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041. 鎧と剣と計画

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



 昼食はいつものタリーの店で食べる事にした。今日は肉定食にしよう。セリーナとシャロンは俺の真似をして肉定食、エルナは魚定食、クレリアはもちろん肉定食大盛りだ。


「シャロン達は、鎧も必要ではないのか?」とクレリア。


「鎧、ですか? 必要でしょうか?」とシャロン。


 ああ、そういえばそうだよな。俺と同じ位のグレードの鎧を買ったとして大体三万ギニーが二着で六万ギニーだ。いや、金額は関係ない。なんか金の事を考えてばかりで、おかしくなっているな。当然、二人の安全が第一優先だ。


「そうだな。やっぱり身を守るものは必要だろう。この後、ザルクの店にいってみよう。剣を買うなら何処の店がいいか、ザルクなら知っているだろうしな」


 ボリュームたっぷりの昼食を食べ終わると早速ザルクの店に向かった。



「よう、ザルク。また来たぜ」


「おう、久しぶりだな。また仲間が増えたのか? っていうか双子か?」


「そうなんだよ。この二人の鎧を買いに来たんだ。そういえば、二人はどういう鎧がいいんだ?」


「出来るだけ動きやすいのがいいです。クレリアさん達が着ているようなのはちょっと…」とシャロン。


「私も動きを妨げないようなものがいいですね」とセリーナ。


「となるとやっぱり革鎧だな。ちょうど良いのが入荷したばかりだぜ」


 革鎧のコーナーに案内されると俺が買った鎧があった所に目新しい鎧がディスプレイされていた。俺が買った鎧に似ているが何か違っている。値札は四万ギニーとなっていた。


「これは新しく王都より入荷した鎧さ。アラン、お前が買った奴の新型だな」


「なんだよ、俺のはもう型落ちか」


「基本的な所は変わってないが、細かいところが変わっているな」


 ザルクが店員らしくセリーナとシャロンに鎧の特徴を説明している。


「ええ!? 魔道具?」


 ザルクの説明が鎧は一種の魔道具だと説明したところでシャロンが驚いていた。


「私、これにします!」とシャロン。


「私も!」


「そうか、俺もこの鎧はお勧めだ。ザルク、二着でいくらだ?」


「おお、二着か。そうだな、二割引きに、更におまけして六万二千ギニーでどうだ?」


「よし、買った」


 俺が支払おうとしているとセリーナとシャロンが自分たちの革袋から金を取り出した。大金貨だ!


「鎧の代金は自分で払います」


「大金貨じゃないか! どうしたんだ?」


 ああ、聞くまでもなかったな。


「もちろん、艦から持ってきたものです」


(いくら持ってきたんだ?)


(大金貨三十枚ずつ持ってきました。他に細かい硬貨ですね)


