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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
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21/43

ストレスガム

奇妙な世界へ………

 俺は源田剛。会社と家庭でストレスを感じまくりの中年男だ。

 俺の勤める会社の立場としては、課長だ。なので、無理な指示をする、部長。舐め腐った態度をとる一部の社員。それらが原因で、ストレスを感じまくりである。しかし、それだけではない。家庭では、冷たい妻と反抗期の息子がいるお陰で、家庭内でのカーストは、ペットの犬のジョンソンより下だ。

 取り敢えず、俺の1日を教えてあげよう。

 午前6時。俺は気づかれないように起きる。妻の栄子と息子の秀喜は俺がいると嫌な顔をするため、いつも朝は一人だ。

 リビングに付くと、一人でコンビニのサンドイッチとコーヒーを食べて、二人が起きる前に俺は家を出る。

 午前7時半。会社に付き、皆の到着を待つ。

 午前8時。部長の矢部晃がやってくる。そして、俺に近づいた。

 「源田くん、おはよう」

 「矢部部長、おはようございます…」

 「今日も業務をがんばってね……頑張らないと、給料減らすから」

 「わ、わかっております」

 「じゃ、今日もよろしく」

 このように、矢部部長のパワハラに近い言葉(俺以外には言わない)によって、ストレスを感じていたりする。しかし、ストレスの原因はこれだけではない。

 午前8時半。部下たちが一斉にやってくる。しかし、一人だけいない部下が無いことにいつものように気付く。

 午前8時50分頃、遅刻ギリギリで一人の男がやってくる。その男は部下の一人、市川修だ。

 「課長〜!おはようございま〜す!」

 「市川…なんでお前はいつも遅刻ギリギリで来るんだ…」

 「だって〜いっつも、電車が遅延してて〜」

 「……お前なぁ、その言い訳、一週間前も言ってなかったか?」

 「気のせいですよ、き、の、せ、い!」

 「ぐっ………」

 俺はダメだとわかっていてもコイツをぶん殴りたくなった。

 午後19時、家に帰宅。ドアを開けても誰も出迎えてくれない。リビングに入ると、秀喜はスマホを見ていて、栄子は台所で料理を作っていた。

 「おっ、この匂いはカレーか?」

 「………そうよ」

 栄子の冷たい声が俺の心を貫く。

 そして、カレーが出来て、料理を待った。そして、テーブルに置かれたのはカレー。しかし、俺のカレーライスの量は秀喜と栄子の分より少なかったのだ。

 「あの…これは?」

 「見たら分かるでしょ。カレーライスよ」

 「いやいや、そうじゃなくて…なんで、量が少ないの?」

 「……早く食べて。冷めるから」

 キャッチボールすらできていていない会話に、俺は少しのイライラを覚えた。

 そして、カレーライスを食べ終え、風呂に入ろうとした時、秀喜が珍しく話しかけてきた。

 「親父」

 「ん?どうした、秀喜?」

 「あのさ、風呂は先に入らないで」

 「な、何でだ?」

 「だって、親父が入ったあとの風呂、加齢臭がするだもん、カレーだけに」

 「ププッ」

 俺は二人のコンビネーションに若干悲しくなった。

 午後10時、風呂を入り終え、寝床に就く。しかし、ベットには、栄子が占領していた。

 「たくっ……」

 俺は床に寝そべって寝ることにした。無論、寒いし床は硬いので、よく眠れない。本当、明日が休みで良かったと思う。

 そう、これが俺の一日である。ストレスにまみれた一日であることは皆わかっただろう。しかし、そんな俺に転機が訪れる。

 次の日、起きると、栄子と秀喜がいなかった。

 (なんだ?家出でもしたのか…?)

