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魔王の花嫁  作者: yaasan


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天使って馬鹿なの?

 「何か面白くなってきたじゃない?」


 アストリアの自室で、マルネロは楽しげにそう言ってみた。部屋にはアストリアの他にスタシアナとエリンの顔もある。扉の外の廊下ではダースも控えているはずだった。

 

 部屋の主であるアストリアは部屋の隅で申し訳なさげにしていた。どうやら皆が自分の護衛のために集っていることを気にしているようだった。


 マルネロが言った先程の発言もそれを払拭しようとしてのことだったのだが、アストリアを見る限りでは余り効果がないようだった。

 

 ならば、ここは直球でと思いながらマルネロは口を開いた。


「アストリア、気にすることはないわよ。私とスタシアナは魔族の四将と呼ばれているのよ。魔人如きに遅れは取らないし、揉め事も大好きだからね」

「はい……」

「それに天使にとってみれば、魔人は目の敵なんでしょう?」


 マルネロがそう言って、エリンに目を向けた。


「あら、目の敵ってほどでもなくてよ。もちろん潜在的に嫌っている部分はあるけど。天上では生活圏も違うから、揉める機会も互いにあまりないわよね」

「……え? そうなの……神や魔神も含めてお互いにばちばちなんじゃないの?」

「そんなばちばちとやってばかりいたら、とっくにどちらかが滅びているわよ。ましてや、呑気に地上に来たりするはずもないじゃない」


 馬っ鹿じゃないといった感じでエリンがマルネロに言う。この天使、綺麗な顔をしてこの口の利き方。本当に腹が立つとマルネロは思う。


「で、でもさ、スタシアナも魔人は嫌いだもんね」


 しかし、マルネロは諦めずに同意を求めてスタシアナに顔を向ける。


「んー、どうなんですかねー。魔人なんかより、不浄な者の方が嫌いですねー。不浄な者は即浄化ですよー!」


 ……くっ、このろりこんばばあが。

 マルネロは心の中で呟く。あの骸骨と妙に意気投合しておいて、即浄化はないだろう。どの口が言っているのだ。


「でも魔族の皆さん、眷属の魔人と戦うことは大丈夫なんでしょうか?」


 アストリアがそう訊いてきた。


「まあ上位眷属とはいっても、人族みたいにそれを敬うことはしていないからね。逆に上位眷属だからって、なんで偉そうにされないといけないのかって感じじゃないかしら」

「あら、魔族って随分と捻くれているのね。やっぱり下位の頭が悪い眷属だからかしら」


 エリンが鼻で、ふふんといった感じで笑う。


「こらっ、エリン!」


 スタシアナが拳を振り上げる。エリンが、ひっと言って頭を両手で庇った。


「マルネロをあまり馬鹿にしちゃ駄目なんですよー」


 ……馬鹿に? 喧嘩を売っているの間違いでしょうに。

 何か非常に疲れてきたと思うマルネロだった。


「でも、皆さんには守られてばかりでは申し訳なくて……」


 アストリアが俯き加減で言う。


「気にすることはないわよ。こうして話しているのも楽しいじゃない?」


 ろりこん天使どもとは全然楽しくないけどね。マルネロは心の中で呟きながら、不自然な笑顔を浮かべて見せた。片頬が引き攣っているかもしれない。


「やはりあの魔人は、また現れるのでしょうか?」


 マルネロにアストリアが改めて問いかけてきた。


「そうね。怖がらせるつもりはないけど、あの感じだとまた来るでしょうね」

「面倒だからさっさと来ればいいのよ。今度はすぐに消して……」


 エリンがそこまで言った時だった。轟音と共に部屋全体が大きく揺れた。


「ほらっ! あんたが余計なことを言うから」


 マルネロがアストリアを庇いながら、エリンに向かって叫ぶ。


「はあ? なんで私のせいなのよ!」


 こんな状況でもエリンが果敢に言い返してくる。


「アストリア様、ご無事ですか!」


 ダースが部屋に飛び込んで来た。


「魔人の襲撃かしら? そこのお化けおっぱいと一緒で、魔神に連なる存在って気が短いのよね」


 こんな時でもエリンがマルネロに悪態をついてくる。

 やがて、更なる轟音が上がって天井が崩れ始めた。スタシアナが両手を上に向ける。


「障壁!」


 白い半透明の球体がスタシアナ達の周囲を取り囲む。崩れ落ちる天井から顔を見せたのはドラゴンだった。


「なんでこんな所にドラゴンが? とにかく外へ……」


 マルネロは言葉を飲み込んだ。ドラゴンの左横にあの時の魔人が宙に浮かんでいたのだった。


「あれー? 魔人って飛べたんですねー」


 浮遊魔法の一つなのだろうが、スタシアナがどうでもいい感想を述べてる。


「ダース、アストリアを連れて逃げて。この騒ぎよ。皆もすぐに来てくれるはず!」


 三本の角? 

 まさか、古代種のドラゴン?

 マルネロは心の中で呟く。


 何故古代種のドラゴンが魔人と行動を共にしているのかとの疑問もあるが、今はそれを考えている場合ではなかった。


 古代種のドラゴンはスタシアナとエリンに顔を向けると咆哮を上げた。かつて邪神と共に地上で神や天使、そして人族と争ったという古代種のドラゴン。魔法に絶対的な耐性を持つという。


 流石に分が悪いとマルネロは思う。自分も含めてスタシアナやエリンも魔法しか使えない。だが、アストリアを逃して防御に徹すれば、やがてはクアトロたちが駆けつけて来て勝機も見えて来るはず。


「スタシアナ! アストリアを逃して防御に徹するわよ。そうすればって……へっ?」


 マルネロはスタシアナに視線を向けて絶句する。


「こらあ! クアトロのお城をこんなにして。ぼくは許さないですよー!」


 スタシアナは杖をぐるぐると振り回し、ぷんすかと怒りながら黒い翼を広げて空中に飛び出して行く。


「あ、スタシアナ姉様、待ってよー」


 エリンも白い翼を広げてその後に続く。

 ……天使って皆、馬鹿なの?

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