 合わせて大金貨六十枚、六百万ギニーか! 大金だな。あぁ、そういえば、セリーナの荷物を宿から運んだ時に、やけに重い荷物があった。金貨だったのか。


「アラン、シャロン達はパーティーの一員なのだろう? だったらパーティーの金で払うのが当然なのでは?」


「そうだな。セリーナ、シャロン。これはパーティーの一員の装備だから、パーティーの金で払うから」


「え? そうなんですか」


「じゃ、ザルク。これな」


 六万二千ギニーをザルクに支払った。


「毎度。じゃ、寸法を測るからこっちに来てくれ」


 ザルクはセリーナの体の寸法を測り始めた。寸法は十分ぐらいで測り終えた。


「次はお前さんだな」


「私の体の寸法はセリーナと全く同じなので測る必要はないですよ」


「おお、そうか。双子は便利だな」


 まぁ、寸法は同じだろうな。違っていたら驚きだ。


「ザルク、剣も買いたいんだよ。どこかお勧めの店はないか?」


「お勧めはやっぱり、ウチの系列店だな。店を出て五軒右隣の店だ。ジョーって奴がやっている店だ。アラン達は系列店じゃ有名だから、行けば値引きしてくれると思う」


 やっぱりあるのか、系列店。タルスさんは本当に手広く商売しているな。


「そうなのか? それは助かるな。じゃあ、早速行ってみるよ」


「鎧の寸法合わせ完了は三日後だな。その頃に取りにきてくれ」


「分かった。よろしく頼むよ」


 店を出て、五軒右隣の店に向かう。やはり、それほど大きくはないが小奇麗な店だった。


「いらっしゃい、何か探しているものがあるなら遠慮なく言ってくれ」


 結構若い男の店主らしき者が店に入るなり声をかけてきた。


「あんたがジョーか? 防具店のザルクに紹介されてきたアランという者だ」


「おお! アランさんか! 話は聞いてるぜ。大旦那様の恩人って人だろ? 何か買ってくれるなら値引きするぜ」


「そうか、それは助かるな。この二人の剣を買おうと思っているんだ、よろしく頼む。セリーナ、シャロン。どんな剣が欲しいんだ?」


「どんな剣と言われてもよく分かりません。アランはどんな剣を使っているんですか?」とシャロン。


 そうだよな。シャロン達は剣に触った事もないだろう。腰から剣を抜いてシャロンに差し出した。


「ほう、魔法剣じゃないか。なかなかの業物に見えるな」


 ジョーが剣を見るなりそう言ってきた? 魔法剣?


「魔法剣? ですか?」とシャロン。


「そうだな。魔力を通すことで劇的に切れ味を増すことが出来る剣だ。これほどの剣は、なかなか無いが、ウチにも幾つか置いているぜ」


 そうなのか、魔法剣ね。俺の剣は魔法剣だったのか。バースの包丁でファイナル・ブレードをやろうとしたけど出来なかったのは魔法剣じゃ無かったからということか。


「魔法剣! 見せてください!」とシャロン。


 シャロン達は魔法由来の物に興味があるようだ。ジョーが店の奥からケースに入った十本の剣を大事そうに運んできた。


「これがウチに置いてる魔法剣だ」


 そういえば、クレリアも剣を光らせていたけど、エルナが光らせているのを見たことは無いな。エルナの剣は魔法剣じゃないのだろうか?


「エルナの剣は魔法剣じゃないのか?」


「勿論、魔法剣じゃありません。私ごときが魔法剣を使うなど恐れ多いです」


「そんな事はないだろう。エルナは私を守ってくれているのだ。アラン、エルナも魔法剣を見せてもらっていい?」


「勿論だよ。パーティーの戦力向上は望むところだ」


「ちなみに、この十本の剣はみんな同じ価格で、少しづつ重さや形が違っているんだ」とジョー。


「一本、いくらなんだ?」


「一本、十二万ギニーだけど二割引きで、まとめて買ってくれるなら一本、九万五千ギニーにしよう」


 おお! 予想以上に高いな。午前中に資金調達しておいて良かった。


「アラン、パーティーのお金はそんなになかったでしょう?」とクレリア。


「そうだな。パーティーの金は残り二十一万ギニーくらいだけど、足りない分は俺が払っておこう。いずれパーティーに収入があったら返してもらえばいい」


「お金が足りないのであれば、私達の持っているお金から払います。元々、このお金は私達のお金ではありません。これはアランが持っているべきお金です」とセリーナ。


 そう言われれば、そうかもしれない。イーリスがセリーナとシャロンに持たせた金だ。帝国軍の資金といってもいいだろう。


「まぁ、金の話は後でしよう。それより早く剣を選んだらどうだ?」


 店の中には剣を素振り出来るスペースが用意されていた。セリーナ、シャロン、エルナは剣を選ぶとそこで剣を振っていた。エルナは今、使っている剣に似たものを選び、セリーナとシャロンは俺の剣に似たものを選んでいるようだ。


