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第3話 美少女からは逃げられない

 冒険者ギルドの喧噪を避ける為に俺たちはレストラン羊の狼亭に来ていた。レストランは客がまばらで、俺たちは入り口に近い窓際のテーブルに案内された。


 案内をしてくれたウェイトレスを見送った後、俺は黒い木製の椅子に腰をかけて、


「所で、具体的な仕事内容を教えてくれるか?」


 とリアに問い掛ける。だって、金額の多さに釣られて仕事を引き受けたけどさ。まだ、リアの護衛をしろと言われただけで、どんな仕事内容かまだよくわらないからね。


 前回みたいにタダの荷物運びの仕事で楽だと思っていたら、実は貴重品の運搬で、いきなり襲われるなんてことがあるかもしれないしね。仕事内容の確認は重要だ。


「あなたに使った大変貴重な魔石が他の所で見つかったらしいのよ。私にはその魔石が必要なのよ。もちろん、ここまで言ったんだから、もう断れないわよ?」


「あの俺を復活させたとか言う石関連の仕事かよ!! やりたくないわ! やっぱり、パス。頑張れ!!」


 絶対にイヤだよ! あの石のせいで俺は死にかけたんだぞ。いや、石のお陰で助かったんだけどさ。そもそも、あの石を運搬する仕事をしていなければそんな酷い目にあわなくて済んだんだよ!!


「…あなたのせいであの貴重な石を失ったのよ? それに前回、あなたは貴重な石を使って私のためなら、どんなこともしますって言っていたじゃない?」


「嘘をつくなよ!! 俺がいつそんなことを言ったんだよ!!」


「男が小さいことを気にするのね」


「いや、そこは小さくないからね!!」


 ため息をついて、俺をバカにしたような目で見るなよ! なんて理不尽なんだ。俺の必死の主張すらどうでも良いと無言で主張するようにリアは婉然と微笑む。


「落ち着きなんせ、ぬしよ。今回はちゃんとした依頼のようじゃからな。話を聞いてから判断してはどうだろうか?」


「アイリちゃんもこう言っているし。いいわよね? それにアナタたちは先ほど仕事をするって同意してくれたじゃない?」


「はて? わっちは知らんな。これからおぬしの話を聞いてから判断するという手はずになっておたじゃろ? そうじゃったよな? ぬしよ」


 多数決による攻撃がきましたよ。相手が嘘をごり押ししてくるならば、こちらはトボケるだけだ。さすがアイリ。そもそもまだ正式な契約書を交わしてないからさ。


「そう、私にはアナタたちしか、頼める人がいないのに…」


 突如として、リアが俯いて彼女から悲しげな声音が聞こえてきた。いや、あの輝く雫はいったい? あれは涙!? まさか、言葉の通りで本当に頼めるのが俺たちくらいしかいない内容の仕事だったのか?


「いや、あの、うーん」


 リアの涙。美少女と自らが言ってはばからない奴だが…


 やはり、俺も男だ。女の子の涙には弱い訳でさ。俺はパニックになったよ。頭の中でね。それはもう、自分でもなにを考えているのか把握することが困難な状態になるくらいね。


「なんで、急に泣き出すんだ!? 俺みたいな葉っぱパンツ男だけにできる仕事って? なに? なんの!? わけわからんわ!!」


「ぬしよ。落ち尽きんしゃい。あれは嘘泣きじゃ」


 本当だ。バカみたいなことで取り乱してしまった。そして、バカなことを言ってしまった。反省しないと。


「…バレてしまいましたか」


「そんな演技までして、狡猾な奴だ。そんなことしても無駄なのにな。俺から率直な意見を言わせてもらうとおまえに護衛は必要ないだろ?」


 俺はすぐに仕事の話に戻さないとな。こいつのペースにハマって堪るかよ。


「例の魔石がある場所が問題なんだよね。仮面舞踏会の会場でさ。それも、舞踏会の時のみに宝物庫が解放されてな」


「つまり、俺に泥棒をしろってことかよ!! イヤだよ。俺がギルドで働けなくなるだろ!!」


 前世からニートであったが犯罪はやらなかったと言うプライドがあるんだ。絶対に泥棒なんてしないぞ!


「あなたが一度も、まともに働けてないことは調べてあるわ。ここでガッポリ…」


「帰る。寝床の森に帰るわ!」


 これが涙目というやつか。まさか、こんな年下の女の子に泣かされる日がくるなんて。もうイヤだ。前世はニート。今は冒険者フリータだよ。しかも、一度も給料をまともに貰えてないんだ。


「じょ、冗談よ。ほら、話は最後まで聞きなさい。あなたは私の護衛をしてくれれば良いのよ。別働隊が実際の作業をするわ」


 軽い冗談よって言って微笑んでいるが、別働隊が泥棒するのかよ。犯罪に関わるのかよ。どうにかして、この仕事を断る方法はないものだろうか…


「なるほどね。おまえが引き連れていた黒服たちは別働隊になるから動けないと。でもさ、俺よりも強い奴なんて腐る程いるぞ?」


「そうね。本当に腐る程いるわ。そんなことは知っているのよ」


「だったら、他の奴に頼めよ。なんか犯罪に加担するのは遠慮したいんだが…」


 そこまで、さらっと言うならば他の奴を誘ってくれよっと言って、俺が去ろうとしたら、


「だって、マルセル教団を敵に回す程の気概ある人なんって私は他にしらないもの」


 と可愛らしい顔を勝ち気に微笑ませてリアはこちらを見てきた。


「…この前の神父はマルセル教団だったの?」


 や、やっちまった。マルセル教壇って新興宗教団体で狂信者が多い団体だよ。教団への勧誘はもちろんのこと、教義に反する人は滅せよというとんでもない教えの宗教団体だ。そこの司祭を殺したことにされたということは…


「風の噂では、マルセル教団の司教様を殺した葉っぱ一枚の男は教団から命を狙われているらしいわ。誰かはわからないけどね。でも、そんな人物であろうとも、私に協力してくれたらね。助かるのよ。わかるわね?」


 その微笑みはまるで小悪魔。いや、悪魔と言っても過言ではない程に邪悪に見える。


 もちろん、そんな状況で俺に拒否権等ある筈もなく。俺は新しい仕事を受けることにしたのであった。

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