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最後の宿題  作者: 深月咲楽
10/13

第10章

(1)


 本部を訪れた私達を、高梨刑事は快く迎えてくれた。

 私達は再び、先日の応接セットに腰掛けている。

「庄野弁護士に関する情報、本当に助かりました。今、裏をとっています。明日には、事情をお聞きするために、こちらに来て頂くことになるでしょう」

 高梨刑事は、私達の前にコーヒーを置きながら話し始めた。

「そうですか。よろしくお願いします。それで、他に何か、新たな情報は入りましたか?」

 洋介が尋ねた。

「例の『蛍雪の友』の件ですが、探偵社に資料を提出させました。ご覧になるでしょう?」

「ええ、よろしければ」

 洋介が頷くと、高梨刑事はテーブルの上に茶封筒を置いた。

「失礼します」

 洋介がそれを手にとる。中からは、A4版のコピーが何枚か出て来た。

 1枚目は、『蛍雪の友』の概略。この団体は、1979年に結成され、1984年に解散している。集団生活を通じて、不登校等、問題を抱える子供達の社会復帰を助ける、というのが目的だったらしい。

 2枚目からは、その幹部1人1人についての資料になっていた。

「全部で5人です。誕生日から本籍地、それから学歴、家族構成、病歴、ありとあらゆることが調べられています」

 高梨刑事が説明する。

「代表は、芦田貞二か」

 洋介が、そのページを見ながらつぶやく。

「『ありあけ会』の代表も、確か芦田何とかって言ってたわね」

 私は、洋介の手元を覗き込んで尋ねた。

「その、芦田っていう人の家族構成は、どうなってるの?」

「妻、佳子。1990年『ありあけ会』を結成、同代表、だってさ」

 洋介が答える。

「じゃあ、その『蛍雪の友』っていうのは、『ありあけ会』の前身だったってこと?」

「実質上は、そう考えてよいでしょうね」

 高梨刑事が頷く。

「他のメンバーは、どうなってるの?」

 洋介は、コピーをゆっくりとめくっていった。

「特に聞いたことがあるような人はいないな」

 そう言いながら、最後の1枚に辿り着く。

「おい、真生」

 洋介が、驚いたように私の顔を見た。

「叔父さんの名前、『山川亮』だったよな?」

「父の名前? そうよ、亮よ」

 洋介がそのページを私に見せた。

「プロフィール、見てみろよ」

 私はコピーを手にとり、詳しく内容に目を通した。――妻、智子。娘、真生。1984年7月、妻、智子と共に、東京都内にて交通事故で死亡。

「間違いなく、父だわ」

 私が顔を上げると、高梨刑事が口を開いた。

「やはり、そうですか。お名前が一緒だったので、そうではないかと思っていたんです」

「もう一度、見せてくれ」

 洋介が、私からコピーの束を受け取る。しばらくパラパラとめくっていたが、やがて低い声で言った。

「高梨さんは、この内容、見られましたか?」

 高梨刑事は、黙って頷いた。

「何か、おかしな点でもあるの?」

 私の質問に、洋介が頷く。

「芦田貞二をのぞく4人全員が、1983年から84年の間に亡くなってるんだ」

「え?」

 私は思わず聞き返した。

「田口良文、1983年10月、茨城県内の病院にて大腸癌で死亡。飯田孝則、1983年12月、静岡県内の別荘にて睡眠薬を飲み自殺。それから村越学、1984年5月、沖縄県内にてスキューバダイビング中に事故死。そして、叔父さんと叔母さん」

 内容を読み上げると、洋介は、気遣うように、そっと私の方を見た。

 私は、何を言っていいかわからず、黙ったままでいた。

「こんなに相次いで亡くなるなんて、異常ですよね」

 洋介が、高梨刑事に話し掛ける。

「私もそう思いましてね。田口良文氏以外は、皆、いわゆる変死ですから、それぞれの担当の警察に連絡して、調べてもらったんですよ。でも、特に問題はなかったらしく、これといった資料も残っていませんでした」

