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第四十話【鍾乳洞の奥】


「おはよう諸君、今日は拙者に力を貸すのである」


 ……朝っぱらから元気な劉虎牢さん。

 大型のバンに乗り込み、どこかへ向かっている。


「帰るんじゃないの?」


 そう、今回は用高さんを妹の聡子さんに会わせることが目的だと思っていた。


「拙者だけだと手に余る仕事があって……」


 八重山の術士だけでは手に負えない仕事?

 じゃあ自分達がいても、役に立たないんじゃ……。


「やっぱり沖縄最強の魂使い(マブイグマー)は程家でしょ?」


 劉さんの口から聞いた新しい事実。


 そうなの?

 自分はてっきり、林世沙さんか、蔡碧芭さんだと思ってた。

 こちらがそのことを気にしていることに気が付いた劉さんは更に補足してくれた。


「だって、寧歌(・・)さまの子どもだもんね、舜歌ちゅぁん」

「劉……」

「あ、ゴメン、ちょっと気が利かなさ過ぎたか」


 寧歌(ねいか)……舜歌のお母さんか。

 廃ホテルのウシ討伐の時に舜歌の最強守護霊「オジー」が確か舜歌のこと寧歌って言い間違えていた。


 少し気まずい雰囲気が流れ、舜歌も少しだけ顔を下げているため表情がみえない。


「じゃ、気を取り直していくぞ諸君っ!」


 車で向かったのは、沖縄県最高峰「於茂登岳」

 まあ五百二十六㍍と本土の山に比べると小さいのだがこんな小さな島にあるのでその存在感はかなりある。


 別に山登りをするわけではないらしく、麓の方にある何の変哲もない道路に車が停まる。

「ここからちょっと歩きだね」


 いちおう、人が一人通れるくらいの幅の道らしきものがあって、進んで行くと大きく口を開いた洞窟がある広場に出た。


「うーん、結構強いね」

「そうだね、コレ、やられた痕」


 劉さんが左目の眼帯を外すと、黒目の部分が白くなっている……。


 嘘、ヤバくない?


 本当の三家に匹敵する八重山諸島を代表する家の当主に手傷を負わせる相手なんてどう考えても危険でしょ?


 自分には寿姉や用高さん、あと于児(ユイヤル)というまだ一度も影の中から出てこないヤツもいる。仲間に数えて良いのかな?


 危ないのは順宋さんと音無さん。

 二人がこの洞窟の中に入るのに反対しようとしたが、先を越される。


「私も行きます」


 ええー、音無さん危ないよ。

 強化合宿ではトップの成績だったけど、これは実戦。訓練の時とはまったく違う。


 だけど。


「私も……舜歌や朔くんのように強くなりたい」


 音無さんは自分が、于児(ユイヤル)を使役したことをあとで知ったらしく、それからちょっと無理してるんじゃないかっていうくらいに修行に打ちこんでいた。


 なぜそんなに強くなりたいんだろ?


 音無さんがなぜがむしゃらに強さを求め始めたのか分からないが、必死さが伝わってきて止めようにも止められない雰囲気。


 順宋さんもやはり妹が心配らしく、いつものペットボトルと爆竹のスタイルでついていくとのこと。



 劉さんが背負っていたリュックから頭に装着するヘッドライトを配り、大量の魔除け(ゲーン)をポケットというポケットに全部入れておくように指示される。


 洞窟の中に入ると、すぐに暗くなったので、ヘッドライトを点ける。


「大きな声を立てたり、早く動くとコウモリがうるさいから静かにね」

「おぇッ……」


 なんかさっきからドブ臭いと思っていたら、コウモリの糞が足元にいっぱい落ちてる。

 意識した瞬間から吐き気が込み上げてくるのを必死に堪える。


 ずいぶんと奥まで来た気がする。

 起伏のある坂を登ったり、降りたりしながら、進むと鍾乳洞になっているエリアに入った。


 足元がくるぶしくらいまで水に浸かっていて、上には無数のつらら状の鍾乳石に、下から堆積していった石柱と呼ばれる鍾乳石があり、あちこちでピチャピチャと水が垂れている。


「よお、久しぶりだな」

「ニンゲン…何シニキタ?」


 奥の突き当りにかなり大きな空間が広がっており、中央に畦石(リムストーン)と呼ばれるバカでかい何重にも囲われた棚田みたいな山の形をした頂上付近にターゲットがいた。


 ちょっと、劉さん。

 三体もいるんだけど?


 お面の様なものを被り、体には草木がコートを着るように張り付いていて、手足が見えない。

 お面に少し色がついており、赤、黒、白の面をつけている。


 その中の一体。

 赤い面をつけた魔物が劉さんと会話を始めた。


「アンタらにはホントは直接的な恨みはないんだが、この山にザコだけど魔物(マジムン)がいっぱい寄ってくるんだよね」

「……」


 無言で話を聞く面をつけた魔物達。


「だからさ、オレに祓われるか、どっかに行ってくんない?」

「ダカラ…ニンゲンハ…嫌イダッ!」


 後ろで様子を窺っていた黒い面の魔物がそう言いながら、前に出てくる。


「コヤツラハ…オ前ラニ…手出シヲシナイ…我ノ役目」


 黒い面の魔物がそう言うと、どんどん体が大きく膨れ上がっていく。


「いいね……お前にやられたこの左目の恨みを晴らしてやる」

「ナラ…右眼モ…見エナクシテヤロウ」


 黒面の魔物との戦闘が始まった。

 舜歌はマロちゃんを呼出し、劉さんは「出でよアカハチ!」と叫ぶと劉さんの影から赤い肌の巨人が現れる。


 舜歌と劉さんに前衛を任せて、音無さんと自分は順宋さんの前に立ち、さらに前に寿姉と用高さんに護ってもらう。



「では参るっ!」


 劉さん、真剣だと思うけど、言い方……。



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