表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

あらま、髪型ですか?

 どうしましょう。


 今、エレンさん行きつけの美容室前に居ます。そして、私はリムジンから降りれないでいました。


「ぴよちゃーん、もう早く降りなさい!」

「わわわわわわ!私こういうところ初めてですのよ!!心の準備を!心の準備を!」


 そう、私は美容室初めてだったのです。いつもは、自宅にあるヘアセット用の部屋にお抱えの美容師さんを呼んで切って貰っていたので、このように家族以外の目があるところで髪を切ることは今までありませんでした。


「社交界の方が肝を潰されるでござるぞ」


 慣れてしまえばどんなものも、怖くはなくなりますけども!これとそれとは話が別なのですよ!!


 蹲る私にふわりと温もりが頭に触れた。


「ぴよ、大丈夫。ここ、友達同士で来てもいいところだからさ。なっ?」

「凛々子ちゃん」


「ほら、ぴよの好きな海外ドラマ…あーと…なんだっけか、エレン」

「もう!!『Manicure or Lipstick』よ!!たしかに主人公達が皆でヘアサロンでカットしながら話してるの、憧れるってぴよちゃん言ってたわよね」


「え、ええ、言ってましたわ…」


「憧れ、体験できるんだぞ?もう自由なんだからな」


 そっか、そうね。自由になったんだわ。やはり、今まで禁止されてきたことに挑戦するのは難しいんですわね。美容室だって、行きたかった。けれど、家族に見つかったら、私を知る誰かに見つかったら、今までの立場だと婚約…会社の契約へ悪い影響が出てしまう。そしたら、迷惑するのは社員なわけで……


 だから、人目につく行動は出来なかった。白川の婚約者である限り、家名を傷つける行為は許されなかったのです。


 実際に庶民的な行動をした令嬢が、パパラッチに撮られた際、周りからは馬鹿にされ、貶されるという光景を何度も見てきた。

 特に私は白川の看板まで背負わせられていたのだ。自転車登校も健康の為に良いと聞いてと、言い張って出来たことだった。


 けど、もう私は自由なのだ。


「駄々をこねて申し訳ありません。向かいましょう」


 やっとのことで、リムジンから降りた。


 美容室は草花に囲まれ、愛犬であるビーグルのポムくんが迎えてくれるお洒落なお店でした。店長さんとその奥様、あと二人のスタッフが店内で迎えてくれた。


「あらあら、エレンちゃん!勇気くんは今日お休みよ?」

「Siii!かなちゃん!今日は私の友達の高校デビュー改造企画なの!!」


 ふんわりと微笑む奥様は、テキパキと凛々子ちゃんと私を席へと案内し、お茶を出して下さった。初めて、麦茶を飲んでみたが、これはこれはとても美味しいものだった。


 凛々子ちゃんの担当は、体つきの良く剃り込み?を入れた店長で、私についてくれたのは霧島さんという女性の方だった。


「よろしくお願いいたしますわ…」

「よろしくねー!あ、化粧もやるから先に落とそうか!シートでいい?

しっかし、随分ランダム巻きになってるね、あああ、ここ焦げてる!もしかして、MAXの温度でやったのー!?」


 霧島さんは、顔を化粧落としシートで拭き取ってる私の髪を確認する。MAXの温度とかはわかりませんが、とりあえず一番上のランプに調整したような気がします。


「やったことない髪型にするー?お姫さまカットとか飽きたんじゃないー?

そだなー、ああ雑誌見て選ぼー

あっ、でも染めない方いいよ。折角の綺麗なバージン毛だしー世界は黒髪ブームだし」


「は、はい!」


 4冊くらいバババッと並べられて、だされた一冊一冊読んでみる。うーん、巻き髪をしてみたいですねぇ。けど、私に毎朝出来そうにないですし…思えば、美容師さんの前で髪型を選ぶというのも初めてでしたわね。

 真剣に選んではいるのですが、あまりの情報の多さに頭が混乱しますわね…ああ!どれがいいの!


「あーもう、いいや!今までしたことない長さは?!」

「み、短いのです!」

「前髪は流すのパッツンがいいの?!」

「で、出来ればこう、横に…」

「ああ、パッツンはいやなのね。パーマかけてもいいの?!」

「ご!ご自由に!」


「よし!じゃあ、これと、これと、これから選べ!」


 指された3つ髪型を目で追う。その時、3つ目の横の髪型に目が止まる。あっ、この髪型は、私の好きな白線デイズのユリエみたいですわ。


「こ、この髪型はダメですか??」

「あ、あーウェーブ系のボブで前髪は大人目に流す感じねー了解」


「ありがとうございます!!」


 そんなやり取りをしている私たちを、凛々子ちゃん達は微笑ましく見ていた。そして、髪を洗い、私の髪にハサミが入れられた。


二時間後

「ふわあああああああ、ユリエが!ユリエがここにいますわ!」


「いえ、それはピヨ氏でござる。どうやら、ピヨ氏は混乱してるようですな兄者」


「誰が兄者だ。流石、霧島さんは腕だけは確かだね。ぴよ、とても似合ってる。更に可愛くなったね」


「ありがとうございます!照れてしまいますわ。あの凛々子ちゃんも……?どの辺りが…?」


 一緒に切って貰っていたハズなのに、前髪が少し短くなったくらいで、見た目にはそこまで変化がない。けれど、それにしては長かったような気も。


「ああ、ピヨは緊張して前と雑誌しか見てなかったようだしね、気づかないか」

「も!もう!」


 凛々子ちゃんは、さらりとサイドの髪を掻き上げる。そこには蜥蜴の絵が描かれていた。


「剃り上げしてもらってたんだ。一度してみたかったし」


「かっこいいですわ!」


「あははは、ありがとう。知ってる」


 あまりにも爽やかな凛々子ちゃんの微笑みは胸キュンさせるものがありますわね。流石、女学園の「メタルの王子様」ですわ。 


「私も今度剃り上げして…「それはダーメ」


 そのあと、支払いを済ませると、次の目的地へとリムジンで向かう。思えば、この運転手さんお仕事は大丈夫なのでしょうか??








