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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
20/43

最期の言葉

奇妙な世界へ……

 俺は津久井義彦。死の瞬間を見ている男だ。

 俺はとある留置所の職員で、いつも死刑囚を腐るほど見ている。

 なので、親の顔ほど奴らの最期の言葉を聞いてきた。ある者は『死にたくなーい!』、ある者は『ごめんなさい…ごめんなさい…』、ある者は何も言わなかった。

 この仕事は結構精神に来るものがある。なんせ、人の死を見ることになるのだから。なので、一回死の瞬間を見たあとに辞めてしまう者もいる。しかし、俺は二十歳にこの仕事に就いてから、三十年間、辞めずに続けてきた。正直、精神が強いのだろう。本当に、人の精神というものは不思議だ。




 そんなある日の事。囚人番号『964』こと、益子博司の執行が確定した。

 益子博司は幼少期に貧困に住み、最終学歴は中学生だった。アルバイトをするも、教養の無さが仇になり、すぐに辞めていった。

 そして、数年前の3月29日。それは起こった。益子が殺人を犯したのだ。

 最初に殺したのは西見町に住む老夫婦だった。二人を殺す際、益子はこう言っていた。

 「ヒャーハッハッハッハッ!俺は殺しても何も失わねぇ!ざまぁ!ざまぁ!」

 何も失う事がない無職。それが社会とって怖いものであった。

 そして、一年前、奴は人を殺していく内に、奴は捕まり、死刑判決を受けた。

 これで今に至る。

 俺は首に縄が掛かりそうな益子に声を掛けた。

 「囚人番号964。何か最期に言う事はあるか?」

 すると、益子は凄まった表情でこちらに言った。

 「俺は!お前の孫に生まれ変わって!お前の親族を呪ってやる!」

 「………わかった。じゃあ、開始しろ」

 そして、奴は死んだ。3月29日、8時26分。この日はあの老夫婦が亡くなった日でもあった。




 それから数日後、電話がかかった。

 「なんだ?」

 相手は息子の貴明だった。貴明は2年前結婚して、その奥さんである智恵が今妊娠しているのだ。

 「どうした?貴明?」

 「父さん、聞いてくれ、息子が…息子が産まれたんだ!」

 「何!?産まれただと!?わかった、今すぐ病院に行く」

 俺は電話を切ると、病院に向かい、貴明と智恵がいる病室に入った。

 「赤ちゃんは!?」

 俺は二人の元に駆け寄ると、智恵が赤子、所謂俺の孫を抱いていた。

 「父さん、可愛い子だろう?」

 「あぁ、可愛いなぁ」

 俺が孫に笑顔を見せてやると、孫は『キャッキャッキャッキャッ』と笑った。

 「それで、名前はもう決まったのか?」

 「あぁ、博司だよ」

 「博司かぁ…」

 「由来は、博士のように賢く司る子でいてほしいからだ」

 「そ、そうか……」

 一瞬、益子の事が頭によぎったが、たまたまだと思い、博司に笑顔を見せた。

 それから二週間後、智恵が退院し、三人は幸せに暮らしていた。

 しかし、事態は起こった。それは智恵から電話があったのだ。

 「はい、義彦だが」

 「お義父さん!貴明さんが…」

 「た、貴明がどうした!?」

 「貴明さんが…車に轢かれて…」

 「えっ!?」

 「今、病院に緊急搬送されてて…」

 「わかった!今すぐ行く!」

 俺は所長に許可を取ると、智恵の言った病院に向かった。そして、廊下で智恵と博司を見つけた。

 「貴明は…」

 「命に別状は無かったわ…貴明さんは、飲酒運転の車に轢かれて…」

 「そうか……」

 俺は博司を見ると、何か、ニヤリと笑った気がした。

 それから数カ月後、貴明は退院した。俺達は退院したことを大いに喜んだ。しかし、博司は喜んでいなかった。まぁ、赤子にはこういうのはわからないのだろう。

 それから数カ月後、俺は休暇を取り、貴明達3人ととある墓場に行った。その墓場には、妻の京子の墓があった。

 京子は俺のかけがえのない人だった。俺が30の頃、結婚した人でもあった。

 しかし、京子は俺が40の頃、とある男に殺されてしまった。それが、あの男、益子博司だった。京子が一人で家に居たとき、益子に殺されてしまったのだ。俺は京子の死体を見たとき、俺は泣いた。体の水分が無くなるんじゃないかと思うくらい、泣いた。

 そして、墓の前で、俺は手を合わせた。

 (京子、天国で見守ってくれよ…最近、孫が産まれたんだ。名前は、博司だよ…)

