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File:012 レジスタンス会議

アダルトレジスタンス本部の大ホール。

体育館のような巨大スペースに、全隊が集まっていた。


朝8時、緊急招集。


大型モニターに、ボスの姿が映る。


『おはよう、同志諸君。今日は今後の方針を伝える』


全員がざわつく。

「ついに動くか」と、熱を帯びた声も聞こえた。


『まずは謝罪をさせてくれ。黒の隊、前へ』


ジュウシロウとシュウが一歩前に出る。


『前回の国会議事堂襲撃で、判断を誤った。

黒の隊には特に負担をかけた。本当にすまなかった』


本部が静まり返る。

ボスが部下に頭を下げるなど、前代未聞だった。


「ボスが気にすることではありません。我々が未熟だった。それだけです」


ジュウシロウが、真っすぐに答える。


「これからのことを考えた。聞いてくれ。ボスとも話した内容だ」


モニターに動画が流れる。

ジュウシロウと例の男との一戦。


男の能面のような顔が、初めてはっきり映し出される。

圧倒的な力で、ジュウシロウとシュウが叩きのめされる映像に、驚きとざわめきが広がる。


シュウが前に出て説明を始める。


「この男は、前崎英二。元官僚でありながら、自ら現場に立ち、公安の任務もこなす異端の存在です」


シュウは、一拍置いて続ける。


「黒の隊を叩き潰したのは、間違いなくこいつの指示によるものです。

俺たちが無様にやられたのも、事実です」


ほんの僅かに、拳が震えている。


「……ですが。経歴を洗えば、前崎英二という人間は、

一市民としては“罪のない存在”でもあります」


「立場が違う。それだけの話だ。敵対しているからといって、俺たちが“私怨”で断罪すべき相手ではない」


ジュウシロウが補足を入れる。


「だからこそ、俺たちは“冷静に”考えました。

前崎英二は、“敵”であると同時に、俺たちが利用すべき“価値ある相手”でもあると」


そういってシュウは一呼吸置いて言う。


「前崎英二を…アダルトレジスタンスに引き入れます」


「ふざけるな!」


カオリの声が、乾いた音のように会場に響いた。

その言葉は、あくまで“レジスタンスの一員”として発されたはずだった。


「あいつがやったことを許せってわけ?」


けれど、その目は、

あの時ジュウシロウを血まみれにした男の姿を、

いまだに焼き付けて離さなかった。


「カオリ、待て。話を最後まで聞け」


ジュウシロウが低く制する。

口調は抑えていたが、

“気持ちはわかっている”という色が、ほんの僅かに滲んでいる。


それでも、ここでは私情を挟めない。

だからこそ、わずかな目配せで、カオリに伝える。


――落ち着け。

今は感情を表に出すな。


だが、カオリはそれを無視する。


「黒の隊をあんなにしたやつらをそう簡単に許せるわけないでしょ?