「私はこれにします!」とエルナ。


 魔法剣が使えると分かってからエルナはとても嬉しそうだ。選んだ剣は、やはりエルナが持っていた剣にそっくりなものだった。


 シャロンとセリーナは、俺の剣と店の剣を交互に振り、剣を取り替えながら試している。


「シャロン、私はあなたが持っている剣にする。それが一番アランの剣に近いもの」とセリーナ。


「私もそう思ったところ。勿論、私はこの剣にするわ」


「それは私が最初に試した剣よ。私に優先権がある」


「いつの間にそんなルールが出来たの? そんな事言われても譲らないわ」


 なんか喧嘩になりそうだな。


「おいおい、二人共。俺の剣に似た剣を選ぶ必要はないんだぞ。長さが丁度いいとか重さが丁度いいとかで決めるべきだ」


「でも、アラン。どれでも同じようなものです。であれば、アランが使っているものに近いものがいいです」とセリーナ。


「シャロン、賭けの権利を使うわ。その剣を渡して」


「こんな事で使っていいの? 分かった。あと二回よ」


 シャロンはセリーナに剣を渡し、話がついたようだ。なにか賭けていたらしい。これで三人共決まったな。


「よし、ジョー。この三本にする」


「アラン、私が使っていた剣はもう必要ありません。売ることは出来ないでしょうか?」とエルナ。


「ジョー、この店で買い取りとかやっているか?」


「勿論やっているよ、剣を買ってくれた客には良い値を付けるようにしている。剣を見せてもらえるか?」


 エルナがジョーに剣を渡した。


「ほう、これは魔法剣じゃない剣の中じゃ最高の部類に入るな。手入れもちゃんとしている。これなら三万ギニーで買い取ろう」


「エルナ、これでいいか?」


「もちろんです。三万ギニーの値がつくとは思いませんでした」


「じゃあ、その三万ギニーは会計とは別にしてくれ。その金はエルナのものだからな」


「そんな! 勿論、そのお金はパーティーのものです!」とエルナ。


「でも、私物を売った金だからやっぱりエルナのものじゃないか?」


「いや、アラン。パーティーのお金で新しい剣を買ったのだからパーティーの金だろう」とクレリア。


「そういうもんか? じゃ、有難くそうさせてもらおう」


 ジョーに剣の代金、二十五万五千ギニーを支払った。


「おお! この金額は店の最高記録だよ。そこの二人は剣を吊るすベルトが無いんだろう? サービスするから好きなの選んでくれ」


 そういえば、シャロンとセリーナは剣を吊るすベルトがないな。二人共ベルトのコーナーでベルトを選び始めた。


「これにします」


 ベルトを選び終わったようだ。剣を腰に吊るしている。剣の反対側にあった恐らくナイフなどを吊るす所にレーザーガンを挿していた。ポケットに入れていたものを吊るすことにしたらしい。


