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第30話 劇『桃香ちゃん』後編

前回の桃香ちゃんのあらすじ。

川上から流れてきた大きな桃を川で洗濯していたおばあさんが持ち帰り、おじいさんが桃を切ってみたら女の子の赤ん坊が産まれた。

その女の子を『桃香』と名付け、数年に渡って、育てて鬼ヶ島に行くという桃香をおじいさんが修行をつけてくれました。

そして、鬼ヶ島に行く道中、犬、サル、キジに出会い、鬼退治をするのに協力してくれました。


早速、鬼退治する桃香達。桃香達はとても強くて鬼を全て倒しました。

でも、実はもう一人、その鬼達のボスである青鬼がいました。

その青鬼から攻撃され、なんとか逃げるものの、その攻撃の強さはハンパではありません。さてはて、桃香達はとても強い青鬼を倒せる事が出来るのでしょうか?

おや?早速、桃香達が戦っています。その戦いを見てみましょう。


「ゲッゲッゲッ。まとめてかかって来い」

「むぅ~!ムカつく!サルさん!犬さん!アイツやっつけよう!」

「うん!キジさん!」

「桃香ちゃんはそこで見ててよ!ボク達でアイツやっつけるから!」

犬とサルとキジは青鬼に何かをするようです。キジは再び空高く舞い上がり、しばらくすると回転させながら、キジは急降下します。

「よしっ!いくよっ!犬さん!」

「うんっ!サルさん!」

犬とサルは横に並んで青鬼に向かって走っていきます。

「ほう!真っ正面から来るのか!なかなか新しい奴らだ!オレもその想いを受け止めようではないか!」

青鬼は両手を広げ、犬達の攻撃を待っています。


「いまだ!」

犬の合図で犬とサルは青鬼の右側と左側の位置にそれぞれつきます。

「うぬぅ?!」

青鬼は犬とサルを見るために左右見渡します。

「ここだぁ!」

空にいたキジは青鬼の隙をついて、青鬼の死角から攻撃します。

「上からか!こざかしい!」

「よっしゃ!ここだぁ!皆ぁ!」

青鬼はキジを見上げる為、犬とサルから目を離します。

「林崎神明夢想流居合術奥義! 横雲ぉ!」

「噛み砕くっ。ボクのキバでっ!」

「貫けぇっ!私のクチバシでぇ!」

サルは刀で青鬼の腹部を。犬は自慢のキバで青鬼の太ももを。キジは青鬼の肩にクチバシで攻撃します。

「うぬぅおぉぉぉ?!!」

青鬼は犬達の攻撃に大声をあげて痛がり、その場に倒れました。


「や、やったぁ!ボス倒した!」

「わ、わぁい!ヒーローになったよ!」

「さ、サインどうしよーっ!まだ考えてないよーっ!」

青鬼が倒れた事により、喜びを分かち合うお供達。でも、青鬼はケロッとした表情を浮かべて立ち上がりました。

「ゲッゲッゲッ。なかなか気持ちいいマッサージであったぞ?あまりにも気持ちよくて雄叫びをあげて寝てしまった!」


そんなケロッとした青鬼を見たお供達は

「あ、あんなに攻撃したのに・・・」

「ゆ、夢だよ・・・きっと」

「うんっ。そうだよ、夢に決まっているよ」

信じられないという表情を浮かべて、青鬼を見つめます。

「ゲッゲッゲッ。肩もみに腹の毛の手入れに太もものマッサージ・・・今まで感じた事の

ない気持ちよさであったぞ?感謝する!だがな、戦いの前にこんな仕打ちを受けるなんて、この青鬼、自分で自分を恨むぞ!」


青鬼は恐ろしい形相で桃香を睨みつけ金棒を桃香に向けて、桃香を挑発するようです。

「ほれ、そこのちんちくりんも来い。倒してやる」

