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生徒会の優雅な放課後

今月末、9/30 にコミック単行本発売予定です!

ご予約なども始まっています!

コミカライズでも生き生きとしたみんなをよろしくお願いいたします。

 私立桜ノ宮魔法高等学校の生徒会は、魔法分野並びに一般教科において成績優秀、多忙な仕事も難なくこなし、生徒や先生からの人望厚い、非の打ち所のない有能集団である。


 オマケに今期は、なぜか眉目秀麗な輩がそろい踏み。

 この学校ではちょっとしたアイドル扱いをされている。



 ――――そんな人気者な生徒会メンバーの、とある放課後の生徒会室。



「うん、みんな集まったね! ……といっても、副会長の雪乃は今日も、体調不良でお休みだけど。まあそれは仕方ない。このメンバーで本日の生徒会会議をはじめるよ! 議題はズバリ、『次期生徒会候補について』!」


パンッと、ホワイトボードの前に立ち、芝居がかった動作で会長の春風芽吹が手をたたく。眩い黄金色の髪が揺れ、碧眼がゆるりと細まる。

 彼特有のキラキラトーンも全開だ。


「はいはーい! 候補って、まず会長は誰か目星はいるんすかー?」

「アキト、いい質問だね」


 繋げた四つの席のうちのひとつを陣取り、椅子にだらしなく凭れながら手を挙げたのは、書記の祭アキトだ。そんな彼を「ちゃんと背を伸ばして座りなさい!」と、横の席に座る会計の祭ナツキが窘める。


 この二人は男女の双子で、同じ黄色の髪と茶色の目、どちらも高校生には見えない幼い容姿をしている。生徒たちからはお祭り双子の愛称で親しまれ、二人が話し出すと生徒会室は一気に賑やかになった。


 副会長の柊雪乃は本日は欠席なので、生徒会メンバーはこの三人で全員だ。


「僕はやっぱり、一年生の『木葉心実』さんは確定だと思うね。飛び級の天才魔法少女の名に偽りなく、とても優れた魔法能力を持っている。一般科目の成績も優秀だし、生活態度も品行方正だ。生徒会長に推薦してもいいと思うくらいだよ」

「今年の一年は期待値高いの多いよなー。『魔法スポーツ研究部』の奴が、期待のルーキーが入ってきたって騒いでいたし。なんだっけ、山鳥とかいう奴。でも一年には赤髪のこええ不良もいるだろ。入学早々、喧嘩で謹慎処分とかマジヤベーわ」

「二木樹虎くんだね。でもあれは彼から手を出したわけじゃなく、絡まれてやり返しただけみたいだよ? 魔法能力は優れているみたいだし、実はテストの点数とかも安定して上位なんだ。素行さえ良ければぜひ候補に入れたいところなんだけど……」

「不良が生徒会とかムリムリ。春の模擬試合もサボってただろ、ソイツ」

「あ! 春の模擬試合といえば……!」


 珍しく真面目に候補を出して話し合う男子達の会話を聞いて、なにかを思い出したらしいナツキは、急に立ち上がって真ん丸な目を鋭くさせる。

 そしてキッと、会長と己の弟を睨みつけた。


「あんたたち、野花三葉さんの試合記録を笑いものにしたこと、まだちゃんと彼女に謝ってないでしょ!」

「ゲ、まだあれのことを持ち出すのかよ」

「野花三葉さん……?」


 顔を歪めるアキトに、暫し考える素振りを見せた会長は、思い当ったのか「あー」と眉を下げて申し訳なさそうな顔をする。


 カリスマ性もあり、基本的には有能を地で行く芽吹の唯一の欠点と言えるのが、彼が重度の笑い上戸であるということだ。

 笑いの沸点がとにかく低く、ツボると腹を抱えて爆笑してしまう。 

 

 実はそれのせいで、今期一回目の春の魔法模擬試合後。

 芽吹は名前の出た少女とたまたま廊下で遭遇し、そこで見えてしまった彼女の試合記録の凄惨さに、思わず笑い倒したという失態を犯していた。


 自分でも気をつけてはいるのだが、時たまやらかすところは、まだまだ芽吹も青い高校生男子である。


「機会があったらちゃんとお詫びするよ、あれは女性に対して失礼だったね」

「女性相手じゃなくても失礼だから!」


 会長のファンならば、「そんな微笑みが絶えないところも素敵」とか言い出すのだろうが、ナツキからすれば微笑みと爆笑はまったく違う。

 盲目的なファンの子たちを、むしろ心配してしまうくらいだ。


「もう、本当にこれだからデリカシーのない生徒会男子どもは……!」


 腰に手を当ててプンプン怒るナツキは、見た目が可愛らしいせいでまったく怖くない。構図的には、悪さをする小学生男子たちを窘める、クラスの学級委員長である。


「と、とにかく、次期生徒会候補に木葉心実さんは確定で! 今度顧問の先生にも伝えておくよ。あとの候補はおいおい考えていこうか」

「よーし、じゃあ会議は終了な。ティータイムにしようぜ、ティータイム」


 誤魔化すように話をまとめた芽吹。

 それを聞いたアキトは「待ってました!」と言わんばかりの勢いで、椅子からぴょんと立ち上がり、黄色の髪を跳ねさせながら隣接している給湯室の方へと駆けていく。


 そこには常に誰かが買ってきた菓子類と、紅茶やコーヒーの類が用意されていた。クッキーの箱を抱えて戻ってきたアキトに、ナツキは「もう!」と頬を膨らませる。


「またそうやって、すぐにティータイムとか言い出して! まだ先だけど、文化祭のサクラサバイバルについての内容は、早めに固めるように理事長直々のお達しだって来てるんだよ? 校内の見回りだって、今日はアキトが当番でしょ! やることはいっぱいあるんだからね!」

「へいへい。じゃあナツキは、このクッキーいらないんだな。あーあ、高いヤツなのに」

「い、いらないなんて言ってないもん!」


 ギャーギャー騒ぎ出した双子を横目に、いつのまにか自ら用意した紅茶を優雅に芽吹は啜る。新しいメンバーがこの生徒会室に来るようになっても、きっとこの騒々しさはそう変わらない気もするなあと思いながら。



 桜ノ宮魔法高等学校の生徒会室は、本日も賑やかである。


 

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