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第三十九話【どっかで聞いたことがある】



「へ~、劉虎牢さんって順宋さんと同い年なんだ」

「うん、あと世沙の姉姉、九明(くみん)と南部の双子にも兄々がいるよ、えっと唐楽だったかな? 合宿にも教師役でいたよ」


 あ~、チラチラと存在感のある人がいると思ったら蔡姉弟にもお兄さんがいたのか。

 その後、自分の想像通り、蔡唐楽さんは順宋さんと同じく霊力を持っていないそうだ。


 石垣島の南東にある宮良という場所にある民宿「豌豆(えんどう)」。

 市街地からかなり離れた住宅が道路に張り付き少し裏手に回ると広い畑が広がっていて、すごくのどかで心が癒される。

 部屋に荷物を置いて、食堂で食事をとりながら、音無さんと一緒に舜歌の話を聞いていた。

 順宋さんはまだ自分の部屋から出てきておらず、何か準備しているようだった。


「オバァ、コレ美味しいね、何ねコレ?」

「舜歌、年配の人に向かって失礼じゃない?」

「なんで、オバァはオバァさ?」


 今でもこの感覚がちょっとわからない……見知らぬ人であってもお爺さんのことをオジーと呼んだり、お婆さんのことをオバァと呼んだりしてて、どうも舜歌だけ特別な呼び方をしているだけでは無い感じなのだ。


「あ、それね~からそば(・・・・)さ、八重山そばにネギとツナを混ぜたものになるよ」


 へぇぇぇ「からそば」

 沖縄本島のちぢれた麺と違って八重山そばは細くてコシがある。

 汁はついておらず、湯がいた麺にそのままネギとツナをオンしてるスーパーお手軽フード。それにしてはメチャクチャ美味しい。


 ってか、舜歌も知らないんだ。

 石垣島でしか食べられないのかな?


「オバァ料理上手だね♪」

「はさ、まいふな~だね」

「まいふな~って何ね? 初めて聞いた」

「お利口さんって意味よ」


 さすが八重山。

 舜歌もわからない単語があるらしい。


「まーるあっぱりしゃんね、このネーネーは芸能人ね?」

〝美人〟(ちゅらかーぎー)って意味? 小春~は芸能人じゃないよ」


 まーる? あっぱ、しゃん? 

 音無さんを見て誉めているようだが、何言ってるのかよくわからない。


「アンタ〝八重山の人(やいまんちゅ)〟じゃないの?」

「うん、本島北部(やんばる)からきたよ」

「そうね~ゴメンね、アンタみたいなのいっぱいいるから地元の子と思ったさ」


 舜歌ってどこでも打ち解けるのが早そう。

 もう旅館のお婆ちゃんと仲良くなっている。


「あい!、順宋遅いよ~ッ自分達もう食べ終わるよ」

「ゴメンちょっと組み立てるのに手間取ってしまって」

「はい、ニイさんの分、置いておくね」

「ありがとうございます〝比嘉さん(・・・・)〟」

「あいッ! なんで私の名前を知ってるの?」


 順宋さんが、遅れて食堂に入ってくると、両手に組み立て式の姿見できるスタンドミラーを運んできた。


 今日、この民宿には他に一組いるそうだが、先に食事を済ましたらしく食堂には自分達と民宿のお婆さんしかいない。


「舜歌」

「は~いッちょっと待ってね……はいデキた♪」


 順宋さんがスタンドミラーを倒れないように脚を広げて据えると、舜歌が両手で印を結び、霊力を投射する。


聡子(さとこ)~、ボクだよぉ~用高ぉっ!」

「はげっ! ニィニィ……」


 え? どういうこと?

 

 スタンドミラーの中に自分(はじめ)の守護霊をやっている自称二十八歳、料理人だった比嘉用高さんが鏡の中に映し出されている。


 用高さんをお兄さんって呼ぶということはお婆さんが例の十歳、年の離れた妹さん?

 そうか、昭和五十年前後は四十七、八年前だから当時十八歳だったら六十五・六歳くらい。まだお婆さんという年齢ではない気がするが……。

 まあ用高さんが年齢を偽っていたらこの限りではない。


 用高さんは、急に消息を絶ってすまなかった、と話すと聡子さんは「オレはビッグになる男だって書置き残して、南米に行ったってホテルの人から聞いたけど?」と答えた。


 まあ積もる話もあるだろう。

 姿見の鑑を聡子さんの部屋へ運び、明日の朝四時まで気が済むまで話してくださいと順宋さんが伝え、自分達は食堂に戻った。


 よかったね、用高さん。

 思えば、廃村では何度も命を助けられた。


 用高さん結構、天然で悪霊が四体、同時に出た時に「自分が左の二体やるから寿那さんは右の三体お願いします」って叫んでたが、あと一体はどこ? ってなったり。


 幽霊なので犬に吠えられることがあるが、「あの〝ちば(・・)犬〟怖いね、睨んでるさっ」って柴犬しばけんね、ちなみに今は〝しばいぬ〟というが、メチャ言い間違えたり。


 遠くで雷が鳴ったら「超近っ超近っ」って言ってて、「いや遠いでしょ?」とツッコもうか悩んでると、それを聞いた舜歌から沖縄では雷を聞いた後、雷避けで「チョーチカ、チョーチカ」って本土の「くわばらくわばら」と同じように唱えることを用高さんは言ってるそうだが発音がおかしくて「超近っ」って聞こえたらしい。……発音は大事にしよう。


 ──なんだかんだいっても、一緒にいてとても楽しかった。


 でもこれでお別れか……。


 なんだかそう考えるとちょっと寂しくなってくる。

 


 翌日の朝。


「おはよう、朔くん」

「あれ? 用高さん、妹……聡子さんに一目会ったら成仏するんじゃ?」

「ああ、ボクね、新しい(ねがい)を見つけたんだ」

「え?」

「今の時代の料理を君に憑りついている間にいっぱい勉強して」

「勉強して?」

「生まれ変わって……」

「生まれ変わって?」





「料理王にボクはなるッ!?」


 うわぁ……、なんか聞いたことがあるフレーズ……。



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