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魔王の花嫁  作者: yaasan


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バスガル候

 「結局、奴の目的もよくは分からなかったな」


 玉座でそう呟くクアトロにエネギオスが呆れた顔を浮かべる。


「はあ? お前が訊く前にぶっ殺しちまうからだろうが」

「う、うるさい。あれはアストリアを虐めた罰だ」


 反射的にクアトロはそう答えた。実際は頭に血が上っており、余計なことを考える暇などがなかったのが正直なところだった。


 クアトロの子供じみた言葉にエネギオスは反論する気も失せたようだった。頭をがっくりと落としている。


「でも、よかったじゃない。アストリアも無事だったんだしさ」


 マルネロが場を取りなすようにそう言っていると、アストリアがダースを伴って姿を見せた。

 あの一件以来、ダースのアストリアへの引っつき具合が過剰なのではとクアトロは感じていた。


「おう、ろりろり姫、もう大丈夫か?」

「ありがとうございます、エネギオスさん。怪我もしてませんし、私は大丈夫です」


 アストリアはそう言って笑顔を浮かべる。

 エネギオスにしても最近は何かとアストリアに気安く声をかけている気がする。筋肉ごりらの分際で生意気だぞとクアトロは思う。


「あ、あの、クアトロさん。顔が、むーってなっているんですけど……」


 アストリアがそんなクアトロの表情に気がついたようだった。


「……ふんっ」


 クアトロがそっぽを向く。


「あ、あの、クアトロさん」


 アストリアがあたわたと両手を上下に動かす。


「ほっときなさいよ、アストリア。どうせ皆がアストリアと仲良くするから妬いているんでしょう。ほんと、小っさい男なんだから」


 マルネロが呆れたような声を出す。


「え、えっと。でも……」

「いいって、いいって。いつもほっとけば勝手に機嫌も直っているんだから」


 何か酷い言われようだなとクアトロは思う。自分はこれでも魔族の王なのだ。誰も機嫌を取ろうとしないのは問題なのではないだろうか。


「皆さん、こちらでしたか」


 そんなことを考えているとヴァンエディオが姿を見せた。その背後にはスタシアナとエリン、そしてトルネオの姿もある。

 この一同が揃うのはアストリア救出の時以来だなとクアトロは思う。


「皆さんがお揃いで丁度よかったですね。お伝えしたいことがあります。バスガル候が我らエミリアス王国からの離脱を表明しました」

「バスガル候……」


 マルネロがそう言っただけで皆は沈黙している。エネギオスなどはあからさまに視線を逸らしている気がする。


「よし、放っておこう。聞かなかったことにしてもいいぞ」


 クアトロがそう宣言すると、エネギオスもマルネロもうんうんと頷く。


「……皆さん、怒りますよ」


 ヴァンエディオから発せられた低い声にクアトロ、エネギオス、マルネロの三人がごめんなさいと頭を下げる。


「バスガル候は少しだけ苦手でな……」


 クアトロがぼそりと言う。


「俺もあのじいさんだけは……な」


 エネギオスが言う。


「私もちょっと苦手で……」


 マルネロが消え入りそうな声で言う。


「はーい、はーい。ぼくは、あのおじいさんが好きですよー」


 スタシアナが両手を上げてぴょんぴょん跳ねている。そんなスタシアナを見て今日も可愛いなと思いながらクアトロは口を開いた。


「……放って置くのは駄目か?」


 ヴァンエディオが無言で頷く。


「あ、あの、バスガル候とは……?」


 そんな雰囲気の中でアストリアが遠慮がちに問いかけてきた。


「クアトロ様を除けば、魔族の中でも最大の版図を有している有力者ですね」

「面倒で元気なじいさんだ」


 ヴァンエディオの言葉にクアトロが付け加える。


「経済的にもそうですが、将兵の数もクアトロ様に次ぐ規模を有しています。また、ご本人の実力も魔族屈指でしょうね」

「元祖筋肉ごりらだ」

「そうね。筋肉ごりらぜろ号ね」


 マルネロもうんうんと頷いている。


「おい、筋肉ごりらって言うな」


 エネギオスが筋肉ごりらに反応する。


「はあ? あんたの眷属でしょう」

「そんな眷属があるか。確かに俺の師匠筋の爺さんではあるが……」

「似たようなもんじゃない」


 マルネロが無茶苦茶な理屈でそう言い捨てる。


「何かと凄そうな方なのですね……」

「凄いなんてもんじゃない。若い頃は素手でドラゴンの首をへし折ったとか、プラチナゴーレムの額を素手で叩き割ったとか……」

「は、はあ……肉体派なのですね」


 アストリアが目を丸くしている。そんな驚く表情も何だか可愛いアストリアだった。

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