神のお告げ
奇妙な世界へ………
俺は草薙誉。同僚がおかしな事を言い始めた事に驚くサラリーマンだ。
俺の同僚には、とある男がいる。その名は梅宮義則。
梅宮は、常時営業の成績はトップで、賢く、資格をたくさん持っている。まさに、優秀という言葉を擬人化したような男だ。
しかし、彼の人生はとあることによって180度変わることになる。
そんなある日の事。梅宮がお前だけに話したいと言って、休憩室に俺を呼んだ。
「あのさ……信用できるお前だけに言っておきたい」
「なんだよ、もったいぶらずに言えって」
梅宮は口を塞ぎながらも、何か言いたげだった。
「……わかったわかった。じゃあ、耳元で言ってくれ」
俺は梅宮の顔に耳を近づけると、彼はこっそりと言った。
「実は………神のお告げが聞こえるようになったんだ」
「フムフムフム、お前、疲れてんだよ。休んどけ。うちの会社は有給消化率100%なんだからよ」
「いや……本当なんだ」
「………って、えぇぇぇぇ!?」
俺は耳を疑った。まさか、優秀な梅宮が、こんな宗教めいた事を言うなんて思ってもいなかった。
「おいおい、お前、なんか怪しい新興宗教団体に騙されてんじゃないのか?」
「いやいや、俺はなんの宗教団体にも入っていないし、家族もそういうのに入っていないよ」
「にしてもなんで……」
「いや、俺にもわからないんだ。一昨日から唐突に聞こえるんだ。そして、昨日、その神が『この事を信用できる者に言え』と急に言ってきたもんだから…」
「そうか………」
すると、梅宮が頭を抑えた。
「ぐっ……うぅぅ……」
「ど、どうした!?」
「か、神のお告げが聞こえる…」
「神のお告げ!?というか、そんな感じで聞こえるもんなのか…?」
すると、梅宮がスッと、顔を上げると、休憩室を出た。
「ちょっ、どこに行くんだよ!」
俺は梅宮をついて行くと、俺達は社長室の前まで着いた。
「梅宮、何をする気だ?」
「まぁ、見てろって」
梅宮が社長室のドアをノックすると、向こうから声がした。
「入ってくれ」
そして、俺達は社長室に入った。
「何の用だ?」
「はい。社長、私が思うに、この会社はもっと視野を広げたほうがいいと思います」
「というと?」
「はい。この会社は確かに大企業で、海外にも視野を広げています。ですが、宇宙にも視野を広げておいたほうが良いでしょう」
「ほほう。社内一優秀な君が何を言うと思ったが…そんな事か。フフフ、梅宮くん。この会社は日本でも一、二番目に大きな会社だ。そんな事をしなくても、うちは倒産なんかしないよ」
「そうですか。しかし、私はこの会社の末路が目に見えています。そのうち、この会社は一週間も立たずに、潰れるでしょう」
「貴様!部下だからって調子に乗りやがって!そんな事を言うんだったら、貴様はクビだ!クビ!とっとと出ていけ!」
「そうですか。では…」
俺達は社長室を後にすると、俺は梅宮を叱った。
「お前…!社長にこの会社は潰れますだなんて言ったら怒られるに決まってんだろ!お前は社内で結構優秀な方だ!今すぐ謝ってこい!」
「いや、いいさ。あの人はきっと後悔するよ。あの時、アイツの話を聞いていれば…とね」
俺は梅宮の言っていることがわからなかった。
次の日から、梅宮が来ることが無かった。
三日後、朝起きると、会社から電話があった。
「ふぁい……草薙ですが……」
「草薙!落ち着いて聞いてくれ!実は…他社に仕事を取られた!」
「なっ、どういうことですか!?」
「うちのすべての取引先が、ライバル企業の茨城産業を選んでしまったんだ」
「な、何故?」
「茨城産業、実は宇宙にも視野を広げていて…どうやら、そっちを選んだそうだ…」
「そんな…社長は?」
「社長は…夜逃げした」
「よ、夜逃げ!?」
「あぁ、うちがどうしようもないことを知ると、会社の金を持って一人で勝手に海外に逃げたんだ!だから…うちの株は暴落して…倒産した…」
「そ、そんな…」
「俺には他の会社に回せるようなコネは無い。だから、各々個人で仕事を探してくれ」
そして、電話は切れた。
「そんな…どうすればいいんだ…」
俺は絶望した。その瞬間、今度は梅宮から電話があった。
「どうした、梅宮」
「実は、お前と新しく仕事を始めようと思ってな」
「仕事?」
「そう!俺達で新しく『教え屋』を開くんだ!」
「教え屋?」
「あぁ。神のお告げを客に知らせるんだよ」
「そうか…」
無論、仕事が無い俺にとって、この答えにNOと答える義理は無かった。
「わかった。取り敢えず、瀧尾市のカフェで詳しいことを話してくれ」