 これは、アタシが女学園の幼稚舎にいたころの話。

 ここの幼稚舎には、バラ組、ツバキ組、サクラ組、たんぽぽ組とあり、私は地元民の枠組みで入ったのでサクラ組だった。


 バラとツバキはお金持ち、サクラ組は地元民、たんぽぽ組は試験で受かった子達で形成されていた。普通なら差別問題になりそうだが、ママ友問題を防ぐためでもあるし、やはりあまりにも住む世界の落差が激しいので仕方ない部分もあった。

 実際に、ごちゃ混ぜにした時は様々な問題が起きて、すぐにクラスの編成を元に戻したくらいであった。


「あーちゃん!きょう、なにするのー?」

「きょうはおにごっこー!」

「わーい!じゃあ、じゃんけん」

「じゃんけんぽん!!」

「うーちゃんずるいー!」


 だからといって、子どもたちはあまり関係なく遊んでいたけれど。しかし、突然誰かがいなくなったり、遊べなくなったり、それは日常茶飯事だったが。


「あれ、ひーちゃんはー?」

「おそいねー!どこにいるんだろー」

「せんせ!ひーちゃんしってるー?」

「え、あっ、あのね、バラ組はお勉強があるからお外では遊べないのよー」

「せんせー、いつあそべるのー?」

「今度…かな」


 今日、泥団子作る約束をしていたのに。本当に、前触れもなく、突然だった。いつも一緒に遊んでいたひーちゃんと遊ぶことは一切出来なくなった。寧ろ話す機会さえほぼなかった。けれど、他にもそんな子はいたので、あまり気にしてはいなかった。


「あれ、ひーちゃんだ!」

「ほんとだー!ひーちゃん!」


 それに、ひーちゃんは毎日同じピアノの部屋にいて、時々こちらを伺ってる姿は見かけられた。アタシたちが大声で叫べば、大きく手を振ってくれた。ただ、すぐさま先生に注意されて

、ピアノに視線を戻してしまうが。


 それでも、最初は嬉しかった。


 けど、日に日にひーちゃんの元気はなくなっていく、手の振り方も小さくなり、笑顔もぎこちなくなり、そしてすぐに俯く。


 そして、遂にこちらを見て、泣き出してしまった。先生は慌てた様子でカーテンを閉めてしまい、そのカーテンが開かれてるところを一度も見ることはなかった。


 私はその後地元の市立小学校に通い、中学の頃地元密着型特待の形で戻ってくることになった。

 そして、また、彼女に出会った。



「ごきげんよう。四宮雛恵と申します。以後お見知りおきを」

「ご、ごきげんよう。緒形 亮で、です」


 隣の席には、まさに完璧なお嬢様がいた。黒髪ストレートのお姫様カットの少しキツ目のお姫様。もし、アニメとかゲームで例えるならば、まさに悪役ポジションか噛ませ犬だ。

 そんな彼女に話しかけられたアタシ、コミュ障、オタク、デブスでござるニンニン。

 蛇に睨まれた蛙の気分体感中。てか、何故アタシから目を離さないのですか、この人。怖いんすけども。


 だが、ここに、救世主現る。


「ああ、ぴよ、緊張しない。ごめん、この子緊張してんだ。私は朝倉凛々子、よろしく」


 ありがとう……って、イケメンだああああああ!!!

 って、この、怖い人、あれ、見るからに落ち込んでる?涙目で可愛い…って、なに考えてるんだアタシ。


「ご、ごめんなさい……怖がらせてしまいましたのね……ああ、私は、私は何故失敗ばかりしてしまうのかしら……キツく見えるこの顔を捨ててしまいたい……」


「あああああ、もう。なんで、中学に入った途端そんなブルーなんだよ…!ごめん、許してやって?」


「ははははは、はい!だ、大丈夫です!」


 寧ろ、許さなかったらこの先が怖いと思いました。(家柄的に)


 まあ、そんなことを、感じてた時代もアタシにはありました。っと。

 美容室に怯え、新しい髪型にははしゃぎ倒しているこのお嬢様を、悪役ポジションとか、噛ませ犬とか思った過去の自分を殴り倒して道路にほっぽってやりたい。


 まだ、彼女には言ってないけど、彼女がひーちゃんであることは知っている。伝えないのは、まだ彼女のあのときの泣き顔が頭から離れないのだ。


 ……アタシは、貴方の元婚約者達のこと、勝手に大嫌いと思ってるよ。

 子供時代を、今までを台無しにしてきた分、精々不幸せになりやがれ、糞野郎。


「さあて、と」


 そんなことよりも、ピヨ氏をイメチェンのが大事でござるな。

 スマートフォン片手にお店を検索せねば。




不安定さを表してみました。

私も最初一人で美容室行ったときはドキドキが止まりませんでした。よく行くところだったのに(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