻してくる可能性が高いからだ。

 かつては国力の違いからアギト国に攻め入る事はなかったが今のイルミテット王国にはそれを成せるだけの国力が存在しているのだ。


「そのエルフたちについても情報を集めておけ。この情勢だ、使えるものは何でも使いたいからな」

「了解しました。エルフを中心に何名か選抜しておきます」

「頼むぞ。それと、万が一にも敵対するような行動は慎むように。ただでさえアギト国という敵が存在するのにこれ以上敵を増やす必要は無いからな」

「勿論です。最悪の場合にはこちらの身分を明かすようにさせましょう。向こうも正体を知ってから敵対するとは思えませんからな」


 宰相の言葉に国王は頷き、窓から見える城下町を見て目を細めた。エルナ王国の建国と共に歴史を紡いできた王都はまだ若い都市だ。それが自らの代で終焉を迎えるような事にはなって欲しくはないと考えていた。

 せめて子供たち、そして孫たちにも受け継げるようにしたいと国王は幻想に近い夢を描きながら国政をこなしていくのだった。


 自らの足元で意識を向けたエルフの遣い達が情報を集め、食料を買いあさっている事も知らずに。


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