第18話 西園寺道場の生徒達と美仁香ちゃん
爺さんとの組み手は爺さんの圧勝で終わり、帰ろうとするのだが
「ワシらの練習を見てみるか?ひょっとしたらワシを倒すヒントが隠されておるかもよ~?美仁香ちゃん」
俺にとっては誘惑な誘い。これをイヤとは言わないし、イヤと言う理由なんて微塵もないので、皆の邪魔にならないように隅で女の子座りで見守る事にしたのだ。
何故女の子座りかって?それは楽だからだ。それ以上でもそれ以下でもないのだ。
「へぇ・・・投げだけじゃないんだ・・・合気道」
俺は隅で皆の練習を見守ると、突きの練習だとか関節技とかを見て、今までは投げ主体の合気道だという考えをしたのだが、それを改めたのだ。合気道でも突きとかするんだな~。
「ねぇねぇ、ちょっといいかな」
「にゅあ?!」
必死に皆の練習を見守る中、突然横から話かけられ、変な声を出す俺。もう、変な声を出さずにはいられない俺になってしまったのだ。
「な、なに?」
おっかなびっくりの表情を作り、声のした方向へと首を動かし、声の主である女子の姿を目にしたのだが、女子は二人いたので誰が喋ったのか分からなかったのだ。
「はぅっ、ヤバいヤバいっ」
「わたしもヤバいって」
何が危険なのか知らないが、とりあえず危険を感じる女子達。
「ね、ねぇ、お名前は?何て言うの?」
女子は俺の名前が聞きたいご様子。俺は自己紹介する事にしたのだ。
「西園寺美仁香っ、小学一年生だよ?」
「「さ、西園寺?!!」」
二人の女子は声を揃えて驚きの声をあげるのだが、多分爺さんと同じ苗字なのでまさか!みたいな事を思っていないだろうな?
「ま、まさか、先生のお孫さんなの?」
女子の一人・・・これを女子Aと仮定しよう、女子Aは俺と爺さんの血縁関係を聞いてくるので、頷く。
「そ、そうなんだっ・・・通りで強い筈だよ」
もう一人の女子・・・これを女子Bと仮定しよう。女子Bは爺さんの血縁のお陰で俺は強いと確信した様子。俺自信の努力は認めないのか?こいつら。
「こらっ、何やってんだ!練習しろっ」
爺さんは俺に絡んでいる女子二人を叱る。少し、胸がすっとしたのは気のせいだな。
「「す、すみませんっ!先生!」」
二人は慌てて気をつけの体制をとり二人同時に一礼して爺さんに謝る。
すると女子Aはとんでもない事を言ってしまうのだ。
「あ、あのっ!この子、少しだけお借りできませんか?!ケガとかさせませんので!!」
爺さんに俺と何かをしたい女子Aは俺を指差し、借りれるかどうかを聞いてみた。というか、俺はモノではないのだがな。
「ふむ、そこで見とるだけじゃ美仁香ちゃんはつまらないかもしれんな。いいよ」
爺さんは了承した。すると女子二人は
「「やったー!!」」
ハイタッチして喜びを分かち合う。俺はそんな二人をキョトンとした表情で見るしかないのだ。
「ほらっ、行こう?美仁香ちゃん♪」
「こっちこっち~♪」
二人は俺の腕を掴んで女子だらけの空間へと誘い、俺は・・・
「わー♪近くで見ると余計にかわいい♪」
「おいで♪おいで♪」
「・・・キュンっ」
女子に囲まれたのだ。それが恥ずかしくて恥ずかしくて顔を真っ赤にさせてしまい、それを見た女子達は
「「「かわいー!!♪」」」
異口同音。以心伝心。無我夢中なのだ。
「あぅ」
恥ずかしくて変な声を出してしまった。その変な声を聞いた女子達は
『ぽぉ~・・・』
頬に朱を染め、自分の世界へトリップ。
もう好きにしておくれ・・・
「おぉ、その子か。さっき、先生といい勝負していた子」
「うーん、さっき戦っていたとは思えない・・・俺は夢でも見ている気分だ」
すると男子数名も来て俺に興味を持ったようだ。
「へ?なに?」
俺に何か用なのかと俺は首を傾げ、俺よりこの道場の生徒達の背が高いので上目遣いとなったのだ。その仕草は狙ってやった訳では無いのだが、俺の周りにいる連中はというと
『!!?』
顔に朱を染めて、俺の目線から逸らす男子と目線を逸らさない女子達。お前達の反応面白いのだが、そんなに俺は可愛いのか?うーむ、さすが美人になりえる可能性を持つ子供だ。
「・・・もうガマン出来ないっ!」
「にゅあ?!」