「同じ団体で幹部をしている人物が相次いで死んでいるのに、警察は何の捜査もしなかったんですか?」

 声が震えていることに気付き、とまどった。両親の死に、疑問など抱いたこともなかったのだ。私は、自分の気持ちが整理し切れずにいた。

「おっしゃる意味はわかります。ただ、これらの件では、亡くなった場所が全て違いますのでねえ。解剖などで特に疑問が持たれなかった場合、管轄を越えて情報をやりとりするということは、難しかったでしょう」

 私の気持ちを察したのだろう、高梨刑事が、柔らかい声で言った。

「それぞれのところで、別々の事件として処理されてしまったわけですね」

 洋介が確認する。しかし、私はどうしても納得ができなかった。

「処理されたって……。もう一度調べ直すことはできないんですか?」

 思わず口調がきつくなる。

「どの事件も、もう時効を迎えていますからね。例え調べ直して何か事実が出て来たとしても、それで誰かを捕まえるわけにはいきません」

 胸が熱くなり、視界がぼやける。洋介にハンカチを渡されて初めて、それが涙のせいだとわかった。

「現在の段階では、他殺という証拠は、全く出て来ていません。今、それぞれの方の生命保険がどうなっていたか、調査中です」

「生命保険、ですか?」

 私が、ハンカチを握りしめて尋ねると、洋介が答えた。

「生命保険が下りる時は、かなり綿密な調査が行われるからね。死因に少しでも疑いがあった場合、保険金は下りないんだ」

「それに、受取人がどうなっていたか、という点も重要になってきます」

 高梨刑事が補足する。

「なるほど」

 洋介が頷いた。

 と、その時、高梨刑事の携帯電話が鳴った。彼は、それを耳に当て、うん、うん、と頷いている。私達は、黙って彼の様子を伺っていた。

「郷田からでした」

 高梨刑事は、電話を切るとそう言った。

「保険金は、全て正常に支払われています。受取人も、それぞれの家族になっていた。そして、皆さん、遺言状などにより、『蛍雪の友』にその保険金の大部分を寄付されているそうです。ご遺族の方々も協力的だったようで、特に何の問題も起こらなかったみたいですよ」


(2)


「遺言状の執行者は、どうなっていますか?」

 洋介が尋ねる。

「それぞれ、異なっていますね。山川氏の遺言状は、庄野弁護士によって執行されています」

 その当時から、芦田夫妻と庄野弁護士の間には関係があったのだ。私達が頷くのを見て、高梨刑事は続けた。

「当時、『蛍雪の友』に通っていた方達にも、色々とお話を聞いてみたんですよ。でも、皆さん、口を揃えて、大変よい施設だったとおっしゃるんです。突然、解散することになり、驚いたと。すぐに他の施設を紹介されて、それぞれに移って行ったらしいですが」

「解散した時に、何か説明はあったんですか?」

 私が尋ねると、高梨刑事は答えた。

「金銭面で立ち行かなくなった、ということでした。芦田氏が、泣きながら詫びたらしくて、ここも何とか収まっていますね」

「幹部達の死によって得られた寄付は、どのくらいあったんですか?」

「1億近くになるようです」

「1億?」

 私達は、顔を見合わせた。

「それだけあっても、運営は不可能だったんですか?」

「たしかに、5000万ほどの負債は抱えていたようですがね」

 残りの金銭は、芦田夫妻が着服したのだろうか。先日のパーティで見た、彼らの楽しげな笑顔が目に浮かぶ。込み上げて来る怒りを、目をつぶることでようやく押さえた。

「いずれにしても、親父と叔父の遺言状、同じパターンだったってことですね」

「父の保険金は『蛍雪の友』に寄付され、伯父さんの遺産も、その後身である『ありあけ会』に寄付されることになっていた」

 洋介が、コピーをテーブルに置く。高梨刑事がそれを受け取り、元の封筒へと戻した。

 余命幾許もないと知った伯父が、なぜ両親のことを調べ直そうとしたのだろうか。伯父は、両親の死に何か疑問を感じていたのだろうか。だったら、なぜ一言、私に話してくれなかったのだろうか。

