第10話 新なる冒険の切符
甦るのは過去の光景ばかり、いつの頃だろうか。俺が彼女と一緒にいて互いに微笑みあったのは…
───わっちはぬしのことが誰よりも好きじゃった。愛している。
だったら、俺を残して死なないでくれよ。俺といつまでも一緒にいてくれよ。精霊と人間の寿命だと、どう考えても本来ならば俺の方が早く死ぬべきだろう?
なんで、存在が消えるまで力を使うんだよ。迷惑だよ。俺のミスで死ぬべきなのはやはり、自分だろ?
置いていかないでくれよ…
彼女を失ってから、記憶が所々が曖昧だった。気が付いたらいつもの寝床の林にいた。そして、オレは何もせずにボーとずっと惚けていた。そう何ヶ月も。
だって、ここには既に彼女がいないから…
「コラ!? 無視するな!! 折角、来てあげたのよ?」
痛え、急に頭に衝撃が来たんだけど!? そう思って、悲嘆にくれていた頭を現実世界に戻す。木々しかない場所に女?
「いつの間に来たんだ?」
涙で霞む視界。だが、相手の声でわかる。この女はリアだ。
「ずいぶんな、言い方ね。さぁ、こんな所に縮こまっていないで、早く行くよ」
俺を見るなり、手を伸ばしてそういう。
「どこに行くんだよ?」
俺はアイリと思い出が詰まっているこの場所以外に行きたくない。ここにいると落ち着くんだ。彼女とずっと一緒に過ごした場所だから…
「決まってるでしょう? あなたの最愛の精霊に会いによ」
なにを言っているんだ? 彼女は既に。
「そ、そんなことができるわけないだろう?」
もし、彼女にもう一度、会えるとしたら…
いや、そんな淡い期待などするだけ無駄だ。
「精霊が死んだらどこに行くのかしら?」
リアはさもあなたは何も知らないのねと言わんばかりに上から目線のような声で聞いてきた。
「…実体を失った精霊は人間で言うところの死と同義だ。彼女が生き返るわけないだろ!!」
イライラする。彼女は死んだんだ。アイリは戻らないんだ!! 2度とだ!!
「本当にそうかしら? あなたは彼女が死ぬ瞬間を見たの? あなたが見たのはこの世界から消えた姿だけでしょう?」
「ハハハ、なにを言っているんだよ?」
「私についてきなさい。精霊の秘密を教えてあげるわ。このまま、自分の中に閉じこもっているよりはずっといいわよ」
どんな秘密があるんだよ。だが、この自身たっぷりの彼女を見て俺は無意識に彼女の手を取ってしまった。
「良く取ったわね。悪いようにしないわ」
「いったい、そんなに急いでどこにいくんだよ?」
俺の手を引っ張って走り始めたリアにそう聞く。
「この時期じゃないと会えないやつだからね」
「時期? そんな偉い人なのか?」
俺の質問を受けたリアはなにを言っているのと言わんばかりにこう言った。
「精霊のことを誰よりも知っている精霊王の所にいくのよ!」
彼女はさも当然と言わんばかりにそういった。
せ、精霊王だって!? 精霊ですら、滅多に会えない奴らなのにその王に会えるのか? 俺はリアの発言に疑問を持ちながら、彼女に付いて行ったのであった。