青鬼に『ちんちくりん』と呼ばれた桃香の眉間にしわが寄ります。どうやら、ムカついたようですね。


「だ、誰がちんちくりんだぁー!」

「む?ちんちくりんではなくて、なんというのだ?ちんちくりん」

「むぅーっ!またちんちくりんって言ったー」

桃香は可愛らしく頬を膨らませて怒っているようです。いいえ、スネています。同じ意味ですけど。

「「か、かわいいっ♪」」

スネている桃香をサルとキジは頬に朱を染めて見惚れています。ちなみにそのセリフは台本に無かったそうです。


「ゲッゲッゲッ。この青鬼に文句を言うのか?なかなか新しいちんちくりんだ!」

「ちんちくりんちんちくりんうるさーい!」

「まるで子供のケンカだよ・・・」

青鬼と桃香の口喧嘩に呆れる犬は途方にくれたそうな。


「むぅ!怒ったもんね!私がお前を倒してやる!」

「ゲッゲッゲッ。それは面白くて新しい冗談だ!」

どうやら口喧嘩は終わったようです。


青鬼と勝負の決着をつける為に桃香は、青鬼に向かって

箭疾歩せんしっぽ!」

上半身と下半身を捻り、腰を落として順手を腰に、逆手を肩の前に構えて、一気に前方に飛び掛る秘伝の歩法を用いて突くという技を青鬼の鳩尾に当てます。


「ぬぅぅ?!」

青鬼は鳩尾に攻撃が当たったので、前のめりになります。

裡門頂肘(りもんちょうちゅう)!」

八極拳が得意とする、肘による攻撃法。肘を下から突き上げるように立て、踏み込んで放つ技を前のめりになった青鬼のアゴにクリーンヒットしました。

「おごっ?!」

アゴを殴られた青鬼は後ろ向きで吹っ飛びそうになります。


連環腿れんかんたい!」

最初に思い切りつま先を振り上げて相手の頭部を狙った上段の蹴り上げをくりだし、その足を下げるときにその反動でもう一方の足を振り上げてもう一度上段の蹴り上げを出す技を二回とも青鬼のアゴに命中させます。


桃香は連環腿れんかんたいの反動で青鬼の真上まで移動し、桃香は空中で更に追撃するようです。

冲捶ちゅうすい!」

拳を作って腰を落とし、中腰のような姿勢でドンと叩きつけるようにして空中だけど地面を蹴りだすような仕草を見せ、胸を開き体を急激に1/4回転し、青鬼の顔面に命中させ

「鬼ヶ島と共に砕け散れぇ!」

そのまま青鬼を地面に叩きつけます。


ドコォォ!という青鬼の後頭部に固い地面の激しい衝撃の音と共に、その地面には青鬼の後頭部の衝撃によってヒビが数本も生じてその長さは数メートルにも渡りました。

『や、やったー!!!』

お供達は桃香が青鬼を倒したという事を信じて、バンザイして喜んでいましたが、桃香は釈然としない表情を浮かべています。

「!!?」

桃香の拳は青鬼の舌により、阻止されたようです。まだ青鬼を倒しきってはいません。


「ふっ!」

「きゃあ!」

青鬼の息の風圧により、桃香は吹っ飛びます。なんという強さでしょう。さすがは鬼達のボスという訳でしょうか。

「さっきから腹やアゴばかり撫でよって・・・戦いの最中だというのに、この青鬼を弄ぶとは何事だ!」


桃香の攻撃は青鬼には全く効いていません。

「な、なんだと?」

「や、やっつけたと思ってたのに・・・」

「わ、私もだよ・・・」

お供達は頑丈な青鬼を見て驚愕の表情を浮かべています。


そんな頑丈な青鬼はしゃがみこみ、手で地面を堀り、沢山の小石を手にします。お供達は『?』という表情を浮かべて青鬼の様子を浮かべています。一体、何をするのでしょうか?

