閑話その一 リリラルカ、日本を満喫する
閑話です。
基本的に日本にやって来たリリラルカを中心に書いていきます。
本編とはほとんど関係ないお話しを書く予定なので、読まなくても問題ありません。
今、普通の女子高生である桜井琴音には悩みがある。
「つまり、宇宙の何処かに太陽と地球に似た恒星と惑星、質量や離れている距離、ハビタブルゾーンが全く一緒の条件の天体があるならばそれは地球の生物と同じ進化をするはずです。つまり地球外の文明を持つ知的生命体、宇宙人がいるとするならばそれは人間と同じ様な姿の……」
学校の先生のちょっとした宇宙人についての雑談を聞いていると家にいる二人の人間ではない居候を思い浮かべる。
一人は何故かメイド服を普段から着ているナナさん。
そしてもう一人、ゴシック調のドレスを身に纏うリリちゃん。
今の琴音の家は両親が海外に出張中なので一人暮らしを満喫していたのだが、ひょんな事から上記の二人が居候として暮らし始めた。
まあ、ナナさんはメイドさんらしく炊事洗濯など家事全般をやってくれるので助かるし、リリちゃんも可愛らしい外国のお嬢様みたいで迷惑はしていない。
でも彼女たちには普通の人間とは違い、悪魔の様な尻尾が生えていた。
何でも彼女たちは違う世界から来たサキュバスという悪魔らしい。
最初、琴音はその話を信じなかったし、嘘だと思っていた。
しかし現実は小説よりも奇なり。
ナナさんは何か空中に物を浮かせるし、リリちゃんは手から炎が出る。
琴音は二人が普通の人間では無いと認めざるを得なかった。
学校が終わり、家に帰る。
家に帰ると待ってましたとばかりにリリちゃんが出迎えてくれた。
「琴音!遊びに行くわよ!」
「えー、また?それで今日は何処に行きたいの?」
「んーとね、今日はこのメイドカフェというのに行ってみたいわ!」
そう言うとリリちゃんはスマホの画面を見せてくる。
そこに映っていたのはアニメのワンシーンで可愛らしいメイドさんたちが一生懸命に接客をしていた。
「メイドさんならナナさんがいるでしょ?」
「ナナは普通のメイドだもん。萌え萌えきゅんとかやってくれないのよ?」
それはそうだろうと琴音は思った。
ナナさんは佇まいからしてクールな女性だ。このアニメのキャラのように媚を売る言動はしないだろう。
「そんな恥ずかしい事は一流のメイドなら絶対にしません!」
玄関で騒いでいたからか、いつの間にかナナさんが顔を引き攣りながらリリちゃんの後ろに立っていた。
「えー、なんで?可愛いじゃない」
「メイドというのは主人にしか尽くしません!そんな見ず知らずの一過性の客にどうして恥ずかしい真似が出来ましょうか?」
ナナさんは顔を赤くしながらプンプンと怒っている。
こうなると説教が始まるので、琴音は仕方なく制服から私服に着替えて外に避難する。
なし崩し的にはなるがリリラルカの望み通りに琴音たちは秋葉原のメイドカフェへ行く事になった。
途中乗る電車にリリラルカは毎度の如く興奮し、不思議そうに外を眺めていた。
「何度乗ってもすごい技術ね。あんな鉄の塊が電気の力で動くなんて不思議よね」
「リリちゃんの国には電車ないの?」
「ないわよ?そんなに暮らしている人もいないし、狭いし、魔法で何とかなるから」
「出た魔法」
琴音たち地球の人間には使えない不思議な力。
リリラルカたちが人間では無く、悪魔であると断言出来る根拠。
初めて二人に出会った時に自分を悪漢から助けてもらったので、そのお礼として居候して貰ってるけど魔法を使うリリラルカたちにはいまだに驚いてしまう。
そんなこんなで琴音とリリラルカの二人はあらゆるオタクカルチャーが集まる街、秋葉原へとやってきた。
「おおー!ここにメイドカフェがあるのね!早く行きましょう!!」
「あっ!ちょっと待ってよリリちゃん!」
土地勘が無いリリラルカは取り敢えず駅から大通りへと歩き出す。
途中、様々なメイドカフェのメイドさんたちが客寄せをしていた。
「きゃー!かわいい!外国の方ですか?日本語上手ですね!」
「うん!日本と違う国からやって来たわ!」
早速メイドさんに捕まっていたリリラルカは得意げになっていた。
そんなリリラルカに追いついた琴音は息を切らしながら彼女の隣に立つ。