「それからもうひとつ、これは『蛍雪の友』とは関係がないのですが」

 高梨刑事が、手帳を取り出して話し始める。私は顔を上げた。

「何ですか?」

 洋介が尋ねる。

「友川助教授のことなんです」

「友川さんの?」

 高梨刑事が頷いた。

「実は、製剤機器のメーカーから、賄賂を受け取っていたようなんです」

「何ですって?」

 洋介が身を乗り出す。

「大学内の一部の職員の間では、1年程前から噂になっていたようですよ」

「親父は知っていたんですか?」

 洋介が尋ねる。

「ご本人がおられませんので、何とも言えませんね」

「友川さんは何て?」

「幸三さんからは、特に何も言われていないと、おっしゃっています」

「親父はそういうことが大嫌いだったから、もしも知っていたとしたら、ただでは済まなかったでしょうね」

 私も頷いた。

「最後の食事会の時も、友川さんのことを後継者って言っていたし、知らなかったと考えていいかもしれないわね」

 高梨刑事は、しきりに頷いている。

「それで、実際に金銭の授受はあったんですか?」

 私が尋ねると、高梨刑事は苦笑した。

「メーカーの方の家宅捜索はしたんですが、それらしい証拠は得られませんでした。ただ、ここ数年、そのメーカーの機材が多く購入されているのは事実です」

「友川さんの方は?」

「全面否定です。現在の段階では、確固たる証拠はありませんからね。さらに捜査を続けて行きますとしか、今は答えようがありませんね。」

 私達は腕を組んだ。高梨刑事が、ため息混じりに続ける。

「幸三さん殺害の件で、我々が何度もお訪ねしましたからね。細心の注意を払ったつもりではいたんですが、人の口には戸は立てられません。学内では、賄賂のことが教授にばれそうになり殺害したのではないか、なんて噂も流れているようです。大学の上の方々も知るところになってしまって、近いうちに審査会が開かれるらしいですよ」


(3)