「ジョー、世話になったな。また何かあったら来るよ」


「剣は手入れも必要だからな。気軽にきてくれよ」


 店を出てどうするか話し合ったが、いつも通り冒険者ギルドに顔を出した後、魔法の練習に行くことにした。冒険者ギルドはすぐそこだ。


「シャロンとセリーナが腰に付けている物はアランが持っている物と同じ物なの?」とクレリア。


 ああ、クレリアにはレーザーガンを見せた事はあっても使っているところを見せたことはなかったな。


「そうだな。俺が所属していた軍の武器だよ」


「武器… やっぱり強力な武器なの? らいふるみたいに」


 パルスライフルのように自動照準機能は無いが近距離であれば威力はライフルに劣らないだろう。


「そうだな。近距離であれば魔法よりも強力かもしれない」


「そんなに!? では…」


 丁度、冒険者ギルドに入ったところで後ろから誰かに小声で話しかけられた。


「姫殿下」 声はそう言っていた。


 クレリアがびっくりして振り向くと冒険者風の格好をした五人の男達がいた。


 ◇◇◇◇◇


「姫殿下」


 声はそう言っていた。姫殿下と呼ばれたのは久しぶりだ。驚いて振り向くと懐かしい顔が見えた。


「ダルシム! ダルシムではないか! あぁ、他の皆も!」


「姫殿下、御無沙汰しております。よくぞ御無事で」


「ああ! 皆も無事でなによりだ! これはセリオ準男爵ではないか! 何故このような所に」


 セリオ準男爵は叔父上の側近中の側近で家令のような事をしていた。


「お久しぶりです、姫殿下。このように生き恥を晒しております」


「生き恥などと、そのような事はない。それを言ったら私も同じだ」


「リア、少し目立っているぞ。場所を変えたほうがいい」


 ああ、アランの言う通りだ。今日はたまたま人が少なかったから良かったが、目立つのは得策ではない。


「クレリア様。この者達は?」とダルシム。


「私の仲間達だ。大丈夫だ、信頼できる。とりあえず場所を変えよう」


「それであれば近くに宿を取ってあります。そこに行きましょう」とセリオ準男爵。


「分かった、そうしよう」



 セリオ準男爵が言っていた宿は本当に近くのようだ。ギルドから二分ぐらい歩いたところにあった。小さな宿で宿の部屋を全部貸し切っているという。


「こちらです。姫殿下」


 入った部屋は大部屋のようで、近衛の見知った顔の者達がいた。ダルシム達を合わせると全部で十五人くらいいる。皆、冒険者のような格好をしていた。


「おお! 姫殿下!」

「姫殿下だ! よくぞ御無事で!」


「皆の者、無事だったか!」


 皆、私の前に跪き頭を垂れる。あぁ、私はもうそのような事をされる立場にはないのに。


「皆、顔をあげてくれ。それよりも皆が私と別れてからどのようにしていたか聞かせて欲しい」


 代表してダルシムが話し始めた。セシリオ王国に空の馬車で向かった事、追手と思われる冒険者達との戦い、あてもなくセシリオ王国の町を私を探して周った事など、随分と苦労を掛けたようだ。


「冒険者ギルドで、あのワイバーンの依頼を見つけた時は天にも登る気分でした。ノリアン卿、あれは君が考えたんだろう?」


「あの符号はそうです、ダルシム隊長。依頼の内容はクレリア様とこちらのアランと一緒に考えました」とエルナ。


「あの、クレリア様。そちらの方々は?」


「この人達は私の仲間達だ。冒険者のパーティーを組んでいる。それでは私が皆と別れてからの事を話そう」


 アンテス近衛騎士団長とベルタ王国へと旅をしていた時に、三十頭以上のグレイハウンドに襲われた事、私以外の者は全て亡くなった事、その際にアランに助けられた事、深手を負い療養していた事、この街に来てエルナに会った事、エルナの班の事などを話した。


「クレリア様、お怪我のほうは?」


「もうなんともない。以前より元気なくらいだ」


 本当に最近は体の調子がいい。以前はよく風邪を引いていたのに最近はなんともない。これも精霊の加護のおかげだろう。


「アラン殿、クレリア様が大変お世話になりました」とダルシム。


「いえ、当然の事をしたまでですから、お気になさらずに」とアラン。


「して、セリオ準男爵はどうしてここに?」


「クレリア様も我が主、ルドヴィーク辺境伯の事は御聞き及びでしょう? 辺境伯様は、いよいよ敗色が濃厚となった時に一部の精鋭達と共に私を城より逃しました。クレリア様の王国再建のお手伝いをしろとの命です」とセリオ準男爵。


「あぁ… 叔父上が。その一部の精鋭達というのは?」


「辺境伯軍の精鋭二千名になります。いまは野に散っていますが、クレリア様がひと度、号令をかければ姫殿下の怨敵を討ち滅ぼす死兵となりましょう」


あぁ… なんてこと。二千名もの人達が… 皆をこの街に呼び寄せたのは、このような事を終わりにして故郷に帰ってもらうはずだったのに。


「その、王国再建の方法は?」


「それは私には分かりません。クレリア様が先程話されたこの国、ベルタ王国の対応を考えると、この国の助力も当てにならないでしょう。しかし我らは成し遂げねばなりません。王国再建とルドヴィーク家の再興を」


