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魔王の花嫁  作者: yaasan


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管理する者とされる者

「……それは魔人と天使が敵対していると人族や魔族に思わせたいということでしょうか?」


 アストリアがそう言うと魔人は頷いた。その額には玉のような脂汗が浮かんでいる。


「予想を超えて魔族や人族はその数を増やしすぎたのだ。結果、それらを適切に管理するためには、魔族と人族を互いに争わせた方がいいということだ」


 魔人の言葉にエネギオスが顔を顰めてみせた。


「おい、おい、管理とは随分と上から目線だな。俺たちが増えようが減ろうが、お前たち魔人や天使には関係がない。それこそ、俺たちの勝手だろうに」

「仕方がないだろう。俺たち魔人も天使にしても、お前たち魔族や人族を管理するために作られた存在だ」

「……ほう、魔神と神にですか?」


 ヴァンエディオが興味深げに言う。


「……その通りだ。もっとも、魔神と神は同じ存在なのだがな」


 諦め切ったのだろうか。魔人は抵抗もなく話し始めて、更に言葉を続けた。


「魔神と神を別の存在としているのも、お前らを管理しやすくするためだ。その方が互いに争わせる時には都合がいい」

「ふむ……」


 ヴァンエディオはそう呟いて考える素振りを見せた後、再び口を開いた。


「では、アストリア様が鍵や器とはどう言う意味なのでしょうか? かつて邪神を封じた一族の血を引くとも聞いていますが」

「鍵? 器? そこにいる人族の娘のことか?」


 魔人はアストリアに視線を向けた。


「器という意味ではお前たち魔族や人族全てがそれに当てはまる。後はもっともらしい意味を持たせるための後付けでしかない話だ。もっともらしいだけで、そこに意味などはない。」

「……なるほど。では、その器には一体、何が入るのでしょうか?」

「……魔神、もしくは神だ」


 魔人が低い声でそう言い放った。


「おい、適当なことを言うなよ。どうやって魔神や神がアストリアの中に入るんだ!」


 クアトロが思わずそう叫んだ。


「それは我らのあずかり知らぬことだ。魔神や神のお考えなどは我らでも分からないさ」

「ふむ……では、そもそも魔神や神とは何者なのでしょうか?」


 ヴァンエディオの言葉に魔人は軽く首を捻った。


「詳しくは俺も知らん。俺自身、会ったこともないしな。ただ、かつてはこの地上の支配者だったと聞いている」

「会ったことがない……ですか? 魔人や神にあなた方は作られたというのに。では、魔神や神はどこにいるのですか?」

「さあな。復活の時を待って眠っているとのことだ。だが近々、神の一人が復活されると聞いている」

「なるほど。それであなたがたは急ぎ器が必要となったと……」


 何がなるほどなのかとクアトロは思ったが、ヴァンエディオは納得したように頷いている。


「まあ、小さな疑問点はいくつかあるが、大体の筋は通ってるな。ただ、何でろりろり姫がそれに選ばれたのかが分からんな」


 エネギオスが大筋は理解したといった感じで頷いていた。筋肉ごりらのくせに生意気だと思いながら、クアトロはマルネロに視線を向けた。


「マルネロ、分かったか?」

「はあ? 神が復活するから、そのためにアストリアの体を欲しがっているってことでしょう?」

「……そのまんまだな」

「はあ? 文句があるわけ?」


 魔力が底をついて青い顔をしているというのに、マルネロはもう喧嘩腰になっていた。何かにつけて元気な女だとクアトロは思う。


「マルネロさん、落ち着いて下さい」


 横で支えているアストリアが怒り始めたマルネロを見兼ねてそんな言葉をかけていた。


「何だかよく分からないが、その復活する神とやらをどうにかすればいいんだろう。おい魔人、その復活する神はどこにいる?」


 クアトロがそう言うと魔人は気丈にも笑い声を上げてみせた。


「はあ? お前らの王は馬鹿なのか。お前ら魔族如きが神や魔神をどうにかできるなどと……」

「調子に乗らないで頂きたいですね。我らの王が尋ねているのですよ?」


 ヴァンエディオの赤い瞳が危険な色を帯びて細まった。途端に捕らえられている魔人の瞳に気弱なものが浮かび上がってくる。既にヴァンエディオの怖さを十分に熟知しているのだろう。

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