第15章、深い溝➀
登校する。
歩く先の人がシェラトリスらを避け、道ができる。
目立ちながらも、長い教室への道のりを、クレイや獣魔たちとお喋りして平静を装い進む。
教室に入る。
席に禍々(まがまが)しい魔法陣が描かれた紙が置いてあり、チーナが触れずにそれを燃やす。
教室の後ろや廊下から嫌な視線と共にクスクスと笑い声が聞こえるも、無視をする。
授業が始まる。
六人グループを作れと言われるが、途端に生徒数名が体調不良を訴え、ぴったり作れるはずのグループの人数が足らなくなる。
シェラトリスとエルルフ、クレイの三人ぼっちで、何とか課題をこなす。
次の授業が始まる。
移動する際、念のため、ヴァイルに呪い返しの魔法を使ってもらい、荷物、ひいては席の安全確保を図る。
帰ってみると、数名の生徒が、なぜか焦げたようなボロボロの酷い姿でシェラトリスらを睨んできた。
昼休みが始まる。
シェラトリスらは視線を浴びながら部室に避難した。
そこには、思わぬ人物が待っていた。
「シェラトリス、待っていたよ。」
「で・ん・か?」
「…シェラトリス嬢。」
部活のメンバーにバレたからと言って、ここは学校。気を抜かず、表向きの態度を崩さずにいてほしいというシェラトリスの考えとは裏腹に、アスカルトは気にせず、自由に振る舞いがちだ。足元をすくわれないようにという教育を受け続け、隙を見せるリスクの高さを知らない彼ではないはずなのに。
(何を考えているの?…もしかして、あなたも“綱渡り”をしている側なの?)
以前、ルヴァンやフィルが話していたことを思い出す。
だが、そこでシェラトリスは考えるのをやめた。先日の彼らの様子は、シェラトリスを巻き込まないよう何か企んでいる様子だったからだ。意地悪や意味のない仲間外れをするような者たちではないことを、シェラトリスはよく分かっている。何も知らされていない以上、追及して首を突っ込むわけにもいかない。
シェラトリスは、心の中でため息を吐いた。
「シェラトリス嬢、新入部員が来ているよ。」
「そういうことは早く言ってください!」
(新入部員にもう素をさらしてしまったの…?!)
シェラトリスは焦った。
が。
「やあ、私たちも入らせてもらうよ。」
「よろしく頼む。」
奥の部屋にいたのは、ルチルとレノだった。
「え…っ?」
驚くシェラトリスに、別の部屋から顔を出したフィルが告げる。
「二人もやっぱり入りたいんだってさー。」
「やっぱり…てどういうこと…ってフィル!」
シェラトリスの疑問に答える間もなく、フィルがエルルフを強引に連れて引っ込んだ。
代わりに、ルヴァンが出てきた。
「“すでに入部届をもらっている。”」
「え…?!」
シェラトリスの驚きようにルチルは笑いながら語る。
「実は、結構前から、フィルに入らないかと誘われていたんだ。だけど、堂々と君たちの仲間入りを宣言して動くには、家のしがらみが立ちはだかってね…。そう、私たちの家は代々、中立派だから。」
そこで、ルチルがふうとため息を吐いた。
「だけど、私とレノは、そんなことも言ってられない状況だと、一族を説得したんだ。まあ、一族も、情勢が“黒”に傾くこの状況を良しとしてない者が多くてね。バランスを保った社会を取り戻すためには仕方ないと、しばらく白に協力することが決定したよ。」
「だが、俺たちは、家のこととは関係なしに、最初から最後までお前たちの味方だ。それを間違えないでほしい。」
レノは、訴えるような目で真っ直ぐにシェラトリスを見つめた。
シェラトリスは、この姉妹に対し、感謝の心でいっぱいになった。
「シェラトリス嬢、彼女らはフィルのお墨付きの人物だそうだね。あのフィルが心を許しているのだから、僕も安心できる。二人にはぜひ、この部活に入ってもらいたいと僕も思っていたんだ。」




