私の時代はビックウェーブ
セラフィーナ・リタ・シュベリー公爵令嬢、ブルーム王国の四大公爵家のうちのひとつシュベリー家の長女である。上には優秀すぎるお兄さまが一人、下には可愛すぎる弟が一人。美しいものにだけ囲まれて18年間過ごしてきた金持ちの美少女、そう思ってくれればいい。
だけど、セラフィーナ――私には重大な秘密がある。それはこの世界がゲームだってことを知っているってこと!
転生とか多分そんな感じなのだろうか、生まれた時からなんとなく違和感を感じていて第一のゲーム「姫薔薇と夜空の君」が開始されたお兄様が14の時に覚醒したのだ。
ああ、この世界は『ゲーム』だ。
前世を覚えてるわけでもないのに私の中にはこのゲームの関連情報がすべてあって何作かでているうちの処女作であるお兄様が攻略キャラの「姫薔薇と夜空の君」が始まったのが私が10歳の頃。次のお兄様が引き続き攻略キャラとして出ている「夢想淑女と晴天の君」が14歳、そしてさっきまで行われてた「宝石娘と華の君」が18歳である。そして、そしてこの作品からは二つの選択にゲームがわかれその内の一つである「美しき棘と水晶の君」で最愛の運命であるランドルフ・ウェルズリーと私が結ばれることになるのだ!
全てのゲームでお兄様とヒロインの接点をできるだけ無くし(お兄様は最難関隠しキャラなので簡単だったが)自身も王子殿下に婚約破棄されることによって始まるこのゲームという名の運命。
ウッキウキのワックワクである。
ランドルフ・ウェルズリーとは、「宝石娘と華の君」の攻略キャラでもあり次回作の「美しき棘と水晶の君」では難関攻略キャラとして出てくる青年である。
今から始まる「美しき棘と水晶の君」、略して『とげきみ』では前作で悪役令嬢であった私が主人公であり前作でヒロインを虐めまくってた女とヒロインに惚れてた男とでは犬猿の仲。しかし経験値を積むことにより次第に惹かれていって…という内容。ほかの攻略キャラはどーでもいい、ランドルフさえいればなにもいらない。
ここまで私がランドルフに惹かれているのには理由がある。ランドルフは四大公爵家のひとつウェルズリー家の庶子であり家では虐げられているのだ。しかし根っからの正義漢でありとげきみの最後では家の不正を暴き自身の身分すら捨ててしまう…引き締めた表情からたまに見せる切なさや子供っぽい表情が母性本能を呼び覚ます、最高の萌えキャラである。私はそんなランドルフが大好きだ。
いままでは会っただけで嫌悪感満載の顔をされたてたけど、今は違う、私の時代がきたのだ…!
私の時代が――
「ぎゃああああっ!」
「お嬢様、ベットから落っこちるのでしたらもっと優雅に落っこちませんと」
冷静でずれている突っ込みありがとう侍女ステラ。
私は夢の中で語りすぎて興奮してベットから落っこち目が覚めるという何とも言えない朝の目覚めをしていた。
「屋敷中にお嬢様の叫び声が響きましたよ」
「う、嘘ですー、この屋敷の壁はそんなに薄くありませーん!」
そう言い返す私にステラは無表情で開けっ放しにされたバルコニーを見た。
…これは朝からお兄様に苛められる予感しかない。
「それよりお嬢様、私の時代が私の時代がとなにかつぶやいてましたがどうされました?どちらかというと王太子殿下から婚約破棄されたお嬢様は時代的に終わってると思うですが」
「く、くぅ…言い返せない!」
「言い返さなくて結構ですよ」
毎朝のようにステラにやり込められながら私はネグリジェを脱がされて着替えさせられる。
今日はクリーム色と薄紫色のドレスだ、こんなの買ってたっけ?
「ヴィヴィラル様からの贈り物です。傷心の妹にと」
ヴィヴィラルお兄様の喜んでいいのか泣くほうがいいのかよくわからないプレゼントは私ににあってた。
「今日は縦ロールはやめてね」
そう言うと、ステラは固まってしまった。
「お、お嬢様から縦ロールを抜くとどうなってしまうんですか…!?」
「今日から私の時代なんだから先時代の悪役はいないのよ」
「悪役っぽいって気づいてたんですか!」
「ステラはそう思ってたのね…」
そう言いながらもステラは器用に私の髪を結いていく。
出来上がったのは新生セラフィーナ・リタ・シュベリー、ちょっとカールが残るものの見た目は悪役令嬢から脱しちょっと我が儘そうなお嬢様だった。
「さ、お嬢様。お兄様と弟様がお待ちですよ」
ステラに急かされて私は朝食で使われる朝顔の間に連れてかれた。
▽
朝顔の間はその名のとおり、朝の光を満足いくまで取り込み色とりどりの花々が描かれている。
「おはようセラ。婚約破棄された翌日の気分は?」
「ヴィーお兄様、私の弄るのはそんなに楽しいですか」
「楽しいねまったく」
美しすぎる、まさに月のような妖しげで妖艶でそれでいて天使のような顔でヴィーお兄様は意地悪をおっしゃる。一通りやり返したらつぎは弟のターンだ。
「お姉さまっ、あの屑王子は僕が将来やっつけますのでご安心ください!」
「勇ましい言葉をありがとうイアンナ。でも王太子をやっつけたら家がなくなっちゃうからダメよ」
「そうだよイアンナ、『やっつける』なんて曖昧な言葉じゃなくてちゃんと『殺す』『隷属させる』としっかりとした目的意識を…」
「お兄様は黙っていてください」
このお兄様は可愛い弟イアンナに確実に悪影響を及ぼしてる。
現にイアンナはぶつぶつと物騒なことをつぶやいていた。
「皆様、朝食の席は復讐会議の席ではありませんよ」
「ごめんなさいジェフシ」
執事のジェフシに怒られながら私たちは思いのまま、お兄さまは見た目にそぐわず朝からステーキ、私は普通に目玉焼きとパン、弟はスクランブルエッグとソーセージを食べながら朝の席を過ごしたのだった。
しかし私は朝食の席でお兄さまにこんなことを聞かれたのに少し引っかかっている。
「ところでセラ、本当に研究所に行くのかい?」
「もちろんです。あのめんどくさい王子様の管轄でなくて学べるところと言ったらあそこぐらいしかありませんから」
私は先日婚約破棄と同時に高等学院を卒業した。そのあとの進路は普通の令嬢なら結婚だが今の私にはそんな相手もいないので勉強することにしたのだ。それも王族が管轄の上学院ではなく古来よりある大陸の数国で経営してる研究所である。
「折角お姉さまが家にいると思ってたのにがっかりです僕」
「ごめんねイアンナ」
そういってぶーっといじける弟ははちゃめちゃ可愛い。
可愛い弟を愛でてるとお兄さまは、いつものごとく妖しく美しく微笑んだのだった。
1週間後、私は研究所にいくと同時にこのゲームのスタートを切ったのであった。




