~初めての冒険者クエスト2~
宿屋を出たハヤト、リリア、ミミルは三人仲良く冒険者ギルドへと向かってあるいていた。
まるで仲の良い兄妹のように……。
(念のため外に出る前に二人の姿を普通の人間と変わらなく見えるように幻術を使ったが……
それでも万が一にでも危険が及ばないように気を付けないとな……一様リネスとエリシアには【速度増加Ⅱ】と【攻撃増加】を付けてきたしな。
もし襲われても逃げ切るか、撃退するだろ……。)
ハヤトは昨日あった出来事、今日リネスが話していた内容を聞いてみんなに危険が及ばないように最低限の【付与】を施していた。
「リリア、ミミル、何か食べたいものあるか?」
「た、食べたいもの、ですか……?………あ、甘いものが、食べたい…です……//」
「美味しいものならなんでも~!♪」
下から見上げる形で、おねだりをするようにハヤトを見つめるミミルと、横で腕に抱きついたままぴょんぴょんはねるリリア。
「甘いものに美味しいものか……さすがに朝から甘いものはきついから帰りで良いか?」
「み、ミミルは全然構わないです……//」
(はぅ……や、やっぱり、ご主人様と目を会わせて話すのは…まだはずかしいですぅ……//)
少しだけ目線をそらしながら話すミミルに少し疑問に思いつつも話を進める。
「なら、帰りに甘いものを食べるとして、今はなにを食べるかだなぁ……ん?」
そんなことを考えながら歩いていると、ふと前の方の屋台のような店から炭と、何かを焼いた香ばしい匂いがしてくる。
「なんか、良い匂いがします……」
「ご主人!あそこから良い匂いがするよ~!」
狼だからだろうか、鼻をぴくぴく動かして漂ってくる臭いを嗅いでいる。
その光景に思わず笑みがこぼれる。
「はは。…ちょっと行ってみるか?」
「いく~!」
「い、行きたいです……!!」
普段から活発で元気なリリアと、大人しめで内気なミミルとでは同じことを話すにしても多少は反応が違ってくる。
が、今は漂ってくる食べ物の匂いに全く同じ気持ちらしく、尻尾を左右にパタパタ振っている二人にまたも笑みがこぼれてしまう。
「んじゃ、行ってみるか。」
三人は少し前方にある屋台の方に歩を進める。
「おう、兄ちゃん達いらっしゃい!よかったら買っていきな!」
屋台に近づくなり少し年のいっているであろう男の人が威勢の良い声をかけてくる。
「えっと、匂いにつられて来たんですが、何を焼いているんですか?」
炭が積まれた台の上の編みには肉のようなものが串に刺されて焼かれており、今も良い匂いがずっとしてくる。
「ここら辺では有名なリェーヴェルって魔物の肉だ。
肉質は筋肉質なんだけどな、全然固くなくてむしろ柔らかいんだ。
それとな脂身のところは旨味が強くて、それでいてくどくないところが売りだな。」
ほれこの魔物の肉だ。と屋台の後に山積みになっている箱のようなものの中から魔物を取り出す。
それはどことなく自分が知っている小さな野性動物と良く似ており。
「……一番近い生き物でいうとウサギだな。
もしかしてだけどさ、リェーヴェルって魔物はウサギが暴走して魔物化したものなんじゃないですか?」
「お、詳しいな?
兄ちゃんの言う通りリェーヴェルは野生のウサギが何らかの理由で暴走して魔物化したものなんだ。
長年調べられてきたらしいが未だに解明はされてないみたいだがな。
……んや、1つだけ噂程度だから本当かどうかはわからんが…聞きたいか?」
「いや、いいですよ。そんなの知ったところで俺には関係ないから。」
肩をすくめながら言う。
「がはは!それもそうだな!」
それを聞くと何を思ったのか大きな声で笑う。
「それで、買っていくか?今ならまけとくが、どうする?」
「そうだな……3本頼んでも良いですか?」
未だに口の横からよだれが垂れている二人を見るに、買わないわけにもいかず。
ついでに自分の分も買うことにした。
「おうよ。ちょってまってな。今温めなおすからな。」
串に刺さったリェーヴェルの肉を6本もっと、坪へと突っ込む。その中にはタレが入っていて肉の全体へと濃厚なタレが絡み付く。
それを網の上においた瞬間にジュゥっと焼ける音がする。
高温の炭火によって焦げたタレの香りとタレ本来の甘い匂いが同時に絡まり合うようにハヤト達の嗅覚を刺激する。
1分後……
「ほい、待たせたな。リェーヴェルの串焼き3本で銀貨三枚だが、おまけで6本だ。」
豪快にリェーヴェルの串焼きが入れられた袋を受けとる。
「なかなか太っ腹ですね?」
そう言いつつあらかじめ金貨から崩しておいた銀貨を取りだし一枚を差し出す。
「これからの冒険家に対しての投資だと思ってくれれば良いんだよ。」
にっと白い歯を見せて笑って見せる。
「そうですか。
