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「お願いします。俺を討伐隊に入れる許可をください」
その日の夜。元の通夜から帰宅した光は、家族が寛ぐリビングのフローリングの上で両親に向かって土下座をして頼み込む。
光の右手には、神堂から貰った『討伐隊入隊許可手続き書類在中』と書かれている茶色い封筒があった。
「そんな危険なこと、許可するわけないでしょ!」
当然ながら母親はヒステリックな声を上げて、光を見下げた。
「母さん、少し落ち着きなさい。光、自分が何を言っているか分かっているのか?」
父親が母親と光を諭すように声をかけると、光はゆっくりと顔を上げた。
「勿論分かっています。でも俺は討伐隊に入って、元の仇を取りたいんです」
「元くんのことは可哀想だと思うけど、光には関係ないでしょ!」
父親と母親の顔を交互に見ながら自分の気持ちを伝えるが、母親の顔色は悪く、全身が小刻みに震えていた。
「いい加減にしなさい! あなたはまだ高校生になったばかりなのよ! 勉強はどうするのよ!」
母親は光に向かって、キツイ口調で討伐隊を諦めるように叱り続ける。光は土下座したまま頭上から聞こえる母親の声にじっと耐えていた。
「母さん、もういいだろう」
「あなた……?」
それまで黙っていた父親が静かに口を開いた。
「母さんの言う通り、お前は学生で本分は勉強だ。それに未確認生物との戦いは命の危険も伴う。お前にそれだけの覚悟があるのか?」
父親は母親と違って、穏やかな声でゆっくりと光に話しかける。
「覚悟はあります。だからお願いします、入隊の許可を書いてください」
そう言うと光は再び頭を床につける。
眉間に皺を寄せ、固い表情をしていた父親から、小さなため息が漏れた。
「……3年だ。3年間だけ討伐隊で活動することを許可しよう」
「父さん!」
「あなた!?」
父親の口から飛び出した言葉に、光は顔を上げ、母親は驚きの声を上げた。
「3年間だけ、お前を討伐隊に預ける。元くんの仇を取れなくても、3年がたったらこの家に戻って、勉学に励むんだ。いいな光」
「あなたっ! どうして?」
「今、光を押さえつけても……光は納得しないだろう。またウォームが出現して、闇雲にウォームに挑んでいって他人に迷惑をかけるより、討伐隊で正しい戦闘を学んだほうがいいだろう」
父親はそう言うと光の目の前に跪き、光が持っていた封筒に手をかけた。
そして封筒から書類を出すと、リビングにあるテーブルの上で書類に何やら書き込み、印鑑を押していった。
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