 リビングに行くと、一枚の置き手紙があった。

 『あなた、秀喜と一緒にお父さんの所に行ってきます。なので、二日間くらい帰れません』

 「くっ………」

 せめて何か俺に言ってから行ってくれと、俺はテーブルに置かれたコンビニのサンドイッチを食べながら思った。

 それから数時間後、暇つぶしにテレビを見ていると、インターホンの音がした。

 「なんだ?何か頼んだ覚えがないが……栄子の物か?」

 俺は不思議そうに玄関に向かい、ドアを開けた。そこには、七三分けのスーツを着た男がいた。

 「誰だお前は!?」

 「どうも。私、こういう者です」

 すると、男はスーツの内ポケットに入っていた名刺入れを取り出すと、そこから一枚の名刺を取り出した。

 『メンタル食品㈱ 営業担当 釘原純』

 「メンタル食品?」

 「はい。我社では、メンタルにまつわる食品を作っておりまして、今回紹介するために、セールスをしているんです」

 「はぁ…今どきセールスなんて珍しい。で、何を紹介するんだい?」

 「これですよ」

 釘原はバッグから、小さな長方形の箱を取り出した。箱には『ストレスガム』と書かれていた。

 「ストレスガム?」

 「はい。このガムは、ストレスを感じた時に食べると、そのストレスをガムが吸ってくれるんです。飲み込んでも、吐いてもOKですよ」

 「へぇ…」

 「実は、そんな貴方にチャンスがありますよ」

 「チャンスって?」

 「はい。1週間、このガムを体験出来るんですよ」

 「そうか…(確かに、俺はイライラした生活だからなぁ…体験してみても、損はないな)わかった、じゃあ、体験してみるよ」

 「ありがとうございます。では、明日、ストレスガム1週間分を送らせていただきます」

 そして、釘原はそこを去った。

 次の日、俺宛に届け物が来た。それはもちろん、ストレスガムだ。

 「よし、これでストレスから回避できるな」

 そのまた次の日、会社に着くと、同時に矢部部長も着いていた。

 「お、おはよう。源田くん」

 「おはようございます」

 「源田くん、お仕事頑張ってね。頑張らないと、そのうち、辞表を出すことになるからならねぇ…」

 「……はい…」

 俺は矢部部長が会社に入るのを見届けると、俺はバックの中から例のガムを取り出した。そして、その中の一つを取り出し、それを食べた。

 (ふむ……なんか、爽やかな味だな…ミントみたいな…なんかこう…心がスゥっとしてくるような…)

 そして、ガムの味が無くなる頃には、ストレスが無くなっていた。

 (す、凄い!本当にストレスか無くなった!)

 俺は爽やかな気分で会社に入った。

 そして、遅刻ギリギリで市川も来た。

 「課長〜〜おはようございま〜す!」

 「あのなぁ…」

 「すいませ〜ん、聞こえませ〜ん」

 市川はおちゃらけながら自分の席に座った。

 俺はまたガムを噛み、ストレスを無くした。

 その夜、家に帰ると、いつものように二人は出迎えてくれなかった。

 リビングに入り、秀喜が嫌そうな顔で見てくる。

 「おかえり」

 今度は、栄子が冷たい声で俺に言う。

 「あなた、夕飯食べ終わったら二人で話し合わない」

 「えっ…いいけど…」

 俺は何か嫌な気を感じた。

 夕飯の後、俺は栄子に呼び出された。

 「それで、話ってなんだ?」

 「これよ」

 すると、栄子はとあるものを出した。それは、ストレスガムだった。

 「あのねぇ、あなた、私に無断でこんなの買ったわけ?」

 「い、いや、一昨日セールスマンが来て、これを買わされたんだよ。て、てか、無料だったからつい……」

 「だからって、こんなの買っていいわけ?本当にくだらない亭主よ。離婚よ」

 俺は栄子のくだらない言葉に嫌気が差し、堪忍袋の緒が切れた。

 「……お前だって…俺に無断でバッグやらなんやら買ってたじゃないか!?」

 「それは…アレよ、アレ。趣味よ」

 「俺のやつとお前の趣味は違うって言いたいのか!?」

 「えぇ、そうよ」

 「ぐうぅ…離婚だ!離婚!そんなに別れたかったら、別れてやる!」

 俺は怒り狂い、自分の部屋に入った。バッグの中から、ストレスガムを一個食べた。しかし、珍しく怒りは収まらない。俺は思わず、一箱分全部食べてしまった。

 「はぁ…はぁ…はぁ…俺はなんで離婚って言ったんだろうなぁ…」

 俺は自分のやったことに後悔した。




 それから一週間後、俺と栄子は別れた。秀喜は栄子に取られたが、そんなのどうでもいい。しかし、重要なのはこれからだった。ストレスガムが無くなったからだ。

 今までストレスガムに依存していた俺にとって、ストレスガムが無くなる事が一番のストレスだった。

 「ウワァァァァァァァ!ギャァァァァァァァァァ!」

 ストレスは血圧を上げる。そして、体調を悪くする。

 その結果、俺は脳に異常をきたし、死んでしまった。

 俺は死ぬ前にこう言った。

 「ストレスがぁ………ストレスがぁ………ストレスガムをくれぇぇぇぇぇ………」

 俺の人生はストレスに包まれた人生だった。

読んでいただきありがとうございました…………

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