「OK。じゃあ、午後2時に」
そして、電話が切れた。
午後2時、俺は例のカフェに着くと、既に梅宮がいた。
「こっちこっち!」
俺は梅宮のいる席に座ると、奴は詳細を話し始めた。
「朝言った通り、俺の神のお告げを知れる能力を利用して、客にお告げを言うんだよ」
「へぇ…それはいい商売だ。だが、何か怪しい新興宗教団体に思われないためにはどうしたらいい?」
「それは、俺が住んでいるマンションでやろう」
「そうか…それなら怪しまれない」
そして、俺達はカフェを後にすると、梅宮の住むマンションに着いた。部屋に入ると、もう準備はされていた。
「仕事が早いな」
「あぁ、こういうのも、得意分野だからな」
そして、俺達は商売を始めた。
最初に来たのは、隣の部屋に住む、無職の男だった。その男は親のスネをかじって住んでいた。
「取り敢えず、俺はどうすればいいか、教えて下さいよ」
「まぁ、取り敢えず……うっ…」
俺は梅宮の隣にいたのだが、少し心配してしまう。いつもこんな調子じゃ、客を怖がらせるのではないかと思ってしまう。
「なにか、来たんですか?」
「はい。あなたのお父さんは社長ですか?」
「あぁ、そうだが…」
「その会社を継いでください」
「親父の会社を継ぐ!?オイオイ、無職の俺に社長なんかできるわけ無いだろ」
「いえ、物事というのはやってみなきゃわかりません。是が非でも、その会社を継いでください」
「チッ、わかったよ」
男は教え料の三百円を置いて出ていった。
「オイオイ、梅宮、こんなに厳しくていいのか?これじゃあ、客が寄り付かない」
「いや、これでいいんだ。あえて厳しく言うことによって、尻を叩かれた馬のように、人は頑張れるもんさ」
「そういうものかねぇ…」
それから一週間後、客は誰も来ず、俺は暇だったので、スマホでネットニュースを見ていた。その中に、気になるニュースがあったので、それを見てみた。
『教え屋に救われた若社長!実は元ニートだった』
なんと、その記事に書かれていた若社長の大森という男は、一週間前にここに来たあの無職の男だった。
「梅宮!これを見てくれ!」
俺は梅宮に例のニュースを見せた。無論、梅宮は初めて毛虫を見つけたの如く、驚いた。
「ほう。やっぱり神のお告げは正しかったんだ」
それから一ヶ月後、教え屋は大きくなった。神のお告げを聞きたいという者が一気に現れ、巷では、『教えの梅宮』として有名となった。
そして、梅宮はテレビに出るようになり、自伝本も出すようになった。
無論、俺達は大量に金を稼げることになった。
ある日の夜、俺は梅宮に呼び出され、とあるレストランに赴いた。
「いや〜最初はこんな商売は駄目だろうと思ってたけど、まさかこんな有名になるなんてな」
「アハハ、正直、神のお告げを聞こえるようになった俺もまさかこんなことになるなんて思ってもいなかったよ」
「じゃあ、俺達の成功に乾杯」
俺はワインを一口飲むと、少し不思議な味がしたが、それを気にせず飲んだ。
「それでさ、今後の展開はどうする?」
「ううむ、神のお告げを聞けるのは俺だけだから、全国展開はないな」
「まぁ、そうか…にしても…このワイン…不思議な味だな…どこ産だ?」
「さぁ、どこだろうね」
すると、ズボンに何か垂れたような気がしたので、手元のナプキンでズボンを拭いた。ナプキンには赤い何かが拭かれていた。
「へ?」
俺はテーブルに倒れた。
「なんだよ…これ?」
白いテーブルクロスには赤が侵食されていた。
「神のお告げでこう言っていた。もっと金が欲しいのなら、友人を保険金に掛け、殺せと言われたんだ」
「そんな…嘘……だ……」
俺は梅宮を恨みながら意識を失った。
梅宮は草薙が死んだことを確認すると、スマホでとある男に電話を掛けた。
「社長、終わりましたよ」
彼の言う社長は、かつて梅宮を雇っていた男、菱野猛だった。
「終わったか。梅宮。最初に神のお告げが聞こえるようになったと聞いたときはアホらしいと思ったが、本当にそのとおりになるんだな」
「えぇ、神は100%ですから」
「フフフ、どうだ、梅宮、海外にも来るか?」
「いや、俺は日本でゆっくりしてますよ」
「そうか…わかった。お前の方、なんか外が騒がしいな」
「恐らく警察が来たのでしょう。大丈夫です。保険金はあなたの通帳に送っておりますから」
そして、電話は切れた。
「動くな!」
「……仕方ない。これも、神のお告げか…」
梅宮は草薙の飲んだワインを飲んだ。
読んでいただきありがとうございました……………