 そうは言っても、たった二千名の兵だけで国が取り返せる訳もない。これ以上、皆が犠牲にならないように一刻も早くこのような事を終わらせる必要がある。


「…… 皆の者、よく聞いてくれ。私が皆をこの街に呼び寄せたのは…」


「クレリア、その先は俺に言わせてくれ」とアラン。


 ええ!? どうしてアランが? 皆の事はアランには関係ないのに。


「みんな、よく聞いてくれ。


 正直、冒険者ギルドに出した依頼の事は、俺達もクレリア達も全然当てにしていなかった。


 今でもクレリアに従っている人達がいるかどうかも判らなかったし、まして二千名もの人達がいるなんて判らなかったからな。


 しかし、クレリアは諦めていなかった。たった一人でも王国を再興しようと日々努力していた」


「おおっ! さすがクレリア様」

「それでこそ、クレリア様だ!」


「俺達とクレリアは具体的にどういった形で国を再興するかという話をしていたが、それは絵空事で実体を伴っていなかった。


 今日、みんなと合流する事が出来てようやく実のある計画とする事が出来そうだ。


 今はまだ具体的な事は話せないが、今日一日、話を詰めて明日には具体的な計画を話せると思う。もう少しだけ俺達に時間をくれないだろうか?」


「アラン殿、お話はよくわかりました。しかし、いくら恩人とはいえ姫殿下を呼び捨てにするのだけは納得出来ません」とダルシム。


「これはすまなかった。すっかり冒険者の仲間として呼んでしまっていた。今後はクレリア様と呼ぼう」


「アラン、一体何を?」


「クレリア様、後で計画を詰めましょう」とアラン。


 いったいアランはどういうつもりなの? アランと王国再建の計画など話したことはないし、私にそのつもりもないのに。全く訳が分からないが、一つだけ訂正しなければならない。アランにクレリア様なんて呼ばれるのだけは許せない。


「皆の者、一つだけ訂正しておこう。信じられないかもしれないが、アラン達はこの大陸の出身ではない。そして、アランは国に帰れば閣下と呼ばれる身分だ。それ故、アランは私の事をクレリア様などと呼ぶ必要はない」


「そうでしたか、失礼しました。閣下」とダルシム。


「いや、別に構わないよ」


 アランの今の話で、皆は希望を取り戻したようだ。先程までとは雰囲気が全然違う。口々にアランが話した計画についてあれこれと話している。あぁ、この計画とやらが嘘と分かったら落胆するに違いない。いったいアランは何を考えているの?


 この後、生き残った者達の詳細を聞いた。なんと近衛は六班、五十八名の者が生き残っていた。この場に来ているのは、班の代表者達だけのようだ。私の生存は確定ではなかったため、大部分の者はセシリオ王国で冒険者として身を隠しているらしい。


 セリオ準男爵にも話を聞いた。準男爵と共に逃れたのは全部で二千五十一名。辺境伯家に仕えてきた譜代の者達だ。今はアロイス王国とセシリオ王国の農村などに散って身を隠しているらしい。定期的に連絡を取る手筈になっているとのことだった。


 ああ、アランの話が気になって少しも話に身が入らない。ここらで切り上げて宿でアランを問い詰めるとしよう。


「皆の者、積もる話もあるが先程アランが話した件を詰めなくてはならない。私は一度宿に戻ろうと思う」


「では、我ら近衛もお供します」とダルシム。


「いや、それには及ばない。護衛はアラン達がいれば十分だ。泊まっている宿もそれほど広くはない」


「それでは我ら近衛がアラン殿達に替わり、その宿に泊まることにしましょう。いくらアラン殿といえども警護に関しては近衛騎士には敵わないでしょう」


「いえ、ダルシム隊長。剣の腕に関しても、魔法の技にしても、近衛騎士ではアランには勝てないでしょう」とエルナ。


 確かにそうかもしれないが、ここで言うことではないような気がする。


「なんと! それは本当か? ノリアン卿」


「本当です。この場に居る者、全員で一斉に襲いかかってもアランは倒せません」


「そんな馬鹿な! 隊長格の近衛騎士が十四人もいるのだぞ」


「エルナの言っている事は本当だ。それほどまでにアランは強い。だが、それも不思議ではない。アランは女神ルミナスに愛された者なのだから」


「なんと! それは(まこと)ですか!? 姫殿下」とセリオ準男爵。


「本当だとも。私は女神に愛された者でなければ、成し得ないであろう数々の奇跡をこの目で見てきた。おいそれと話すことは出来ないが証拠もある」


「おおっ! アラン殿! お願いがございます! この年老いた(わたくし)めにも、女神に愛された者の一端を垣間見せて頂けないでしょうか? 決して興味本位ではありませぬ。今後の行末を占う上で私にはとても重要なことなのです!」


「えーと、どのようにすれば良いので?」とアラン。


「では、先程私が言ったように近衛全員でアランに襲いかかるというのはどうでしょう? 私が本当の事を言っている事がわかり、私が嘘つきにならなくて済みます」


「おお! それであればアラン殿の実力もわかりますし、一石二鳥ですな」


「エルナ、後で覚えてろよ」


 最近、分かった事だが冒険者ギルドの試験を行う建物は、使用していない時であれば一時間百ギニーで借りることができる。わざわざ街の外に行くのも手間なのでそこを借りることにして、ギルドに全員で行くことになった。




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