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「プランス様、大丈夫ですか?」
「心配するな。大丈夫だ」
異次元ゲートを完成させたプランスは肩で息をしながら、疲れた様子を見せた。
その様子に、デファンスが心配な声を掛けるが、プランスは落ち着いた声で返した。
「では行ってくる。父上達を頼んだぞ」
「お任せくださいプランス様」
赤兎馬のようなウォーム、スレイプニル以外のウォームを異次元ゲートから地球へ送り出したプランスは、スレイプニルの背中に跨ると、デファンスに声を掛けた。
デファンスは地面に跪き、深く頭を下げて、プランスに忠誠を誓った。
プランスは城の方に視線を向けると、直ぐに宙を舞って、異次元ゲートに突入した。
城の中の大広間には、このエトワル星の王メビウスと后のランセスが、窓越しに地球に向かうプランスを見つめていた。
「本当に大丈夫でしょうか?」
ランセスはメビウスを見上げながら、不安そうな声をあげた。すると、メビウスはランセスの肩をしっかり抱いて、優しく語り掛ける。
「プランスが連れて行った『ケルベロス』、『スレイプニル』、『ヤマタノオロチ』はプランスがこの星の様々な種類のウォームを交配させて作った、突然変異体だ。プランスの命令しか聞かない最強のウォームだ。それに、『ソルジャー』は体を切られただけでは死なぬ。そのことを、あの裏切り者達は知らぬ。そして、プランスはミュータント最強の魔力を持っている。あの魔力は我より上だ」
プランスは王位継承者の肩書きだけではなく、エトワル星では、遺伝子学の研究者でもある。
地球への異次元ゲートを開くことが出来た彼は、エトワル星にいるウォームを研究して、地球の環境に耐えることのできるウォームや、より強く、残虐性の強いウォームを作り出していた。
それが今回、プランスと共に地球に向かうウォーム達である。
ちなみに地球にいる黒斗と珀は、プランスが連れてくるウォームは見たことがない。
つまり、彼らの弱点や特性を把握していないのだ。
メビウスはそのことを誇らしげにランセスに伝えると、スレイプニルの背中に乗って、異次元ゲートを潜るプランスを見送った。
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その頃「雨降科学研究所」に、霧人と数人の研究者と共にいた珀は、壁一面のモニターを凝視していた。
「こ、これは、一体!?」
珀の隣にいた研究者の一人が驚いた声を上げる。
このモニターはウォームの襲来を表示するものだが、それを知らせる数値は見たことがないものだった。
「珀、何が起きているのですか?」
「霧人様……種別不明のウォームが多数、地球に現れたようです」
珀はモニターを見ながら、手元にあるキーボードを操作するが、異常な数値しか表示されない。
「討伐隊本部に多数のウォームが……それと、AATが訓練を行っている野外演習場にも同じように多数のウォームが向かっています。霧人様、この研究所地下深くにあるシェルターに避難しましょう。必ずお守りします」
珀がそう言って、地下シェルターに向かう、普段は使われない隠し通路を開けようと、コンピュータを操作し始めた時、霧人が珀に声を掛けた。
「……地下へは、私と研究員だけで行きます。珀は討伐隊本部へ向かってください」
「何故です!? 私は霧人様をお守りする役目があります!」
霧人の言葉に珀は、霧人に目を向け、声を荒げてしまうが、霧人は落ち着いていた。
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