第212話「青いかけらのつづき」
植えこみの下の土の中から、青いかけらが見つかりました。
それは、水道の下で見つけた木のかけらのつづきのように見えます。
三人は夕方の光の中で、そっとその正体をたしかめることにしました。
あかりちゃんたちは、植えこみの下に見つかった青いかけらを、じっと見つめていました。
土の中から少しだけ出ているそのかけらは、たしかに木でできているようでした。
表面はなめらかで、うすい青色がついています。
そして、そのはしには白い線が一本、すうっとのびていました。
「やっぱり、さっきの木のかけらに似てる」
あかりちゃんが言いました。
「色もついてるしね」
はるとくんもうなずきます。
「こんどは青だ」
ゆうとくんはしゃがみこんだまま、土をよく見ていました。
「まわりを少しだけどけてみよう」
三人は、こわさないように、指先でそっと土をよけていきました。
植えこみの下の土は少ししめっていて、昼のくぼみよりやわらかく感じます。
右を少し。
左を少し。
青いかけらのまわりの土が、ゆっくりとひらいていきました。
「あっ、角が見えてきた」
はるとくんが言います。
青いかけらは、朝に見つけた茶色い木のかけらよりも、少し大きめでした。
四角に近い形ですが、片方のはしがぎざぎざに欠けています。
「そこ、ぴったり合いそうじゃない?」
あかりちゃんが、ゆうとくんの持っている木のかけらを見ました。
ゆうとくんはポケットから、朝見つけた小さな木のかけらを取り出しました。
三人はそれを青いかけらのそばに並べてみます。
「わ……」
あかりちゃんが小さく声をもらしました。
欠けた形が、ぴたりとはいきませんが、なんとなくつながりそうに見えるのです。
白い線の向きも、青い色の広がり方も、別々のものには思えません。
「つづきだ」
ゆうとくんが言いました。
「やっぱり、これ、同じ板の一部なんだ」
「じゃあ、もっとあるのかな」
はるとくんがあたりを見ます。
三人はどきどきしました。
もしそうなら、木の下の白いかけらも、水道の下の木のかけらも、この青いかけらも、みんなひとつのものの一部なのかもしれません。
そのとき、夕方の光が植えこみの葉っぱのすきまから、青いかけらに差しこみました。
すると――
白い線が、ほそくきらっと光りました。
「また!」
あかりちゃんが身をのり出します。
青いかけらの白い線は、まるで夜空を流れるひこうき雲みたいに、すうっと一本のびて見えました。
朝に見つけた木のかけらの月のような形とつなげて考えると、青い空に月が浮かんでいるみたいです。
「これ、空の絵じゃない?」
あかりちゃんが言いました。
「空?」
「うん。青いところが空で、白い線が雲とか光とか……」
はるとくんは少し考えてから、首をかしげました。
「でも、さっきの木のかけらは月っぽかったよね。だったら、夜の空かな」
「じゃあ、白い線は星?」
ゆうとくんが言います。
「でも、まっすぐだよ」
「たしかに」
三人はしばらく、青いかけらを見つめながら考えました。
答えはまだわかりません。
でも、ただの板ではなく、何かの絵の一部だということは、だんだんはっきりしてきました。
「そっと出してみようか」
ゆうとくんが言いました。
三人はうなずき、青いかけらのまわりの土をもう少しだけどけました。
そして、はしを指でつまんで、ゆっくり持ち上げます。
青いかけらは、すんなりとは抜けませんでした。
土の中に少しだけ、ひっかかっているようです。
「むりしないで」
あかりちゃんが言います。
「うん、少し下もどけよう」
はるとくんが答えました。
土をさらにそっとどけると、青いかけらはようやく、するりと持ち上がりました。
「取れた!」
三人は同時に息をつきました。
手のひらにのせてみると、それはやはり木の板の一部でした。
表は青くぬられていて、裏には土が少しついています。
そして表の白い線は、思っていたより長くのびていました。
「見て、ここ」
はるとくんが指さします。
青いかけらのすみに、小さな白い点が三つ、並んでいました。
よく見ないと気づかないくらい小さな点です。
「星みたい」
あかりちゃんが言いました。
「じゃあ、やっぱり夜空かも」
ゆうとくんが答えます。
月みたいな形。
青い空。
白い点。
それらがそろうと、さっきまでわからなかった絵が、少しだけ形を持ちはじめました。
「これ、夜の絵だ」
あかりちゃんはうれしそうに言いました。
「月があって、空があって、星がある」
「でも、まだ全部じゃない」
はるとくんが静かに言います。
「だって、木の下には白いかけらもあったし」
「うん」
ゆうとくんも板を見つめます。
「白いかけらのほうは、羽みたいな形だった。あれも、この絵のつづきなんだと思う」
三人は、青いかけらと小さな木のかけらを並べてみました。
ぴったりではないけれど、同じ絵の一部分だと思うと、なんだかひとつの物語みたいです。
そのとき、風がふいて、植えこみの葉っぱがさわさわと揺れました。
夕方の光も少しずつ弱くなっていきます。
「そろそろ帰らないと」
はるとくんが空を見ました。
「ほんとだ」
あかりちゃんが名残おしそうに言います。
「青いかけらも、持っていく?」
ゆうとくんがたずねました。
三人は少し迷いました。
でも、土の中にもどして、また見失ってしまうのはこわい気がします。
「今日は持って帰ろう」
あかりちゃんが言いました。
「なくしたくないもん」
「じゃあ、朝のかけらといっしょに、大事にしておこう」
ゆうとくんはそう言って、二つのかけらをハンカチにそっと包みました。
三人は立ち上がって、植えこみの下をもう一度見ました。
土の中には、もう見えているものはありません。
けれど、まだ見つかっていないかけらが、どこかに眠っているような気がしました。
「つぎは木の下だね」
はるとくんが言います。
「うん。あの白いかけらも見ないと」
あかりちゃんが答えました。
「全部そろったら、どんな絵になるんだろう」
ゆうとくんのその言葉に、三人は少しだけ立ち止まりました。
月と、星と、青い空。
そこに白い羽のような形が加わったら――
まだ見えないはずの絵が、あかりちゃんの心の中で、ほんの少しだけ羽ばたいた気がしました。
植えこみの下で見つかった青いかけらは、月の絵のつづきのようでした。
少しずつ集まってきたかけらは、夜の空の絵を作っているのかもしれません。
でも、木の下の白いかけらが何をあらわしているのかは、まだわかりません。




