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第11話 ある夏の日の美仁香ちゃん

時は流れ、夏の暑苦しいある休日の日。

外は猛暑日。燦燦さんさんと太陽は輝き、その太陽は俺達が頼んでもいないのに熱を俺達人類、いや全ての生き物に分け与えてきやがる。

そんな猛暑日にやられた俺は我が家のリビングにて

「あぢーぃ」

扇風機を強の強さにして俺に風が当たるようにして尚且つ、団扇で自分自身を仰ぐのだが、全然涼しくない。なんか生ぬるーい風しかこないのだ。

なら、エアコンとか起動させたらいいんじゃね?と思う方はいると思うのだが、この西園寺家の母親は節約家でエアコンは多用しないようにと俺達家族に釘をさしたのだ。

しかしまだまだ暑いので半袖半ズボンへと着替えるもなかなか涼まない事にイラだちながらも学校で出た宿題をパパッと済ませる事にしたのだが・・・暑さと簡単すぎる問題を解かされているストレスにより俺の眉間にしわを寄せていた。

「・・・よし、終わった~。あっち~なぁ」

宿題も済ませ、大の字で寝ころぶ俺。その寝ころんだ時に肩に何かの違和感を覚えた。

「・・・?うわっ!髪伸びてる!!」

俺の髪はちょうど肩甲骨あたりまで伸びきっていたのだ。

俺は母親と今でも風呂に入っているので髪も身体も否応無しに洗ってくるので俺は自分の髪を触る機会が無いのだ。

では、鏡を今まで見ていなかったのか?なんていう疑問を思い浮かべた方もいるだろうが、これは俺が自分の姿を見るのに多少不安と恐怖があったのだ。

だってさ、見ず知らずの可愛い女の子になってるんだよ?いくら俺が女の子になりたいなんていう願いがあったとしても、まじまじと鏡なんて見る度胸が無い。ましてや、髪を触って長さを確認するなんて言語道断。男だった時は髪なんて気にしなかったから今まで気にもしなかったのだ。


しかし、今とんでもなく自分の髪が気になって気になって落ち着かない。頭を横にブンブンと振っても髪は短くならない・・・仕方ない、母親に相談しよう。

俺は立ち上がり、母親はリビングのソファーに座ってウトウトしていたので、俺はそんな母親の意識をハッキリとさせ、俺の髪を散髪屋でショートに切ってもらいたいから行かせて欲しいと願いを伝えた。


「ダメよ。女の子は髪が命なんだから」

そんな母親の髪型は背中に届く程の長さで、サラサラとした黒い髪で俺と同じ姫カットなのだ。そんな母親は娘も自分と同じような乙女になって欲しいと願っているのだろうか?

ちなみに、麗香の髪型も背に届くようなサラサラとした黒い髪で姫カットで可愛らしさをアピールしているらしい。

親子揃って同じ髪型なんて微笑ましい光景だろう。が、俺はそうはいかない。さっきから髪がまとわりつくからうっとうしい。


そんな自分の髪にイラつく俺は無理も承知で母親を説得する事にした。

「お、お願い。少しだけでいいから。うっとうしいしんだよ」

「うっとうしい?あー、成る程ね・・・はいコレ」

母親はポッケを漁り、俺にピンク色のシュシュという髪を束ねる為に使用する物と同じ用途のヘアゴムを与えたのだが・・・一体どうしろと?

「後ろが邪魔なら結んだらいいんじゃないかな?あ、ツインテールにしたいならもう一組あげよう!うふふふふっ♪」

俺の手に二組のヘアゴムとシュシュを乗っけたのを母親はニンマリと笑顔を浮かべ頷く。


「ほら、私がやってあげるからおいで?」

母親は俺が髪の結び方を知らないだろうとその顔には邪と思わせる怖い笑顔を浮かばせ、俺はその邪に怖じ気づき手も足も出せず、心が折れた。

「・・・お願いします」

「うふふふふっ♪うふふふふっ」

ーーーーーーーーーー

「キャー!!かわいい~!さっすが私の娘ね!」

「はあ・・・良かったですね。」

俺の髪型は母親によって見事にツインテールとなった。髪を留めている所にピンク色の可愛らしい布つまりシュシュが俺の幼稚さの顔とマッチし、その可愛さの余り発狂する母親。俺はただただ呆けるしかないのだ・・・誰か助けてくれー!