「ふんっ!」

青鬼は桃香達に向かって沢山の小石を投げつけます。その小石は青鬼によって、散弾銃のように素早くて強いものとなって桃香達を襲います。

「あ、危ないっ!」

「「桃香ちゃんっ!」」

お供達は桃香をかばい、青鬼による攻撃をまともにくらってしまいます。

「み、皆ぁ!」

桃香は青鬼によってケガしたお供達に駆け寄り、心配しています。それもそうでしょう、仲間が倒れていますから。


「ゲッゲッゲッ。たかが砂遊びで容易く倒れるとは未熟者だなぁ・・・そんな仲間を連れているお前は新しい!何故なら「うるさいよ」何?」

青鬼のセリフを遮って桃香はうるさいと言い放ちました。

「ほら・・・きび団子を食べててよ。その間にアイツやっつけるから」

『う、うんっ』

桃香はお供達にきび団子を与え、ケガをしているお供に休息を与え、青鬼に一人で立ち向かうそうです。

「ゲッゲッゲッ。お前一人でこの青鬼に勝てるというのか?」

「情けないよ・・・私は私を許せないよ・・・仲間を守れないで何がリーダーだ・・・許せないよ」

「む?人の。いや、この青鬼の質問に答えないとはっ!なかなか度胸のある新しいヤツだ!」

桃香は青鬼を倒すつもりなのでしょうか、ゆらりゆらりとした足取りで青鬼に近づきます。

「むっ?お前も真正面から来るのか!いや、横から来るのか!ならばっ」

青鬼は自分の背丈よりも大きくて重い金棒をぶんぶんと振り回します。その振り回した風圧で、竜巻が生じています。

「ゲッゲッゲッ。こうすれば近づけまいっ!」

活歩かつほ

地面を氷の上を滑走するように滑りながら移動、一瞬で間合いを詰めてしまう特殊な歩法で青鬼の真正面の位置まで移動します。

「!!?」

一瞬にして移動した桃香を見た青鬼は驚愕な表情を浮かべます。


冲捶ちゅうすい

拳を作って腰を落とし、中腰のような姿勢でドンと叩きつけるようにして地面を蹴りだし、胸を開き体を急激に1/4回転し、青鬼の鳩尾に攻撃します。

「こざかしいわっ!」

青鬼は金棒で桃香の拳を狙い、ブゥオン!という強い風圧と共に攻撃します。そして、金棒は木端微塵になります。


「!!?この金棒を壊すとは!この青鬼も拳で応えよう!」

青鬼は金棒をポイッと捨て、右手のストレートを背丈が高いので上から振り下ろします。桃香にくらわせようとします。その青鬼の攻撃を桃香は

崩捶ほうすい

崩捶ほうすい。受けの突きに上から両腕をかぶせて受けたまま、自分の身体を下げてなめるように引き落として相手のバランスを前のめりにするように崩し、相手の顔を裏拳で打ち、更に身体を落として中段に肘打ちする技である!

「ぐはぁ!!」

青鬼は大ダメージを受けて倒れて失神してしまいました。


「はぁはぁ・・・よし、私達の勝ちだぁ!」

桃香は自分の勝利を宣言し、右手を高らかにあげます。

「こ、今度こそ勝てたんだ!やったー!」

「私達、有名人になれるー!」

「ふぇぇ~。まだサイン考えてなかったよ~」

お供も喜びを分かち合い、バンザイしています。どうやら、本当を退治したそうな。


「よしっ!村の人達を解放しようっ!皆、手伝って!」

『おおっ!』

こうして桃達は鬼に捕まったという村人達を解放して、村人達は大喜び。鬼ヶ島にいる鬼達は桃香達の存在を恐れ、どこかの森の奥にひっそりとくらしていったそうな。


「これからは平和じゃー」

「あの子達は勇者じゃー」

鬼がいなくなったおかげで村人達はいつまでも平和で暮らせていましたとさ。めでたしめでだし。


ーーーーーーーーーーーーー

俺達の劇は終了した。

いやいや、今更だが、こんな桃太郎いいのか?なんだか子供らしくない内容なのだが、まるで映画のような物語だったのが・・・

文化祭の司会を務める実行委員の女子はマイクを持ち、近くにいた複数の保育園児らしき人物に近づき、マイクを近づけ、どうやら感想を求めているらしい。


「『あ、あのねっ。も、桃香ちゃんがスゴかった!スゴいのっ』」

「『犬さんもサルさんもキジさんもスゴかったけど、やっぱり桃香ちゃんスゴいのっ』」

「『も、もう一回見たいっ!パンチのやつとか、キックのやつとか!』」

どうやら、今やった劇を気に入ってくれたらしい。特にアクションが大絶賛なのだ。

まぁ、俺が実際に技したら会場は『おおっ!』という感嘆の声を上げていたからな。


「『そうだよねっ。私もビックリしちゃった!えーと、西園寺・・じゃなかった。桃香ちゃ~ん?この子達に何か技見せてくれないかな?また喜ぶかもしれないからっ』」


実行委員の女子は俺に目線を向けて、何かアピールせよという命令を下したので、やってみる事にした。

「はいっ。では・・・」

会場はしん、と静まり返るが、何故そんなに静かになるのだ?とりあえず、アクションでの一番会場の歓声が大きかった連環腿れんかんたいの技を試してみる事にした。

連環腿れんかんたい!」

最初に思い切りつま先を振り上げて相手の頭部を狙った上段の蹴り上げをくりだし、その足を下げるときにその反動でもう一方の足を振り上げてもう一度上段の蹴り上げを出す技を誰もいない空間でやってみると


『おお~っ!!』

体育館内の人々は歓声をあげて、カメラのシャッターを切る。

『もう一回!もう一回!もう一回!もう一回!』

保護者の皆や園児のアンコールが体育館内に響く。そのアンコールを受けた俺は

「はいっ、もう一回ですね!連環腿れんかんたい!」

嬉しくてもう一度連環腿れんかんたいをやってしまった。そして会場内の人々は再びカメラのシャッターを切り、俺の姿を納める。

「『はいっ!これで五年生による劇、『桃香ちゃん』が終了いたしましたっ!拍手っ』」

ワァァァ、パチパチ。保護者達や園児達による拍手喝采により、俺達の文化祭は大成功で終了したのであったーーー。








作中の青鬼は、とある漫画のキャラをモデルにしてみました。


ここでは、その漫画の名前を伏せさせていただきますが・・・こんな桃太郎を子供たちに見せてもいいのかな?と思う私。


でも、こんな桃太郎をいつの日か書いてみたかったので、悔いはないですね。

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