第5話 仮面舞踏会のはじまり
大聖堂は街の創立をした聖人をまつる聖堂として400年程前に建設された。建築以来、その玲瓏で荘厳な雰囲気は今も姿を変えずにとどめている。
教会内は大きなホールがあり、その高い天井が圧迫感を与えずに開放的で優美な空間を作り出していた。
リアが招待状で招かれた貴賓のため、各自の部屋が用意されて俺たちは個別に着替えて下のホールで集まることを約束して別れる。
俺はリアに借りたスーツに早々に着替えホールに向かった。そこには既に待機していた黒い衣服の男たちが並んでいた。
「きがえおわったぞ?」
俺はそいつらに挨拶するために声をかける。俺の声に反応して黒い衣服の男がこっちを見てきた。
「降りてこられましたか」
ホールの壁にもたれるように待っていた黒い衣服の男は俺の前で姿勢を正してそう言った。あれ? リアがいないな。俺はリアがどこにいるか気になってその男に問い掛けることにした。
「リアはどこにいるんだ? まだ着替え中か?」
「はいそうです。今、着替えていらっしゃいます」
黒い衣服の男は俺の質問を肯定した後にまた無言になる。うーん、どうにも、誰とも会話せずに待つのは苦痛だ。
俺は腕輪からアイリを呼ぶ出すことにした。だって、パーティの時のアイリの衣装が見たかったんだ。きっと可愛いだろうな。
「って、服がいつもと同じじゃん!!」
アイリはいつも通りの普段きているワンピースであった。その格好は可愛かったがとても舞踏会に参加するようなものではなかった。こうなったら、アイリに可愛らしい服を着るように薦めるしかない。俺の目の保養と可愛い彼女を見るためだ。
「アイリもなにか着たらどうだ?」
俺はアイリの奇麗な衣装をきている姿を見たかったのでそう言った。いや、言わざる得ないだろう。男としてね。
「わっちはドレスなど着たこともないでありんす。どうせ、裾をふんでこけるのが関の山でありんしょ」
アイリはそう言うと下を向いて黙ってしまう。そんなことない。きっと、ドレス姿も最高だよとアイリに言おうとしたら、後ろから急に声がした。
「皆さん、もう既に集まっておりましたか? 遅れて申し訳ございません。お待たせ致しました」
声に反応して、振り向くとリアがロングの奇麗なクリーム色のドレスにボレロを羽織っていた。
正直、女性の衣服はわからないが可愛い女の姿ならばどんな服を着ても似合うような気がした。ひとまず、彼女の衣装を褒めようとリアに声をかけようとしたが…
「似合っていますね」
リアが俺を見て先に褒めてきた。リアが褒めるのを見ていたアイリが横から正直な感想を言ってきた。
「はじめてぬしがまともな服を着ているのをみたわ」
「ユウ様はいままでお召し物を着たことなかったのでしょうか?」
「少なくともわっちと出会ってから一度も服を気とりんせん」
俺の服装を見てリアとアイリが、笑いあう。失礼な。
「って、俺はすきで服を着てないわけじゃないんだぞ!」
俺の言葉はリアとアイリたちの耳には届かずにそのまま彼女たちは楽しげに会話を続けている。
「返す言葉もございませんね」
リアはアイリを見ながらそう言う。そんなリアを少し見たあとにアイリは口を開いた。
「そちのその言葉遣いに対しても返す言葉がないがの。いつもと違って、丁寧すぎての」
「まぁ、なんのことでしょうか? 私はいつも通りの言葉遣いをしているだけですわよ?」
アイリがリアに対して皮肉げにそう言うとリアが可愛らしい顔で黙殺をした。しばらく俺たちは雑談をしていたがホールが次第に騒がしくなった。
それを見ていた黒い衣服の男が俺たちに仮面を渡す。
ホールが急に暗くなったと思ったら、演奏がはじまった。そして、一人の男が開会式の宣言をする。
「どうやら、パーティがはじまったようね。さてと、作戦開始よ!!」
リアは俺たちを見渡した後に声をそう高らかに告げるのだった。