あんな容赦なく子どもの片腕を切り落とすようなやつらよ。

それであんたらジュウシロウをどれだけ追い詰めたかわかっているの?」


言いかけて、ぐっと唇を噛んだ。


“恋人”としての言葉を、

“仲間を想う怒り”に偽装する。

いつものことだ。


『感情的な反応だな。だが、君の立場なら、理解はできる』


ボスの声は、あくまで事務的だった。


『だが、我々は“全体”を見る。個人の感情で判断を誤るわけにはいかない』


カオリは睨みつけた。

だが、それは「敵を睨む目」であり、“ジュウシロウを想う女”の顔ではなかった。


『彼は敵対した。だがそれは“職務”に従っただけ。

その行為を私怨で断罪するのは、本質を見誤る』


「言いたいことはわかってる。ただやったことは許すの?」


『許すわけではないし、忘れはしないがそれ以上のメリットを彼から貰うだけだ』


声が震えた。

自分でも、感情が抑えられていないのはわかっていた。


『カオリ。では妥協案といこう。こちらとしても選択肢は一つ。

彼がこちらに立たないなら、即座に“処理”する。これでどうかな?』


「…できれば処理の方で考えて頂戴。死体は私がバラすから」


カオリは即答した。

感情が暴走する前に、自分から距離を取るように、静かに席を立つ。


「……ジュウシロウたちを傷つけたやつを、あたしは、笑って許すほど大人じゃないから」


そう言い捨てて、まるで“興味がない”素振りで部屋を出ていった。


だが、ジュウシロウは知っている。

あれは“怒り”ではなく、“傷ついた女の意地”だ。


ドアが静かに閉まる音が、誰にも届かない小さな悲鳴のように響いた。


ジュウシロウは小さく吐息をこぼす。


「……あいつも、ほんと不器用だな」


けれど、その声は誰にも聞こえないように呟かれた。


ボスは、まるでカオリの怒りなど最初からなかったかのように、会議を続けた。


『さて。前崎英二の確保は最優先だ。生け捕りでも、味方に引き入れるでも構わない。

いずれにせよ、あの男のような有能な人間を“敵”から奪うこと自体が、大きな戦果となる』


『その知識、技術、戦闘能力――すべてを、こちらの“武器”に変える。それが今回の目的だ』


一拍置いて、ボスは続けた。


『黒の隊には、これまで負荷をかけすぎた。

いくら宣戦布告のためとはいえ、これ以上を背負わせるのは得策ではない』


『よって、今後は黄色の隊、青の隊、緑の隊との連携を強化し、戦力の分散と最適化を図る』


冷徹でありながら、組織としては正論だった。


壇上に、猿面のケン、メガネを押し上げるソウ、パソコンを抱えたエルマーが静かに並ぶ。


『黒の隊だけでなく、紫の隊、青の隊、銀の隊も全面協力する。

ジュウシロウ、異論はないな?』


「……わかってる」


ジュウシロウは短く答えた。

その声に、わずかに苦味が滲む。


『今日は方針だけ伝えた。具体的な計画は、お前たちに試しに練ってもらう。実行日時は追って連絡する。以上だ』


モニターが切れた瞬間、

周囲は一斉に動き出す。

次の作戦に向けて、それぞれの思惑が交錯する。


ジュウシロウは皆に向き直った。


「……協力、頼む」


「もちろんです」

即座に返したのは、ケンだった。


「とはいえ、どうしたものかね」

ソウは顎に手を添え、思案する。


「奇襲も、力押しも、限界がある。今のままではシミュレーションで98%負ける」

エルマーが冷静に数字を突きつけた。


「……わかってる。でも、何か打つ手はないのか?」


その言葉に、ケンが一歩前に出る。


「ジュウシロウ殿。また正面から勝とうとしていませんか?」


相変わらず、誰に対しても崩さぬ敬語。

だが、その瞳は鋭く、静かに刺さる。


「我々は“勝つ”ために動いています。無駄な正面衝突は、おやめください」


ジュウシロウは、無言で拳を握り締める。


「……あんな恥をかかされたまま、じゃいられねぇんだよ」


その悔しさは、抑えようもなかった。


「ホログラム転送装置のバックアップは未完成。最低でも、一機失えば再構成に三か月。

スペアは作れません。次やれば顔面を潰される程度では済みませんよ?」


「……知ってる」


「プライドのために散るのと、あなたを想っている人を泣かせること。

どちらがあなたにとって大事ですか?」


ケンの声は、決して咎めるものではなかった。

静かに、だが確実に心を撃つ。


ジュウシロウは、短く息を吐いた。


「……比べるまでもねぇ。恋人だ」


「よろしい」

ケンは満足げに頷く。


「では、ジュウシロウ殿。今回は後方支援として動いていただきます」


その口調は決して強制ではない。

だが、“それが正解”と確信している響きだった。


「ならば、私が作戦を立てます。聞いていただけますか?」


ケンが一本、指を立てる。

その動作は、静かだが揺るがない。


ケンの口から語られる作戦は、

ジュウシロウや他の常識を覆すものだった。


だが、それこそが――

今、この状況を打破するために必要な“一手”でもある。


ボスはその計画に目を通し、

迷うことなく、ケンをリーダーとする作戦を正式に認可した。


反撃の狼煙は、静かに、しかし確かに上がろうとしていた。


部隊(今後も増えるかも?)

戦闘部隊:黒の隊。(リーダー:ジュウシロウ)(副リーダ:シュウ)

陽動部隊:紫の隊。(リーダー:ケン)

工作部隊:青の隊。 (リーダー:ソウ)

補給部隊:緑の隊。 (リーダー:アリア)

技術部隊:銀の隊。(リーダー:エルマー)

看護部隊:白の隊。 (リーダー:カオリ)

遊撃部隊:赤の隊。

ボス直属の“星の隊”。


こんな感じでざっくり覚えてもらえれば問題ありません。

一章書き終えたら人物紹介ページを追記する予定です。


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