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第一話【ロリっ娘との出会い】

 

はじめ、新しい高校はどうだった?」

「別に……」


 朔と呼ばれた男子校生は荷解にほどきの真っ最中の父親に返事をする。父親は息子の反応に慣れているのか。それ以上、言葉を交わそうとせず目の前の段ボールのガムテープを剥がすため再び手を動かしはじめる。大きな荷物はすでに引っ越し業者が各部屋の所定の位置に運び込まれている。だが、大量の段ボール箱の開封はまだ一割にも満たない。


 リビングの一番目立つ場所……テレビ台の傍にある書棚の前に写真立てに色褪せた家族四人の写真が飾ってある。父親は某大手住宅メーカーの敏腕営業職として働いていて、父と息子だけの引っ越しはこれで四回目になる。


 七月一日。

 カラカラに晴れた空。

 関東では、梅雨真っ最中なのに大量の蝉が頭に響く耳障りな鳴き声を絶やさない。


 中途半端な時期での転校。

 だけどどうでもいい……。

 前の学校も四月から殆んど登校しなかった。


 つまらない……。

 小学校低学年の頃から何もかもうまくいかない。


 いじめ、疎外、悪戯……。

 交友関係だけでなく、外に出るとよく怪我をしたり、体を壊しやすく高熱を出したりと親父に迷惑ばかり掛けている。すべては小学二年の頃、姉が交通事故で亡くなった頃からずっと何もかもうまくいかない。

 母親はまだ小学三年生にあがったばかりの自分を残して家を出ていき、親父と二人で生活を始めて八年が経とうとしている。


 親父はまだ四十半ば。見た目もそこそこ、不動産業だけあって稼ぎもそれなりにあるはず。自分みたいな邪魔者さえ居なければいくらでも再婚なんて容易なはずだ……。


 「街を見てくる」と嘘をつき、アパートから外に出た。そのまま近くのバスターミナルから恩納村経由の那覇行きのバスに乗り込む。


 以前、テレビで観た「万座毛」。

 風光明媚な観光地として知られ、断崖に象の鼻を想起する部分が有名で何度もテレビで紹介されるメジャースポット。


 バスを降りた頃には陽が暮れて、国道から中に入っていくと、だんだんと薄暗くなっていく。施設の駐車場を越えて遊歩道に入る。次々と観光客らしき人たちが観光バスへと引き返していくので一人、流れに逆行して奥に進んで行く。先端のところに到着するともう辺りには誰もいない。立っている傍の照明が壊れているのか自分の周りだけやけに薄暗い。


 これなら誰にも邪魔されない……。

 コンクリートで出来た擬木の柵を乗り越え、崖になっている部分まで歩み寄っていく。少しだけ月が顔を出している所為か月明りに照らされ、ゆらゆらとした海面がうっすらと見える。岸壁にうねりとなった波がぶつかり白波に変わり引いていく。だんだんと体が海面へと引き込まれていく感覚。


 チリィィィィン


 透き通る鈴の音が背中の方から聞こえた。急に体が軽くなり、いつの間にか頭の中に掛かっていた靄が取れた気がした。慌てて、崖から離れて後ろに尻もちをつく。


「まったく~~。一人で危ない(・・・)のをくっつけて、この時間にこんな所にきたら取られちゃう(・・・・・・)よ?」


 ──女の子?


 背はそこまで高くない。

 むしろ小さい……。

 背格好から考えて小学五・六年生にみえる。


 女の子が立っている辺りの照明はたしか壊れていたはず。なのに電気が通ったのか照明が点き、姿が見えたがこちらからは逆光となっており表情までは見て取れない。


 女の子の足元に何かいる!?

 犬か猫……がいるがこちらが気づいた途端、女の子の裏に隠れ消えてしまった。


「私は舜歌、兄兄にぃにぃは名前何ね?」


 質問されて自分の名前を答えると「変な名前だね~」と言われた。

 こっちだって気になる。小学生がこんな暗い人気(ひとけ)のないところで何をしているかと?


「ちょっと仕事……じゃなかった用事があってね。あとひとり(・・・)じゃないよ」


 彼女は意味ありげに答えるが、イマイチ理解ができない。こちらの質問には曖昧に答えるのに、次々と質問を浴びせてきたので、つい。飛び降りる気でいたと話した。


「よかった。私も用事が終わったから一緒に帰ろう」

「え? どこに?」

「名護」

「ちょ、ちょっと……」


 彼女は柵を越えて少し恥ずかしがる俺に対してお構いなしにそのまま腕を引っ張って駐車場へと向かって歩き出した。




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