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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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復讐へ向かって

 ユピテルを倒すと、周囲の木々が消滅……そして、壊れた家屋、ボロボロの闘技場が見えた。

 私たちは変身を解く……服、ボロボロ。


「ほれ」

「え……あ、ありがと」


 私は上半身の服がほぼ弾けとんだせいで、ほとんど裸……さすがに恥ずかしい。

 でも、ハイドがジャケットを脱いで渡してくれた。意外にも紳士ね。

 アレイスターは周囲を確認しつつ言う。


「さて、ユピテルは完全消滅してしまったなあ……脳を調べたかったのに。まあいい。アルティニアにいる『火星』のアイレースの脳でも同じことか」

「おい……オレの復讐を邪魔するなら、テメーも敵とみなすぞ」

「わかってる。僕の目的は脳だけさ。むしろ、手を貸してあげてもいい」

「……胡散臭いわね」


 私、ハイドがジト目で見ると、ハイドは肩をすくめる。

 そして、私たちをジロジロ見た。


「そういえば、神器と命を共有したようだねぇ。実に興味深い」


 すると、『聖典ピカトリクス』がトリスに変わり、フンと鼻を鳴らす。


「おバカな神器たち。これであなた方は、もう次の主人に使ってもらうことができませんわ。持ち主の死に引っ張られ、消滅することになる」


 オウマ、マキナも人の姿へ。

 ハイドは驚愕し、マキナを見た。


「おい、マキナ……どういう」

「……ハイドを、助けたかったの。それに、ハイドが死ぬなら、わたしも死ぬ……」

「マキナ……すまねえ。いや……ありがとうな」


 ハイドがマキナを撫でると、嬉しそうに顔をほころばせた。

 私もオウマに言う。


「感謝するわ」

「おう……って、それだけかよ」

「他に言葉が必要?」

「……いーや、オマエらしいわ」


 軽く拳を合わせる私とオウマ。

 アレイスターはウンウン頷き、ポンと手を叩く。


「さて、次の目的地も決まったし、宿に戻って荷物を回収して行こうか」

「あ? んだよ、出発なんて明日でも」

「いいけど……僕ら、曲がりなりにも『管理者(アドミニストレータ)』の最高幹部の一人を殺したんだよ? のんびりしていると、この領内に常駐している異端審問官が大量に集まって来るよ?」

「……それは確かに困るわね」

「逆に、アルティニアまで行けば安心さ。異端審問官の管轄は決まってるからネェ。ここでは僕たちは最悪の異端者だけど、アルティニアでならまだ、ただの異端者さ」

「そういうモンなのか?」

「うん。『八極星(ベツレヘム)』の縄張り意識はすごいよぉ? ユピテルは平和主義者だけど、他のところに行くときっと驚く。ワクワクするねぇ」

「……とにかく、行きましょう。木々も消滅したし、デュミナス帝国の魔法騎士たちが集まって来るかもしれないわ」


 私たちは急ぎ、闘技場区画を出るのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 宿屋で荷物を回収し、そのまま出発することにした。

 時刻はもうすぐ夕方……今いる区画でも、『闘技場区画で騒動があった』と騒ぎになっていたが、それ以外は普通と変わりない。

 そのまま城下町を抜け、正門ではなく、闘技場区画とは反対側の門から抜けようとする。

 途中、最低限の物資を買い、正門近くまで移動した時だった。


「……え、なんで」

「こっちに来ると思ってました」


 門の近くに、シエスタ姫がいた。

 アレイスターがハイドを掴み、「じゃ、お先に」と行ってしまう。

 シエスタ姫は一人。近くには簡素な馬車があり、それに乗って来たようだ。


「……『木星』のユピテルを、倒したんですね」

「……ええ。問題になるかしら?」

「いいえ。少なくとも……他の『八極星(ベツレヘム)』がどうするか決めるまでは平和でしょう。異端審問官の常駐もありますが……ユピテルがこの地を脅かすことは、もうありません」

「そう……よかった」

「イチゴ様。あなたには謝罪を、そして……感謝を」

「謝罪?」

「はい。あなたを見たときから、こうなるような気がしていました。私はそれに気づきつつも、何もしなかった……ごめんなさい」

「…………」


 真面目なヒトだ。本当に。

 私は、シエスタ姫に手を差しだした。


「全て、終わったことです。私たちは……アルティニアへ行きます。シエスタ姫、グレーテル姫にどうかよろしくお伝えください」

「はい。アルティニア……どうかお気を付けて。あの地には、得体の知れない『宗教』が軸となっているとお聞きします」

「……宗教?」

「ええ。詳しいことは不明ですが……」


 手を離し、私は一礼する。

 シエスタ姫も、スカートをつまんで一礼した。


「イチゴ様。また、お会い出来ますか?」

「ええ、必ず」


 私は、シエスタ姫に微笑み、アレイスターたちの待つ外へ向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 それから、なるべく急いでデュミナス帝国から離れた。

 異端審問官が私たちを捜索しているかもしれないし、移動のために走ることはできるけど、できれば戦いは避けたい。

 それから、ひたすら走り……デュミナス帝国から離れ、ようやく歩みを止めた。


「とりあえず、ここまで来たなら問題なさそうね……ふう」


 すっかり夜。

 森の中、近くに川が流れ、身を隠すにはもってこいの場所ね。


「ここで野営だねぇ。あ~疲れた。食事を取ろう……トリス」

「はい、ご主人様。食事の用意をしますね」

「てつだいたい」

「ええ、お願いしますわ」


 人の姿になったマキナが手伝い始めた。

 オウマがジロジロ見る。


「……何」

「いや、おめーは手伝わねえのかなって」

「女だから料理しろって?」

「へいへい。おめーはそういう奴だよ」


 ハイドはテントの用意をしてるし、アレイスターは自前の椅子テーブルで紅茶を飲んでる。

 私も何かすべきかな……でも、料理なんてできないし。

 トリスをジッと見ていると、めんどくさそうに睨まれた。


「あなた、水浴びしてきなさい。臭いわ」

「なっ、く、臭くないわ!!」

「汗だくじゃない。私やマキナとは違って老廃物で汚れるんだから、素直に従いなさい」

「むぅぅ……」


 言い返せない。

 私は着替えを手に、ハイドとオウマを見る。

 まあ……覗きなんてするヤツらじゃないし、別にいいか。


 ◇◇◇◇◇◇


 私は一人、水浴びをしていた。

 ムカつくけど、トリスの言う通り……けっこう汗臭い。

 身体と髪を洗い、川の少し深い部分で仰向けになって浮いていた。


「ふう……」


 私は、ユピテルとの戦いを思いだす。

 オウマの能力を使っての斬撃。不思議な感触……肉だけじゃない、命を斬るような感覚。

 

「……もっと、強くなれる」


 私は、空を見上げた。

 空には星が瞬き……。


「…………え?」


 私は、おかしなモノを見た。

 あまりにも堂々とし過ぎて、全く気付かなかった。


「……何、あれ」


 こうして、私の最初の戦いは終わり……早くも次の戦いが始まるのだった。

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