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第9話 紫鏡

推しはリリーです。

「ねぇ、しってる?」

 白髪の少女はいつも通り語り始める。

 火の付いた蝋燭の前で語り始める。


「ある言葉を20歳まで覚えていると、不幸なことが起こるらしいよ………その言葉はね。」

 細い指で空をなぞるように動かし、少女は口元だけで笑う。


 20歳まで覚えていると不幸になる、もしくは亡くなってしまう。


 そんな不吉な噂は長い何月が経ち現代でも語り継がれている。


 ───「ムラサキカガミ」


 彼女は口角を上げる。

「でもね、いろいろ対処法があるらしいよ。

 みんなは気をつけてね。こんな言葉、思い出しちゃダメだよ。最悪の場合………ね?」


 少女は声を低くしてそう言った。


 ――――――――――――――――――――――


 ─とある中学校である言葉が大流行。─


 それから数年後、不可解な事故が相次ぐ。

 何かの呪いか──


 A県のとある中学校で“紫鏡”という言葉が一時期大流行した。

 20まで覚えていたら不幸になる、最悪の場合は死亡する、という噂が生徒達の間で囁かれていた。


 時がすぎ数年後の成人式で。

 会場には地元のメディアも取材に訪れていた。

 その式で、出席者の一人がふと”紫鏡”と口にした瞬間。

 会場の照明が連鎖的にチカチカと点滅し、複数の電球が破裂。

 幸い負傷者はいなかったものの、騒然となった式場の様子は報道でも取り上げられた。


 その後も参加者の身近で、不可解な怪我や事故がいくつか報告され、地元メディアは「紫鏡の呪い」と呼ばれるようになった。


 ―――


「ということが起こったのです!」

 今泉は、勢いよくタブレットを掲げ、記事画面を

 リリーと紬、景太へ向けて突きつける。


「それで?」

 リリーが呆れたように眉を寄せる。


「私、今二十歳なんです。」


 その場に、同じ思考が同じ速度で流れた。


(((めっちゃバカじゃん。コイツ……)))


「そうですね、私としましては紫鏡というのが本当なのか。

 それを調べようと思いまして……」


 今泉は気にする様子もなく、淡々と話し続けた。

 説明する内容は、ある少女の悲しい話だった。


 病室。

 両親からもらった大切な手鏡。

 長年使い込まれ、ボロボロになった鏡は、見舞いに来た友達から笑われてしまう。

 少女は惨めさに耐えきれず、傍に置かれていた紫色のクレヨンで鏡を塗りつぶしてしまったという。


 その後、病状が悪化した彼女は、最期の瞬間まで、後悔のように弱々しく繰り返したという。

「ムラサキノカガミ……ムラサキカガミ……」



「という話がおそらくその時代大流行したのでしょうね。

 1990年代なんて、怪異やオカルトの黄金期ですから。

 私が生きている以上。紫鏡は迷信に過ぎない。

 少し残念ですが、そういう事です。」

 今泉はそう締め括った。


 どこか当てが外れたように今泉は小さくため息をついた。


 それを見たリリーは肩をすくめながら言う。


「今泉レベルになるとさ、どうせ紫鏡の対処法も知ってるんだろ?」


「対処法?」

 景太が聞き返す。


「白い水晶。他にも白い鏡とか。色々あるよね。

 それを無自覚に覚えていた。それで紫鏡の効果も薄まったんじゃないかな?

