訊けばいいんじゃない?
天上に向かったというスタシアナたちは無事だろうかとクアトロは思っていた。
スタシアナも、エリンにしても元々は天使だったとはいえ、今は彼らと相反する立場にいる。それが知られて捕らえられでもすれば、無事では済まないのではないだろうか。
ましてやスタシアナは天上へ向かう前に、数名の天使を魔法で消し去ってしまったと聞いている。そのことだけでも、スタシアナが捕まれば無事に済むとは考えられなかった。
「スタシアナさんたちなら、きっと大丈夫です。トルネオさんも一緒だと聞いていますから」
クアトロの思いを知ってか、アストリアがクアトロにそう言った。
そうは言っても、あの面白おっさん骸骨が役に立つとは思えなかった。それに、そもそもの話として、天使と不死者は何かと相性が悪いはずなのだ。
しかし、そう心配ばかりしていても何かが好転するわけでもない。クアトロはその考えを頭から振り払った。そして、ヴァンエディオに赤色の瞳を向ける。
「で、ヴァンエディオ、これからどうするつもりだ?」
「そうですね。おそらく主だった天使や魔人は、この神殿に集まってくるでしょう……」
「どういうことだ?」
理由が分からず、クアトロはヴァンエディオに尋ねなおす。
「ここは以前にアストリア様が捕らえられていた神殿です。ならば、この神殿でアストリア様を捕らえる必要があった。そう考えられるのではないでしょうか?」
そう言われれば、確かにその可能性はあった。
「その理屈は分からないでもないが……で、ここにやって来た天使や魔人をどうするつもりだ?」
エネギオスが口を挟んできた。
「偉そうに威張っている奴を捕まえて、何でアストリアを必要としているのか訊けばいいんじゃない?」
マルネロが、ふふんといった感じで言う。細い顎も得意げに少し上を向いている。
「どうやって捕まえるんだ? 捕まえるとなれば、マルネロみたいに何でもかんでも燃やすわけにはいかないんだぞ」
マルネロの無計画ぶりにクアトロがそう反論する。
「はあ? 何でそこに私の名前が出てくるのよ? そんなの私たちがいれば、何とかなるわよ」
まあ、何とかなるとはクアトロも思う。だが、やはりそれでは余りに無計画過ぎるのではないだろうか。クアトロはそう感じながら、ヴァンエディオに視線を向けた。
「天使や魔人は、我々がここにいることを知らないかと思います。ならば、先の戦場に現れたような大軍がこの神殿に集まることはないかと」
「それはそうかもしれないが、相手は天使と魔人だ。例え数人でも厄介だぞ?」
エネギオスが溜息混じりで言う。
「厄介なだけで私たちが敵わないわけじゃないでしょう? それこそ、エネギオスが頑張るところじゃない? 四将の筆頭なんだしね」
マルネロの言葉にエネギオスがさらに溜息を吐き出しながら口を開いた。
「十や二十なら問題ないかもしれないが、それ以上となると、余裕でといったわけにはいかなくなるぞ」
渋い顔をしながらエネギオスが言う。
天使や魔人と言えば上位眷属なのだ。いくら個人差があるとは言っても、基本的な能力は魔族や人族よりも遥かに高いはずだ。なので、エネギオスが渋い顔になるのも無理はなかった。
「エネギオスさん、そう心配しなくても大丈夫ですよ」
いつも慎重なはずのヴァンエディオが、珍しく楽観的なことを言い始めた。
「四将のうち、三人がここにいます。そして魔族の王であるクアトロ様も。さらに古代種の竜までいますからね。仮に魔人や天使の百や二百が集まったとしても、問題ではないですね」
ヴァンエディオが言うのであれば、そんなものなのだろうかとも思う。
だが……。
「なあ、アストリア。この古代種の竜、俺たちと戦ってくれるのか?」
「い、いえ、訊いてみないと……ですが、どうなの……でしょうね……?」
アストリアが半分困ったような顔で言う。
いずれにしても、天使か魔人の偉そうな奴を捕まえれば、なぜ彼らがアストリアを欲しているのかも分かるだろう。理由が分かれば対処できることも増えるはずだった。
となれば、今は情報を……。
そう考えるクアトロだった。