 夕食をとっていると、洋介の携帯電話に、高梨刑事から連絡があった。私達が本部を訪れてから、2日が経っている。

 予定通り、庄野弁護士を任意で取り調べたが、伯父の死亡推定時刻にはアリバイがあり、釈放したとのことだった。

「『蛍雪の友』については、何て?」

「叔父さんの遺言状を作成したことは認めたけど、幹部達の死については、知らぬ存ぜぬの一点張りだったってさ」

「じゃあ、このままで終わりなの?」

 私の質問に、洋介は首を横に振った。

「それぞれの警察で、再捜査が行われることになったって。今、保険金絡みの事件が多いだろ? かぎつけたマスコミも、ちょっと騒いでいるらしいぜ」

「でも、証拠が残っているのかしら」

「それは、警察に任せるしかないな」

 しばし、沈黙が流れる。

 今は考えても仕方がない。

 私はお箸で小さくした春巻きを、口に放り込んだ。洋介は、つけ合わせのブロッコリーを箸で突いている。

「ねえ、ずっと不思議だったんだけど」

 洋介が、顔を上げた。

「伯父さんが殺されたの、どうしてあの時間だったのかしら」

「どういう意味だ?」

 洋介が尋ねる。

「洋ちゃん、伯父さんから何て聞いてたの? 食事会の夕食が終わった後で、遺言状の話をするって言ってた?」

「いや、時間までは聞いてないよ。食事会の時にって、そう言ってただけだったぜ」

 私は頷いた。

「でしょ? 伯父さんは、たまたま夕食の後で話をするつもりだったようだけど、もしかしたら、食事会が始まってすぐに、遺言状の話をする可能性だってあったわけよね?」

「なるほどな。俺が犯人なら、食事会が始まる前に殺害してるな」

「真由美さんが犯人だって、同じでしょ?」

「それじゃあ、動機が遺言状っていう線は消えるってことか」

 私は頷いた。

「時間を中心に考えてみたら、見方が変わるかもしれないな。だって、睡眠薬は予め仕込まれていたわけだろ? 親父が眠気を覚える時間帯っていうのは、事前に予測できたんだ。あえて、あの時間に照準を合わせたとしか、考えられないもんな」

「たしかに、後で起こしてくれって言った伯父さんの言葉は、犯人にとって計算外だったかもしれないわ。でも、起こしに行って伯父さんが熟睡していれば、そっとしておくでしょ? 食事会は、いずれお開きになる。それからゆっくり殺害した方が、目撃される可能性は低くなるじゃない?」

「その通りだよ。やっぱり犯人には、あの時間を選ぶ必然性があったんだ」

 洋介が、納得したようにお茶を飲む。

「それに、青酸ガスっていう手段も、どうかと思うのよ。気体なんて取り扱いも大変だし、ひとつ間違えば、すごく危険でしょ?」

「確かにな。青酸を発見した学者も、誤って青酸ガスを吸って死んだらしいし」

「事件の後すぐに持ち物検査をした時にも、入れ物も装備も何も見つかっていないのよ」

「でも、胃から青酸反応は出てないんだぜ」

 洋介が、私の考えを察してか、そうつぶやいた。

「青酸ガスじゃないわ。同じように見えて違う方法を、犯人はとったのよ。そうに違いないわ」

「違う方法ねえ。でも、青酸は注射したって死なないし……」

 洋介が腕を組む。

 そこへ、孝子がコーヒーを持って現れた。事件の話は、とりあえずここで終わりにすることにした。


(4)