「遅いわよ琴音!このメイドさんがお店に案内してくれるみたいだから行くわよ!」
「それはいいけどリリちゃん。ちゃんとお金持ってるの?」
琴音がリリラルカに問いただすとリリラルカはポケットから一万円の札束を琴音に見せた。
「当然あるわよ?」
「わ!早く隠してリリちゃん!誰かに見られちゃう!」
「何もそんなに慌てなくても……」
金銭感覚がおかしいのか、お嬢様のリリラルカはお金に無頓着だった。
「というかそのお金どうしたの?まさか盗んでないよね?」
必然的に琴音の声は小声になる。
「失礼な!ちゃんと親切な人から貰ったのよ」
「そんな大金をホイホイ渡す親切な人なんていないよ!本当に大丈夫なんでしょうね?」
「大丈夫、大丈夫。知らないおじさんからご飯誘われたお礼に貰ったお金だから」
「それってパパ活ってやつなんじゃ……」
「何?パパ活って?」
「後でそのスマホで調べてみなさいよ……」
「おお、流石は琴音。かしこい」
何とも言えない会話をしているといつの間にかお店に着いたらしく、リリラルカと琴音は扉を開けて中へと入った。
「お帰りなさいませ、お嬢様方!にゃん!!」
猫耳のカチューシャを付けたメイドさんに席を案内される。
何の恥じらいも無く笑顔を四方八方に振り撒くその姿にリリラルカは賛嘆の声を上げ、琴音は慣れないメイドさんの接客に顔を赤くした。
「これがメニューですにゃん。あと、当店は普通の飲食店なのでおさわりは厳禁ですにゃ」
「ありがとう」
リリラルカはパラパラとメニューに目をやり、そそくさと注文をする。
「琴音はどうする?」
「もうリリちゃんと同じやつでいいよ……」
琴音は諦め気味にリリラルカと同じ注文をすることにした。
すると早速注文したクリームたっぷりのメロンソーダがメイドさんにより運ばれて来た。
「それでは今から魔法の言葉をかけさせていただきますにゃ。良ければ一緒にご唱和下さいにゃ〜」
「あれね?あの言葉ね?」
「はいですにゃ!」
猫耳メイドさんとリリラルカは両手でハートを作り魔法の言葉を紡ぎ出す。琴音は恥ずかしさのあまり、俯きながら小声で呟く。
「「美味しくな〜れ!萌え萌えきゅん!!」」
「……きゅん」
リリラルカは満足したのか猫耳メイドさんにありがとうと感謝の言葉を口にし、クリームソーダを頬張った。
その後、メイドさんたちと簡単なゲームをしたり、写真を撮ったりするなど一時間程遊んでから店を出た。
「楽しかったわね!琴音!」
「う、うん。恥ずかしかったけど、別世界に行った様な気がして案外楽しめたかも……」
今日の目的は果たしたので後は時間が遅くなる前に家に帰るだけだ。二人は寄り道する事なく駅に向かう。
途中、アイドルが路上でコンサートでもしているのだろうか、ポップな音楽と共に可愛らしい衣装を来た女の子のグループの歌声と聴衆の熱狂的なコールがリリラルカと琴音の耳に入った。
「あれは何?琴音?」
「あれはアイドルっていうやつね」
「アイドル?」
リリラルカは初めて聞く単語に疑問符を頭に浮かべる。
「アイドルっていうのはああやって可愛い衣装を着て歌って踊る人たちの事を言うんだよ」
「なるほど……。しかし彼女たちのファンは随分熱狂的ね」
リリラルカの関心はアイドルグループではなく、それを聞く衆人にあるようだった。
「あれほど効率的に世の中の男性の好意を集めるとは興味深い。私たちサキュバスの行き着く先の究極はアイドルなのかもしれないわね」
「リリちゃんはアイドルに興味あるの?」
「今、持ったわ」
リリラルカは手に持っているスマホでアイドルたちがいるステージの動画を録画する。
そして確信したのか、意を持って琴音に衝撃の言葉を告げた。
「決めたわ琴音!私たちはこれからアイドルを目指す!!」
「え?ちょ、ちょっとリリちゃん!?何言ってるの!?っていうか私もやるの!?!?!?」
「当たり前じゃない!!さあ、善は急げよ!琴音!!」
こうしてルーテシアの姉であるリリラルカは現地人である琴音と日本でアイドルになるための活動を始めたのである。
果たして彼女たちは立派なアイドルになる事が出来るのだろうか?
一旦ここでストックが切れたので毎日更新は今日で終わりです。
遅筆なため、第二章が始まるまでそこそこお待ち下さい。




