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第十二話「エルフ・7」

 今、僕が出せる最大限の力を用いて弦を引っ張る。硬く、とてもではないが最大まで引き延ばすことが出来ないそれにあっけなく限界を迎えて指を離した。解放された矢がひょろひょろと飛んでいき、的が描かれた木の板がつるされた大木の、遥か手前でぽとりと落ちた。

 今日で5本目の挑戦だったけど力の限界を迎えて一番距離が短い結果で終わってしまった。指南してくれているエナの視線がとても痛い。


 エルフたちの部族連合が結成して早一月。ここまで大きなもめ事も起こらずに平穏に過ごす事が出来ていた。一昨日、部族連合を察知したアギト国の軍勢がやって来たけど狩人衆と呼ばれる彼らの軍事組織の奇襲で返り討ちにあったという。狩人衆は軍人というよりもその名の通り狩人のみで構成されており、弓矢を用いたゲリラ戦術を基本的な戦い方にしている。とはいえ連携も得意であり、基本的に軍隊の弓兵のような指示に合わせて矢を放つ事も出来るみたいだから完全に弓兵の上位互換的な存在だ。数は凡そ500人で平時は食料調達の為に狩りを行ってくれている。まるで屯田兵のような人たちだ。

 現在の部族連合は発足後に2つの集落が合流したことで1500人近い数に成長している。エルフの集落はまだまだ存在するため合流してくれればまだまだ拡大する事が出来るらしい。


「アルシャーン。弓は諦めた方がいい。向いていない」

「あはは、そうかな?」

「子供でも的に当てるくらいはできる」

「僕も子供なんだけどなぁ……」

「アルシャーンは別。子供じゃない」


 これまでのエルフの人たちとの生活でエルフ語を多少喋れるようになった。エナもへピロス語を今まで以上に覚えてくれているようで両方の言語を用いて円滑な会話ができるようになっていた。とはいえまだまだたどたどしい部分もあるからどちらかの言語だけで会話ができるようになるにはまだまだ先の話になりそうだ。


「アルシャーンは弓以外の事で活躍する。それだけで十分」

「いざという時は戦えるようになりたかったんだけどそれなら剣術を覚えた方がいいかな」

「その方がいい。弓は向いていない」


 エルフは基本的に生活基盤を狩りに依存している。だけどなんだかんだ言って農耕もしているようで原始的な農耕をしていた。だけどそれはゼルギル族だけの話で他の集落はそんなことをしていなかった。どうやらゼルギル族はアギト国とか国との交易をしていたらしく厘の侵略時に得た知識で農耕をしていたらしい。

 だけど収穫できる量は滅茶苦茶少ないので骨粉を肥料として使用する方法を提案してみた。これは僕がいた村でも行っていた事でこれのおかげで作物が良く育った実績がある。幸いにも骨はいっぱいあるし薪も火も十分確保できる状態だったからね。

 まだ始めたばかりだから目に見えた実績はない。それでも村の伝統農法でこれのおかげで村の作物は何時も豊作だったと言って知識の出処を誤魔化している。ちなみに育てている作物は小麦だ。小麦がこんな荒野で育つのかという疑問があるけどなんか昔テレビで見た小麦に比べて色々と違う部分があるしファンタジー世界の小麦なんだろう。

 収穫までまだかかるみたいだしそれまでに骨粉の力で少しでも豊作になってくれればいいけど……。集落の人が増えた影響で狩りだけではいずれ食料が足りなくなると思うからね。

 因みにだけどこの荒野では魔獣と呼ばれる動物とは違う獣が生息しているらしい。それらは魔力を持っているせいか肉が腐りにくくて保存食としてとても重宝しているとの事。その分強いから犠牲も覚悟で狩らないといけないという。魔獣、確か一度だけ見たことがある。矢を受けて死にかけの所を村の人たちが止めを刺した物を見せてもらった事があるけどもしかしたらゼルギル族やエルフの人たちが仕留めそこなった魔獣だったのかもしれない。


「アルシャーンは戦う力よりもそれ以外を学ぶべき」

「勿論そっちもやっているよ。お飾りでいるなんて僕には出来そうにないからね」


 ベルゴさんは僕がお飾りでいたいならそれでもいいと、王になりたいならそれはそれでいいと言っていた。なら目的があったとはいえ僕を保護して世話を焼いてくれたことへの恩を返していきたい。学べることは何でも学んで自分の力にしていきたい。

 今はベルゴさんや他の人たちにエルフ語を教わっている。何かを学ぶにしてもエルフ語を知っておかないと意味がない。ここにいるのは皆エルフでエルフ語で話すんだ。僕に合わせてもらうとなれば時間もかかるし反発も起きるだろう。ならば学ぶことの一環としてエルフ語を学んだ方がいい。

 だけどそれだけをしていても体が硬くなってしまう。だから並行して護身術のような物を覚えようとしていたんだけど……。弓の才能がなかったのは残念だ。前世で高校生の時、入学して数日のうちに弓道部を見に行ったのを思い出す。あの時は厳しそうで結局それっきりだったけどこうなるなら少しでもやっていた方が良かったかもしれないね。まぁ、そんなことを言ったら前世では天寿を全うするまで生きたんだから他にも学べることはいっぱいあっただろと言われそうだけどね。


「剣はエルフも使う。弓矢だけではどうしてもバランスが悪い」

「ならだれか教われる人とかいないかな。僕じゃ誰が誰がかまだ分からないからね」

「皆狩人衆にいるし無理だと思う」


 エナは僕のお付という事となって狩人衆には属していない。本人は少し不満そうだったけど了承してくれた。僕としてもこの集落の中だと一番仲が良いと思っているからすごく嬉しい。まぁ、他の人だと大半が話が通じないからこういう人選になるのは仕方なかったのかもしれないけど。


「? 何?」

「何でもないよ。エナと出会えてよかったと思っただけだよ」

「……よくわからないけどそう思うならもっと私を褒めろ」

「はいはい。エナは凄いよ」

「ふふん」


 今後、どうなるかは分からないけどエナとこうして触れ合う日々が少しでも続いてくれればうれしいなとは思うし、それを僕の手で作っていきたいと思う。やっぱり、そう考えている以上お飾りは早く脱却しないといけないね。


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