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魔王の花嫁  作者: yaasan


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53/106

どこの世界の住人だよ

「後でアストリア殿も交えて、少しだけ話がしたい。よいか、クアトロ?」


 皆もいるのだし危険はないだろうと、クアトロはそれに黙って頷いた。そんなクアトロからエネギオスへとバスガル候は視線を移した。


「エネギオス、剣の腕が上達したか見極めてやる。ついてこい。わしの息子は母親に似たのか魔導師なんぞになりおったので、日々退屈していたところだ」


 それを聞いてエネギオスが露骨に嫌そうな顔をする。しかし、そんなことは意に介さないバスガル候にエネギオスは引き摺られるようにして連れていかれる。


 筋肉ごりら一号もぜろ号には勝てないということなのだろう。


 二人が去った後、マルネロが大きく息を吐き出した。


「とにかく丸く収まったわね」

「バスガル候はとってもマルネロさんのことがお気に入りなのですね」


 アストリアが感心したように言う。その言葉を受けてマルネロが得意げに胸を反らしている。


「まあ、マルネロが好きというより、その爆……」

「クアトロ、それ以上言ったら燃やすわよ」


 マルネロが凄い顔で睨むのでクアトロは黙り込む。


「父上唯一の弱点が女性ですからね」


 息子のグリフォードも安心した顔をしていた。


「ではクアトロ王、私はこれら将兵を解散させるとします。続きのお話は城内にて」


 グリフォードが一礼すると踵を返した。


「では皆さん、我々は城内に向かうとしましょうか」


 クアトロが思うには謝罪どころか、喧嘩を売り続けていただけだったようなヴァンエディオが何食わぬ顔でそう言うのだった。





 城内に通されてしばらくすると、上気した顔のバスガル候と、いささかやつれ顔のエネギオスが入ってきた。


「四将の筆頭などと煽て上げられているが、エネギオスもまだまだ青いのう」

「いやあ、叔父貴にはまだまだ敵いませんですぜ」

「かっかっかっかっかあ」


 バスガル候が気持ちよさそうに笑っている。


 ……お前ら、どこの世界の住人だよとクアトロは心の中で思う。


「おっと、これはお嬢さん方の前で失礼した」


 バスガル候はそう言ってアストリアとマルネロの正面に腰を下ろした。


「……ところで、何の話だったかの?」


 バスガル候は不思議そうな顔をクアトロに向ける。

 何なんだこのぼけ老人は……。


「父上、アストリア様も交えてクアトロ王にお話があると……」


 息子であるグリフォードにそう言われてバスガル候が大きく頷いた。


「そうじゃった、そうじゃった。娘さん、いやアストリア殿は鍵となる人物でな……」


 話を始めるのかよとクアトロは思う。ヴァンエディオには教えないとあれほど言っていたのに。


「かつてこの地上の主だった邪神と呼ばれる存在。それを封印した人族の血を引くのがアストリア様だということだ」

「ほう、封印ができるのであれば、解放もできると……」


 ヴァンエディオがそう言うと、バスガル候はぷいっと横を向いた。

 ……やっぱりヴァンエディオのことは嫌いらしい。

 クアトロは目でマルネロに合図を送った。


「あ、あら流石、バスガル候ですね。博識ですこと」


 マルネロの片頬が見事に引き攣っている。


「ほっほっほ……」


 途端にバスガル候の機嫌がよくなったようだった。分かりやすいが、面倒な爺さんだとクアトロは思う。


「しかし、解放するといってもどうやって?」


 クアトロが疑問を口にした。


「……知らん」

「……」


 何かひどく疲れた。もう帰ろうかなとクアトロは思う。この虚脱感はあの不死者の王、トルネオと対した時と同じだった。


「だが、魔人の奴等は知っていたのだろう。だからアストリア殿を狙ったのだ」

「ならばまた魔人が来るのでしょうか?」


 それまで黙っていたダースが我慢できないとばかりにバスガル候の言葉に口を挟んできた。


「まあ、可能性としてはあり得る。地上を混乱させて神や天使どもに一泡吹かせるといった考え方もあるであろう」

「しかし一泡吹かせたところで魔人に大した益はないでしょうね。それで神や天使を天上から駆逐できる訳でもないはず」


 ヴァンエディオが口を開くとバスガル候は面白くなさそうに、そっぽを向く。全くもって面倒な爺さんだった。


「バスガル候、何か思いあたることは?」


 そっぽを向いたバスガル候にマルネロがやんわりと声をかける。もっともマルネロの片頬は引き攣っているのだったが。


「さあてな。魔人どもの考えていることなどは分からん。だが、この地上はもともと魔族や人族のものではない。邪神と呼ばれる連中のものだからな」


 マルネロに訊かれたら仕方ないと言わんばかりにバスガル候が口を開く。


 確かに以前は邪神の物だったかもしれないが、今更そんなことを言われてもとクアトロは単純にそう思う。


「地上の盟主だった、邪神。その邪神を封じた人族。そもそも人族は天使によって地上に生み出された存在。そして人族への対抗として魔人に生み出された魔族……」


 ヴァンエディオが情報を整理するように言う。


「今ひとつどれも綺麗に繋がらないわね」


 マルネロの言葉にバスガル候が思い出したように口を開いた。


「所詮は伝承の類いだ。もしかすると恣意的に話が捻じ曲げられている可能性もある。クアトロ、そう言えばお主のところにちび助の天使がいたじゃろう? 天使であれば何か知っているかもしれんぞ」


 スタシアナのことだろう。クアトロは頷いた。確かにバスガル候が言うように邪神に関しては魔族よりも詳しいかもしれない。

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