「それ一日中やっててよね。途中で解いたら・・・分かってるわよね?」

母親は俺に何故か脅迫する。そんな脅迫された俺は何が起こるか分からないし、何らかの罰だったら困るに決まっているから仕方なく

「・・・はい」

賛成するしかなかったのだ。


ーーーーーーー

ツインテールの髪型のまま、リビングでテレビでも見ながら団扇及び扇風機の生暖かい風をそよそよと俺の身体にあてながら、ぼけ~としていると・・・

「ただいまー!」

「「お邪魔しまーす!」」

麗香が帰って来たようだ。それと麗香の友達も遊びに来たようだ。

麗香は友達とプールに行って楽しんでいたので今まで外に行ってきたのだ。透はというと野球の練習。このクッソ暑いのによくやれるなと称賛を称えてやる俺。


「あー!!髪型変えてるー!!しかもすごい似合ってるー!かーわいーい!」

「本当だー!超かわいー!」

俺がリビングで暑さにダレていると麗香がいつも連れて来ている女友達が乱入。

そういえば、名前を言ってなかったな・・・この二人の名は

「こ、こんにちはっ。あいさんに由希ゆきさん」

一ノいちのせあい宮川みやがわ由希ゆき。この人物達はショートヘアーで肩につくくらいの長さで切り揃えその顔の作りは可愛らしい顔立ち。麗香はその人物達よりも顔立ちがいいのだが、それは胸にそっとしまっておく。

「わー♪抱っこしていい?」

一之瀬さんは俺を抱きしめてもいいのかを麗香に聞くのだが、それは本人に言って欲しい。そして断っておきたい。

「いいよ?どうぞどうぞ」

おい!コラ!何をお前勝手に許可してんだこの野郎。いや、野郎じゃないがとにかくこの野郎!


「わーい♪おいで?美仁香ちゃん」

一ノ瀬さんは座布団が敷いている所に女の子座りして、自分の太ももをポンポンと叩き俺を招いているのだが、まさか太ももに座れと言いたい訳じゃないよな?

「私も抱っこしたいっ!私の方が座り心地いいよ?美仁香ちゃん♪」

宮川さんも一ノ瀬さんに乗じてその場に女の子座りして太ももをポンポンと叩き俺を招いているようだが・・・絶対に抱っこされないといけないのか?

「す、座んないとダメ?」

「「うん」」

俺の質問に即答する二人。本当に誰かの太ももに乗っからないといけないらしい。

「私も参戦よ!」

母親はいきなり参戦して登場。そしていつの間にか女の子座りして太ももをポンポンと叩き俺を誘っていたが、こいつだけはそっとしておくことにした。


「麗香がいい」

『えええ?!!』

消去法で麗香しかいいやつが居ないので麗香を指名。全員はあ然として口は開きっぱなし。指名された麗香も驚くばかりだが、少し我慢して欲しいな麗香よ。

「ほら、座って。女の子座りして」

「う、うん」

麗香は女の子座りをして俺が麗香に包まれるように麗香の二つの太ももの間にちょこんと座り、麗香は観念したのか俺をそっと両腕で抱きしめる。


「ぁふ」

麗香の温もりで変な声が出てしまった俺。が、夏の暑さと人肌の暖かさで更に暑くなるばかりで、ちっとも嬉しくない。が、たまにはいいだろう。こういう家族愛ってやつ。そして、背中には柔らかい弾力性のモノが二つ感じるのを俺は・・・そっとしておく事にした。

「いいなぁー!!次、私ね!」

「私も!!ね?」

「うふふっ、お姉ちゃん達に好かれていいわねぇ~」

俺は麗華や一之瀬さんに宮川さんに抱かれ暑さに参る・・・もう、いい加減にしてくれぇー!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ようやく一之瀬さんや宮川さんは帰ってくれて俺は女子からの抱きつきから解放された。

マジでしんどかった・・・だってよ、ただでさえクソ暑いのに更に人肌の温もりもプラスされたから、もう汗ダラダラ。すんげー気持ち悪い・・・そして、今も・・・

「うふふ、どぉ?お母さんの温もりは」

「・・・ありがた迷惑で、すごく困っています・・・解放してください」

俺は母親に抱きつかれ、俺の力ではどうする事もできない。八極拳で撃退するにも体力もその気力さえも無いのだから対抗する術はない。だ、誰か助けてくれぇ・・・。そしてまた弾力性のモノが・・・