 その帰りの事。俺達は昼飯を食べた後、帰るために車に乗っていた。運転は、こないだ運転免許証を取った貴明だった。

 「貴明!上手な運転じゃないか」

 「いや〜それほどでも」

 すると、走りがおぼつかない車が横に来た。

 「なんだ?」

 「走りからして、あおり運転だろうな」

 「いやねぇ…」

 すると、その車が前に出たかと思うと、急に止まり、俺達の乗っていた車にぶつかった。

 「うわっ!」

 「なんだ!?」

 「キャッ!?」

 「オギャーオギャー!」

 博司は泣き始め、貴明と智恵は焦りだした。

 「くっ…何なんだよ…」

 すると、前の車から、一人の男が出てきた。その男は覆面を被っていて、バールを持っていた。

 「な、何なんだ、アイツ!?」

 すると、男はバールを振り上げたかと思うと、車の窓を割り、車のロックを開けたのだ。そして、男は俺を引きずり出したのだ。

 「な、何を…」

 「ケケケッ、俺は人を殺したくてしょうがないんだよ…俺はこの社会を恨みに恨んでいた……でも…神様がこうお告げしたんだ!『人を殺しなさい』とな!」

 どうやら、男は狂っているようだ。

 「だから、俺の成長の第一歩となってくれよぉぉぉぉ!」

 そして、男はバールを横に振り上げ、俺の横腹に当てた。

 「うっ…」

 「ケケケッ、次は腕だ!」

 今度はバールを腕に当てた。

 「ギャッ…」

 「ラストは頭だァァァ!」

 そして、男は頭にバールを当てた。

 「ぐっ…………」

 そして、そのまま意識を失ってしまった。




 「きて…起きて…起きて…」

 「はっ!」

 俺は病室にいた。

 どうやら、奴のバールは、なんとかクリーンヒットせずに、なんとか助かったようだ。

 「よかった…」

 貴明が、俺を抱く。しかし、俺の目には嫌そうな顔をする、博司がいた。



 それから、津久井家では、不幸が長け続けに起きた。仕事のミスや、事故等…俺の体はボロボロになりかけた。しかし、この時の俺は知らなかった。あんな不幸が起きるなんて。

 この日は、博司の5歳の誕生日パーティーだった。しかし、そのパーティーには、貴明はいなかった。

 「遅いわね、貴明さん」

 「まぁ、仕事が忙しいんじゃないのか?」

 「それにしても遅いわ。もう8時よ」

 すると、俺のケータイに電話が来た。

 「はい…」

 「すいません、警視庁ですが…津久井貴明さんの親族でしょうか?」

 「は、はい。貴明の父ですが」

 「実は…貴明さんが…お亡くなりになり…」

 「たっ、貴明が!?」

 「はい。なので、警視庁まで来てください」

 そして、電話が切れた。

 「智恵、少し行ってくる……」

 「どうしたんです?お義父さん」

 「ちょっとだけ…な」

 俺は家を出て、警視庁の慰安室に入った。

 そこには、貴明の死体があった。

 「貴明……貴明ぃぃぃぃぃぃぃ!」

 俺は死体を見て、泣き出した。

 どうやら、警察の話によると、夜、貴明が帰ってくる途中に何者かに襲われてしまい、その男に殺されてしまったのだ。

 「ぐっ………」

 俺は悔しさで、下唇を強く噛んだ。

 そして、俺は心を癒やすために、有給休暇を取った。そして、家族葬を行った。

 「貴明…」

 「貴明さん…」

 「ママー?パパは?」

 「パパはね、天国って所に行っちゃったの…パパは、その天国から見守ってくれるから……」

 俺は、博司を見ると、邪悪な笑顔を浮かべていた。




 それから、7年後、博司も12歳になり、俺も、定年退職をしていた。

 「おじいちゃん、はい、これ」

 すると、博司がコーヒーを渡した。

 「おっ、博司も気が利くなぁ…」

 俺はコーヒーを一口飲むと、博司が耳元で呟いた。

 「津久井義彦、俺は、益子博司だ」

 「!?」

 「最期に教えてやる。俺は、転生した。その時、神様がこう言ってくれたんだよ。『津久井家を不幸にする能力を授ける』とね。そのコーヒーにはね、猛毒が入っているんだ」

 そう言われた途端、俺は呼吸が出来なくなった。

 「じゃぁな、津久井義彦」

 そして、博司、いや、益子博司はその場を去った。

読んでいただきありがとうございました…………

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