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野に咲く雑草の悲劇

 この学校での私は、野に咲く雑草のようなものだ。


 誰にも気にも留められないし、頑張って生きてみても踏みつけられるのが当たり前。自己主張しすぎると刈り取られるから、息を殺すことだけに必死になってる。

 遠くで輝く綺麗な花々を見つめて、寂しそうに揺れるしかない、小さな雑草なんだ。


                       

♣♣♣



 ここは私立桜ノ宮魔法高等学校。『魔法』と呼ばれる特殊な力を持つ人だけが入れる、人里離れた山奥の高校だ。

 私はここに通うピカピカの一年生で、名前は野花のばな三葉みつば。みつは、ではなく、みつば、である。

 私のこの名前は、「四葉のクローバー=幸せになるために、あと葉っぱ一枚を自分で手に入れられる子になってほしい」と母がつけたもので、私はこの名前をとても気に入っている。

 だけど、ここで母に謝らなければならないことが一つ。


 ごめんなさいお母さん。

 私は葉っぱ一枚手に入れるどころか、全部の葉をもぎ取られそうです。


 そもそも、私の高校デビューは出だしから滑りまくっていた。


 まずこの高校に入ることに決まったのは、なんと入学式の二週間前。決まっていた地元の普通の高校を急遽辞退し、強制的にここに入れられた。それもこれも、大抵は中学一年生の頃に『魔法適正』が体に出るはずなのに、私は遅咲きで、まさかの中学三年生の卒業式の日に、自分が魔法の素質ありと判明したのだ。魔法適性のある者は全員、専門の学校に入らなければいけないということで、嵐のようにこの学校に放り込まれた。


 そしてなお続く悲劇。私はなんと、入学式の前日に、急すぎる手続きや寮入りの準備での疲労が祟り、家を出るところで高熱を出してぶっ倒れたのだ。それから寝込むこと一週間。入寮日は遅れ、学校に初登校する頃には、みんなもう友達関係が出来上がっていた。ジーザス。


 しかし、悲劇はまだまだ続く。何故か初対面で担任に嫌われたらしい私は、公開処刑という憂き目にあった。本来なら、入学式の日に個別でやる魔法の軽い実技テストを、クラスのみんなが見ている中、一人でやらされたのだ。魔法適性が出たのもつい最近の私に、テストをこなせという方が無茶である。


『よし、これを初級の移動魔法で動かしてみろ』


 ……動かねーよ、ビクともしねーよ。まず魔法ってそんなん出来るのすげぇって思ったよ。出来なかったけど。


 そんなこんなで、私はクラスから孤立した。


 頑張って友達をつくろうと話かけもしたが、みんな私が魔法がド素人だとみて、まともに会話をしてくれなかった。

 それもそのはず、この桜ノ宮魔法高等学校にはチーム制度があり、一年を通してペアもしくはトリオを組まなければならない。すべての成績はチーム全体の結果で評価され、最下位のチームは留年の危機さえあるというのだ。


 そんなザ・連帯責任の制度があって、誰が好き好んで魔法能力が現時点で0のお荷物と仲良くなる?


 そして私は、わりとイケメンなのに鬼畜眼鏡な担任に、「まだチームが一人もいないならコイツと組め」と言われ、強面美形の赤髪不良とペアを組まされた。入学式に喧嘩どころか魔法バトルをはじめて、生徒を三人病院送りにした札付きの悪。仲良くなれるはずもなく、私は現在、不良君に絶賛虐げられている。


 大好きな親友とも離れ。

 愛する妹弟とも引き剥がされ。

 魔法はろくに使えない落ちこぼれになり。

 クラスメイトにはハブられ気味で。

 むしろちょっとイジメ一歩手前のパシられ気味で。

 担任には理不尽に嫌われ。

 ペアである不良には蔑みの目で見られる日々。


 唯一まともに会話できるのは寮監さんだけで、友達は寮の裏で倒れていた猫だけだ。


 もうこれ以上、下には落ちていかないんじゃないかと思っていた。我慢していれば、いつか少なくてもこの学校に友人が出来て、不良君ともまともなペア関係を築ける日がくるんじゃないかと。


 耐えて耐えて耐えて。


 でもそれは、自ら現状を変えるための行動を、何もしなかったのと同義だと、私は死んでからやっと気づいた。


 ――――そう、私は一回死んだのだ。


 そして私の本当の物語は、一度死んでからようやく始まる。


 これは、私が奇跡的に天使様に延長してもらった、残り寿命六ヶ月の物語なのだ。




読んでくださってありがとうございます!

完全に私の趣味を詰め込んだ小説ですが、お付き合いいただけたら嬉しいです。


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