「でも、本当に似合ってるよね?その髪型」

麗香は冷たい飲み物を飲みながら俺達の親子愛を温かい目で見守っているばかりで助けようともしない。

が、似合っているだと?元が可愛い顔しているから可愛らしい髪型、つまりツインテールの効果によって更に可愛らしさをかもし出しているらしい。

「麗香もやってみたらどお?」

「いや、いいよお母さん。私にはその可愛すぎる髪型・・・ちょっと恥ずかしいかも」

麗香は俺を見ると頬に朱を浮かばせ照れる仕草をするという恥じらいの乙女を見せるのだが・・・俺だってさっきから可愛い可愛いと言われてなんか背筋がゾッとするのだ。

俺の気持ち分かるだろ?元は男だからカッコいいだとかイケメンだとかを言われるのが嬉しいのだが、可愛いと言われて嬉しい気持ちになる男がいるのだろうか?いるとするならば・・・まぁ、その辺の人物の事は深く考えないでおく。


しかし、俺はそれらの人物では無く、ちゃんとした男のプライドも持っているので女に抱きつかれたり可愛いと言われたりしたらとんでもなく恥ずかしい。はぁ、女ってのは大変だなぁ・・・。

「ただいまぁー」

透が帰ってきたらしく、その弱々しい声から察するに野球部の練習が酷だという事が俺に伝わる。

「あ、透ね。早く向かわないとっ」

母親はやっと俺を解放してくれて、透を向かいに行く為その場を立ちそそくさと玄関へと直行し姿を消した。はぁ~、クソ暑かった・・・今の今まで抱きつかれていたからな~・・・これを羨ましいと思ったやつは是非とも変わってくれ。そして永遠に変わってくれ。俺の気持ちは直ぐに分かるから。


「ぉ?髪型変えた?」

学ラン姿の透は俺を見て髪型を変えた事を確認してくれる。あ、そういえば何で学ランなんだ?野球部の練習したんだろ?何故ユニフォーム姿じゃないんだ?

そんな疑問を透にぶつけると。

「あ~。ほら最近暑くてさ。汗もドロもユニフォームについてさ?もう、クサいんだわ。だから、それがうっとうしくてこれからは、いちいち着替える事にした」

「へぇ~・・・大変だな」

透は私服へと着替える為に自分の部屋へと三階フロアへと消えるのを俺達は確認。

「さて、洗濯とかしなくちゃ」

母親は家事をする事が仕事なので、テキパキと動き洗濯場へと直行し、俺と麗香はポツンとリビングに残っている。

何もする事が無い俺はとりあえず自分の髪を触ってみたが・・・はぁ、それにしてもツインテールは無いだろ・・・と自分の髪型に不服がある。でも、髪をまとめないとイライラするし髪も短く出来ない。

それでは髪型を変えるか?でも、髪のまとめ方を知らない俺にはどうする事も出来ない。

いや、待てよ?普通に一束まとめたがいいのでは?でも、そんなの母親とか見たら許してくれなさそう。

それどころかずっとこのツインテールのままでいろ、なんて言われ小学、中学、高校とずっとツインテール・・・それはあまりにも酷だ。


そんな葛藤をしていると、ふと視線を移すと麗香がいる事を思い出したのだ。

こいつは髪のまとめ方とか知っているのだろうか?いやいや、女子たるもの髪のまとめ方は一つや二つは知っているだろう。そんな根拠の無い決めつけに俺は髪のまとめ方を知る為に決心し、麗香に尋ねたのだ。

「あ、あのさ麗香。このツインテール以外にさ。髪のまとめ方・・・知ってる?」

「ん?髪型変えるの?恥ずかしいの?」

「うっ、うんっ。そうなんだ。さっきから可愛い可愛いって」

「あ~・・・そういえば美仁香って心が男の子?だったよね。それじゃあ仕方ないよね?待ってて」

麗香はパタパタと走り三階フロアへと姿を消し、しばらくすると麗香の手には複数の女性用の雑誌を持ってリビングへと参上。

「ほら、髪型とかいっぱい載ってあるから選んで」

麗香は複数の女性用雑誌をリビングにぶちまけ全ての雑誌のページを開き俺に見せる。

う~ん、アップという団子みたいな髪型とかクルクルしたドリルみたいな髪型とか面白おかしな髪型が俺の目に入るのだが、いかんせん俺はまだまだ子供なので似合わなそう。


そんな面白おかしな髪型が載っている中、俺にとっては一際目立つ髪型を発見。俺はその髪型が載っているページを指さし、麗香に伝える。

「あっ、コレ!この普通の三つ編みがいい!」

三つ編みはとてもいい。三つ編みこそがシンプル・ザ・ベストな髪型なのだ。綺麗にまとめる事が出来、尚且つ見た目も可愛らしさを少し和らげる髪型なので俺にとってはベストな髪型なのだっ。

「え?アレンジした三つ編みですごい可愛いやつなんだけどコレ・・・まぁいいけど」

麗香の忠告は俺のはしゃぎによってかき消され、俺は三つ編みを覚える事に必死になっていたのであったーーーーーー。

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