 まぁ、聞いたところその話は彼女にとっての後悔であって、恨みじゃない。

 紫鏡は迷信に過ぎないと思うよ。そういうのが流行ることはよくあるからさ。危害は出ない。」


 リリーの優しく柔らかい声に、今泉も安堵したように微笑む。


 除霊という除霊ではないのかもしれないが、ある意味紫鏡に対しての執着を今泉から取り除いた。

 ある意味少し違った形だが、これも除霊なのかもしれない。


「そうですね。」

 今泉はそう言って微笑む。

 紫鏡の件はひとまずこれで落ち着いた。


「じゃあ、本題だ。」


 リリーはすぐに表情を引き締める。


 視線の先には紬と化けぎつねがいた。


「うん。私の家神社なんだけどね。

 昔から伝えられていた伝承があって。ある巫女の話。」


 紬が語り始め、すぐに化けぎつねが続く。


「その話で聞いた通りの現場だった。

 それに、残穢の強さ。十中八九そうだろうな。」


 紬の神社。というか巫女として昔から伝えられてきた話がある。

 それが、協会直属の依頼へと繋がる重要な話だった。


 数分前。

 ヤマノケを除霊し、紬達が帰ってきた時。

 化けぎつねは、険しい顔でリリーへ報告してきた。


「異常な霊力。

 多分、準S級だ。仕事終わりの巫女である紬と一緒に見て来たが、おそらくアイツで確定だな。

 封印が弱まってる。」

「なんの話です?」


 すぐに食いついたのは、今泉だった。

 身を乗り出しそう食いついた瞬間、


 リリーのデスクにある電話が鳴る。


「はい?」

【リリーちゃん?】


 リリーはすぐに悟った。

 この受話器から響く冷ややかな声に、いつ背後を取られてもおかしくない。

 その異様な雰囲気に、リリーは少し緊張が走る。


 九条 玲華(くじょうれいか)

 怪異的現象特別協会のトップ。

 協会内でリリーがエルフなことを知っておきながら容認している。不明な点が多い女性。


「なん……ですか?」


 わずかに震えた声で返すリリーへ、玲華は淡々と告げる。


【リリーちゃんの付近で準S級怪異の“姦姦蛇螺(かんかんだら)“の残穢が確認されたの。

 討伐を依頼したい。S級のあの一件や助手に関することがあったけど、引き受けてくれる?】


「はい…………わかりました。」


【ありがとう。今度またお茶しようね。】


 通話が切れると同時に空気が重たく沈み込んだ。

 それが数分前の出来事。


「姦姦蛇螺?」

 景太の声が震える。


「かなり前から居るんだけど中々除霊が完了してない怪異。昔封印に成功して、今封印の力が弱まってきて各地でその残穢が暴れて、野生動物とかが襲われてる。

 かなり強い。S級に匹敵するクラスで準S級に認定されてる。

 おそらく怪域もあるだろうね。」


 リリーがそう説明をしてくれた。


「私たちも近くの山で鹿が無惨に倒れてるのを神社の仕事の帰り確認した。」

「なるべく早く行きたかったのと話を聞きたかったので強引に私が連れ出してしまった。」

 化けぎつねがそう言って紬に頭を下げる。


 今回の依頼。

 こちらで少し調査していた時にかかって来た九条からの電話。

 あまりにもタイマングがジャストすぎる。

 どこかでまるで見ていたかのように。


 リリーは他のみんなを行かせたくないのだろう。


「でも、そんなに強大ならよう?

 なんで俺たちがだけが行くんだ?近くに残穢があったとしてそれは各地だろ?他にも霊能力者がいるだろ?」


 雷獣がそう言って、目を細める。


「確かにそれもそうですね。」


 今泉はそう言って相槌を打つ。


「リリーはS級怪異を2ヶ月前に撃破してる。それの信頼性だろうな。それと……唯一の安倍晴明の弓と矢。

 そして、九条玲華とかいう協会トップのお気に入り。あの魔女のな……それと、多分もう一つ。」


 化けぎつねは嫌味をつくようにそういって顔を顰めると共に、何か心当たりがあるようにそう呟く。


「いいんだ。

 それより、今回は……」


 リリーがそう言おうとしたその瞬間、察したように

 景太はリリーの肩を叩いた。


「勿論行く。」

「私も行くよ!」


 景太と紬はリリーと一緒に行く気満々である。

 今泉と化けぎつね、雷獣もまた同意見なようだ。


「でも……」

「大丈夫だ。今度は誰も死なせない。探すんだろ?」


 化けぎつねは、リリーの言葉を遮るようにいって微笑む。


 それを見て、リリーは小さく頷く。

 そうして、協会直属の依頼をリリー達は正式に受けるのだった。


 ――――――――――――――――――――――


 9本目の蝋燭の火をフッと吹いて消す。

 そして少女は、またしても口を開いた。


「さてと、いよいよ最初の準S級怪異だね。期待大。」


 少女は姿勢を整え、口角を上げる。


「じゃあ、次はとびきりの話をしようか……」 


 そう言って少女はいつもよりも少し声を高くして語り始めた。


 ──────────────────────


 怪異名:紫鏡(ムラサキカガミ)

 怪異階級:D級


 攻撃力:E

 スピード:E

 知能: E

 防御力: D

 噂レベル:D


 怪域:なし。

 種別:呪詛型怪異


 リリーメモ:忘れろや

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