 自分の部屋に戻ると、私はパソコンの電源を入れた。ワープロソフトを呼び出し、新規のページを開ける。

「整理してみなくちゃ」

 独り言を言いながら、相田真由美と打ち込む。

「動機」

 打ち込んでから少し考えた。遺言状の可能性は低い。他に何かあるだろうか。

「離婚の件かな? 知っていればだけど」

 とりあえず、離婚と打ち込む。

「これだけか。それから、アリバイは……」

 行を変え、無、と入れた。

「あと、睡眠薬への摺り替えは可能。ただし、全てを替えていた点が疑問」

 次は相田洋介。動機はなし。でも、アリバイもない。

「薬の摺り替えも、可能っていえば可能よね」

 それから友川助教授。動機は、真由美をとられたという逆恨み。もうひとつ、賄賂がばれることへの危惧。

「動機は一番、それらしいわね」

 独り言を言いながら、アリバイ、無、と打ち込んだ。

「ただ、摺り替えがなあ」

 確かあの日、友川助教授は食事会の始まる少し前に、相田家に現れた。その時には、既に伯父は着席していたことを考えると、薬を摺り替える時間はなかっただろう。

「それから、孝子さんかあ」

 吉田孝子。動機は、庄野弁護士に頼まれて、くらいしか思い付かない。

「こんな危険な依頼まで、受けるかなあ」

 手を休めて考え込む。しかし、他に動機は思い当たらない。

「アリバイは、無、と」

 薬の摺り替えは、もちろん可能。

 さて、次は庄野弁護士だ。動機について考える。

「あそこで伯父さんを殺害したとしたら、遺言状が無効になることは、わかっていたはずよね」

 遺産の寄付を逃してでも、伯父を殺さねばならない必然性があったのだろうか。

「やっぱり、『蛍雪の友』だわ」

 伯父は、探偵社を使って、幹部達の不審な死を知った。前々から疑問を抱いていた妹夫婦の死に、庄野弁護士が関わっていたと考え、詰め寄ったとしたら……。

「あの時間に伯父さんを殺害したのは、自分のアリバイを確実にするためだったのかも」

 時間を指定して、孝子に殺害を実行させる。時間をずらすわけにもいかず、彼女はあえて危険を冒して実行した。薬の摺り替えだって、孝子にさせれば十分可能だ。

「辻褄は合うわね」

 しかし、遅くとも去年の4月の段階で、「蛍雪の友」のからくりに気付いていたであろう伯父が、その後、なぜ自ら進んで、後身である「ありあけ会」への寄付を申し出たのか。

「よくわかんない」

 そうつぶやき、複雑な思いで目を閉じる。

 1人1人見て行くと、最も条件が揃っているのは、庄野弁護士のようだ。伯父とはいい友人関係にあると信じて、疑ったこともなかったのに。保身のためなら、人間はそんなにも冷酷になれるものなのだろうか。

 言い様のない虚しさを感じ、胸がずきずきと痛む。

 その時、背後でドアがノックされた。

「はい?」

 目を開けて返事をすると、顔を出したのは洋介だった。

「おお、ごめんごめん、仕事中だったか?」

 そう言いながらも、部屋へ入って来る。そして、パソコンを覗き込んだ。

「相田真由美? 何だよ、これ。親父の事件じゃないか」

「そうよ。混乱しちゃったから、整理してたの」

 私は無理矢理笑顔を作り、そう答えた。洋介は、ふうんと言いながら、内容に目を通している。

「おい、何で俺まで入ってるんだよ」

 洋介が、私の頭に手を置いて、ぐりぐりと回す。

「痛い、痛い。仕方ないでしょ。関係者は全員書き出してるんだから」

「だったら、お前のことも書いておけよ」

 洋介はふざけた調子でそう言うと、私の後ろから手を延ばし、キーボードを叩いた。今は、洋介のこの明るさに救われる気がする。

 山川真生。動機。そこまで打って、彼は私の顔を覗き込んだ。

「親父を恨むようなことがありましたか?」

「ありません」

「そうか」

 そう言って、無、と打ち込む。

「アリバイは、有」

「薬の摺り替えは無理よ。私がアパートからここに着いた時、伯父さんは既に、下のソファに座っていたもの」

 私が言うと、洋介はキーボードから手を離し、ベッドに腰掛けた。

「お前は確実に犯人じゃなさそうだけど、小説なんかでは、そういうのが一番、怪しいんだぜ」

「確かにね」

 私は笑いながら椅子を回転させ、洋介の方を見た。

「それにしても、みんないい人だって信じてたのに、こうやって見て行くと色々あったのね」

「親父が亡くなったことで、隠されていた部分が全部表に出ちゃったな。親父、腹心の部下にも何十年来の友人にも、裏切られてたんだぜ。おまけに、親切にしていたお手伝いさんにまで……。何も知らずに亡くなったと思いたいよ」

 私もそう思いたい。しかし、伯父はきっと、これらの残酷な事実を知らされていたはずだ。

 洋介はベッドにごろんと横になると、辛そうに目を閉じた。

「洋ちゃんは、私のこと、裏切ったりしないよね?」

 思わず口に出た言葉に、自分自身、驚く。私は一体、何を言っているんだろう。

「馬鹿なこと、言ってんじゃねえよ」

 洋介が起き上がった。

「親父もお袋も、叔父さんも叔母さんも、みんないなくなって、身内って呼べるの、俺とお前の2人だけなんだぞ。お互いが信じられなくなったら、何を支えに生きて行ったらいいんだよ」

「ごめん」

 洋介の剣幕に、私は素直に謝った。

「わかればいいんだよ、わかれば」

 洋介は少し照れたような顔をして立ち上がり、おやすみ、と言って部屋を出て行った。

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