それじゃ、ありがとうございました。また機会があれば来ますね。」
「おう、またよろしくな。」
方手をあげて返事を返してくれるおっちゃんを後にして、町中にあるベンチへと腰かける。
「よし、食べるか。」
「食べる~!!」
「た、食べたいです…!!」
二人がさっきからずっとやけに静かだったのは、ずっと肉が食べたくて見続けていたためだった。
「ほれ、落ち着いて食べろよ?」
リェーヴェルの串焼きを袋から取りだし一本ずつリリアとミミルに渡して、念のため落ち着いて食べるように促すが……その言葉を一切聞かずに二人は串焼きにかぶりつく。
「「…………」」
一口で口の中いっぱいに肉を頬張るとなぜかそこで一時停止をしている。
「どうした?」
「「お……」」
「お……?」
「「おいひい(です)!!♪」」
片手を自分の頬に当てて、とても美味しそうに肉を噛み締めている。
そして口の中に含んだ肉を飲み込むと、リリアは次の一口を食べて噛み締めて美味しそうに食べる。
ミミルはと言うと……
「ご主人様も食べてみてください!♪」
自分が食べていた串焼きをハヤトに食べてほしいと口元へ近づけている。
「いや、でも……」
俺の分もちゃんとあるんだけどな……と言おうとしたところで思いとどまる。
(ここで断ったらミミルを悲しませてしまうかもしれないな……何もかもをしてやれるかは分からないが……こいつらの親の話を聞いたときの瞳にたまっていた涙……二度とみたくはないからな。
二人がしたいことを尊重してやらないとな……)
少しの間そんなことを考えていると
「ご主人様……?」
ミミルが心配そうにハヤトの顔を覗きこんでいた。
「あ、すまん、ちょっと考え事をな……一口もらって良いか?」
「は、はい…!♪」
ミミルが持つ串焼きが口許に近づいてくるとそれに一口かぶりつく。
「……ほぉ、確かに美味しいな……」
リェーヴェルの肉はおっちゃんがいっていた通り筋肉質なのだが、全くもって固くはなくむしろ柔らかくて、旨味が強くてとても食べやすい。
それでいて脂身のところは甘味が強く口の中に広がるような優しさがある。
そんな肉に合うように作られた甘辛いタレは抜群の相性を誇っていた。
「ありがとな。」
口の中に含んだ分を食べ終わると、ミミルに礼を言って頭を撫でる。
「えへへ……♪///」
頬を赤く染め、目を細めてとても嬉しそうに口元がにやけている。
そのあとは残りのリェーヴェルの串焼きを3人で別け、とても美味しくいただいた……
「よし、飯も食い終わったことだしギルドにでも行くか。」
とベンチから立ち上がり、それにくっついて歩くミミルとリリアが少し首をかしげながら
「ご主人~、なんでギルドに行くの~?」
「み、ミミルも気になります!」
「あー、特に深い意味はないんだが、二人と出掛けようと思ってな?
あとは、可能性は低いかもしれないが…もしかしたら二人の親御さんの情報があるかも知れないし、それが主人としての努めだろうからな。」
(それとは別に二人の強さも確認しとかないといけないってのもあるしな……この先何があるかわからないからな……)
それを伝え終え、二人に目を会わせると……
「は……?」
そこには瞳に涙をためるリリアとミミルがいた。
「あ、え、えっと…これは、ですね……」
「嬉しくて……」
確かに涙だけを見ると泣いているように見えるが、口元を見ると本と少しだが笑みを浮かべているようにも見えた。
「な、泣くほどか……?」
「そ、それくらい、嬉しかったんですよぉ……///」
「もしかしたら、捨てられるかもしれない…って思ってたから……」
そんなことを聞いて自分の言葉を思い返す……
(あー、確かにあの言い方だと二人から離れるために親御さんを探しているようにも聞こえるな……それでも違うと思えたのは俺が主人としてのっていたところか……)
「ごめんな、余計な不安を抱かせて……」
ぎゅっ…と静かに優しく二人を抱き締める。
「ご、ご主人様!?」
「ご主人…?」
いきなりのハヤトの行動にあたふたと動揺する。
「絶対に捨てたりしないから安心してくれ……今までにないくらいリリアとミミルを幸せにしてやるからな。」
(なんか告白?してるみたいだな……)
思ったことを口にしただけなのだが、ふとそんなことを思ってしまう。
「ご主人のそばから離れないから~!♪」
「ふ、ふつつかものですが、よ…よろしくお願いします……///」
(なんかミミルのは違う気がするんだが……まぁ、いいか。)
それからなかなかリリアとミミルが離れてくれず少しの時が経つ。
「よし、とりあえずギルドに行くか。」
やっと離れてくれたことで、向かうはずだった場所へと向かうことにする。
「は~い!」
「はいです♪」
安定のリリアとミミルに挟まれる形でギルドへと歩き出す。