女子Aが突然俺に後ろから抱きついてきたので、何も対応出来なくて慌ててしまう俺。
「キャー♪あったかーい♪」
「あわわわっ」
女子Aの抱きしめを手足のみをジタバタするしか抵抗が出来ない。その抵抗のみでは抱きつきから脱出出来ないし、技があっても女性に手を出せないのだ。
「キュンっ」
「は、放せぇ~」
しかも女子Aは俺に頬ずりまでもしてきて、俺の顔は真っ赤。
「い、いいなぁー!次、私ね!」
「つ、次わたしっ!」
俺は女子達に次々へと抱きつかれ、顔を真っ赤になりつつ、とても恥ずかしい思いをしていたのであったーー。
ーーーーーー
「で、質問なんだけどいい?」
「う、うん」
ようやく女子達からの抱きつきから解放され、女子達から質問される事になったのだ。
数人の男子もどうやら興味があるようで、男女に囲まれたのだ。そんな男女を見た爺さんはというと
「ほほっ。いい機会だから今のうちに仲良くなりなさい。ワシもちょっと気になる事があるからね」
爺さんも承認したので、生徒全員は俺を囲い質問攻めに遭う事になったのだ。
「まず、ワシから。美仁香ちゃんは何の武術を習ってるのかな?ワシの知らない武術だったけど、何なのか・・・気になってね」
な、何とっ!爺さんでも知らない事があるのか?う、うーむ、爺さんはその知らない武術でも対応できるとは・・・やたら強いぞ。
「中国拳法の八極拳だよ?爺ちゃん」
『ちゅ、中国拳法?!!』
生徒全員は驚きの声をあげる。まぁ当然だろう、女の子が中国拳法を習っているなんて信じられないがな。
「な、なら、師匠とか先生とかいるの?」
今度は女子による質問だ。その質問に答えるのだが
「いないよ?」
『ええ?!!』
更に驚く生徒達。
「な、ならどうやって習っていたんだ?」
今度は男子による質問。
「本とかビデオだとかを見て独学で・・・」
『すごっ!』
俺は正直に答えたのだが、矛盾する話ではないのか?何故ならまだ7歳くらいの子供が本やらビデオやらを見て、武術なんて学ぶのだろうか?そして、数年修行したとしても強くなれるものだろうかと。
「ほほっ。いつから始めたのかは敢えて聞かないけど、スゴく努力したんだね?美仁香ちゃんや」
爺さんは優しい性格からか、矛盾をスパンと断ち切り、俺を努力してくれたと褒めてくれたので、俺は無邪気な笑顔を浮かべ
「そうなんだっ♪スゴいがんばったんだ!にひひひひっ♪」
努力した事を猛アピール。
すると女子達は
『はぅっ!』
何故か胸を押さえるのだが、な、なんだ?腹痛か?い、いや、胸だから吐き気か何かか?
「ほっほっほ。そうかそうか、えらいえらい」
爺さんは俺の頭を優しく撫でる。他の人物から撫でられたら恥ずかしくて顔を赤くなるのだが、この爺さんから撫でられるのは非常に嬉しい気がして、俺の顔はこれまでにない嬉しそうな笑顔になり
「にひひひひっ♪にひひひひっ♪」
もう笑いが止まらない。何故だろう、俺はこの爺さんが一気に大好きになってしまったのだ。性別とか関係無しに人間として大好きな存在となってしまったのだ。
この爺さんの生徒達は幸せ者だろう、こんな優しい爺さんに合気道が習う事が出来るのだから。
俺の最大限の無邪気な笑みを見た女子は
「キュンっ」
パタパタと数人卒倒。な、何だ!?何かの病気なのか?!
「・・・はっ?!ビックリした!」
卒倒した女子達はすぐに気がついた。
爺さんは卒倒した女子達の心配をして、女子達は何故倒れたのかを爺さんに話すのだが・・・訳の分からない事を言ってきやがったのだ。
「あ、あのっ。み、美仁香ちゃんがあまりにもかわいくて意識が飛んじゃいました」
「私もです」「わたしも」
俺が可愛いからという理由で意識が飛ぶなんてありえないぞ。それとも俺に特殊な力があるのか?いやいや、この世界はファンタジーな世界では無いので、女子達の発言はありえる話となってしまった。
「そ、そう。ワシは、よく分からないけど・・・まぁ、いいや」
俺への人気は主に女子だが急上昇したのを実感出来たのだが、もう俺への興味を出さないようにするなんて不可能になり、ただただ女子達に頭を撫で回されたり、抱きつかれるだけなのであったーーー。




