棘の意味と◯◯◯◯な母様
「…どういうことだ?」
アランが困惑している。
そりゃそうだ。母様自身で暗に自分がその導者だって言ってたのに、違うってなんだ。
「…私もかつては聖なる導者だったわ。でも…その役目は一族の末端にしか出来ないのよ」
「………!」
一族の末端って言ったら…もしかして…私?
「で、でも、私の色は銀じゃないわ!?」
「体の色はね、銀になるのよ」
「「…は?」」
私とアランの気の抜けた声がリンクしましたねー、これ。
いやいや、色が変わるってどゆこと!?カメレオン的な!?
私、そんな事実16年間知らなかったけど!
え、聖なる導者が私ってことは…
「待って待って!じゃあ、魔王討伐に行くの!?私が!?」
「……」
母様の瞳が揺れる。
まるでそれは迷子の子供のようで…これは、心配だけではなく…贖罪の、色?
あぁ、そういうことか。
そんな心配はしなくていいのに。
私は母を安心させるように微笑んだ。
ドラゴンだからあまり表情は変わらないけど…きっと母様には分かるだろう。
「…母様、私は母様の娘で幸せなんですよ?」
「…!!」
母様の目が見開かれる。
そう…母様は最初から知っていたのだ。
一族の末端が担う運命を。宿命を。
だからこそずっと迷っていたのだろう…子を成すことを。
子を成してしまえば自分が負えばいい宿命を受け継がせなければならない。
それでも私を産んだ。
きっと…私が産まれてからずっと不安だったに違いない。
それであんなに苦しい特訓を毎日続けていたのだろう。
だから母様はアランが…勇者が現れて様子がおかしかったのだ。
私がいよいよ魔王のところへ行かなければいけないから。
きっと…自分のせいだと思っているのではないだろうか。
そんなわけないのに。
母様も知らないが私は一度死んでいる。
産まれること、生きることがどんなに尊いかを知っている。
例え過酷な運命が待ち構えていようとも、私は母様に感謝こそすれ不満など微塵もない。
何より。私は母様が大好きなのだ。
幸せに決まってるでしょう?
「………怒ってないの?」
「何を怒ることがあるの?こんなに愛されて、毎日幸せなのに」
「イリィちゃん~~~!!!」
「ぐぇっ…!!」
や、やめ…やめてぇ~~~!!!でっかいドラゴンの母様にそんなぎゅうぎゅうに抱きしめられたら…出ちゃう!内蔵とかその中身とかもろもろ出ちゃう出ちゃう!!
「イ…イリーネが白目を剥いているが…」
思わぬところから助け船。
でも年頃の乙女としてはイケメンに白目を剥いてるところなんて見られたくなかった…切実に!
「うるさい!あんたは最後までちゃんと空気になってなさいよ!」
「えぇ~…」
母様、さっきまでの厳かな雰囲気崩れてるから!
アランにもバレてるから!
「ふん。体の傷は治っていてもお前のその脆弱な体が受けたダメージは無くなったわけではないわ。どんなに早くとも出発するのに3日はかかるでしょうね」
…棘が!棘が鋭い!!
「脆弱な」あたりの強調に棘がある!!
…もしかして母様はツンデレというやつなのか!?
発言はキツいがなんだかんだで傷を治し、衣食住の面倒を見て、3日間寝床も貸してあげるつもりらしい。
…うん、ツンデレ決定!
ニヤニヤが止まらないわぁ~。
見ればアランも必死で表情を殺しているのか、口の端をひくつかせている。
…あ、母様に睨まれた。
でもきっとアランにも伝わってる。
母様の優しいところとか温かいところが。
大好きな人が認められるのは嬉しい。
確かに魔王討伐に出るのは怖いし不安が大きい。
でも私は胸が温かくなるのを止められなかった。
毎回短めでごめんなさい。
今日か明日また更新予定です!




