第12話 西園寺家のお爺さん
時は流れ、秋のある日の休日の昼。
俺は今まで三つ編みを練習していて習得、いやマスターしたので母親や麗香の助けも貰わずに三つ編みを編めるようになっていたのだ。どうだっ、すごいだろ!
「ふっふっふ~」
俺はニヤけながらも俺の頭はサラサラの姫カットヘアーだ。
でも、俺はこの可愛らしい姫カットを変えるのだよ。
まず、後ろ髪を全て集める。そしてその集めた髪をきっちり二等分に分ける。
そして外側から内側に、外側から内側にと髪の毛を編むように交互に繰り返すだけ。毛束は常に2束で終わりまで編んでいくだけ。
最後に左右、下に強く引きながら編んでいくとしっかりと編めるので簡単なあみ方なのだ。
「これがフィッシュボーン・・・いいねぇ」
俺は洗面所の前にある鏡を利用し自分の姿を見る。俺は自分を見るのに避けていたのだが、俺はこのままじゃいかねぇなと自分に喝を入れ自分の姿を見れるようになったのだ。
ただ、やはりと言うべきかそのフィッシュボーンと名の付く三つ編みと俺の美貌に異様にマッチしていたのだ。
では、結ばずにストレートにしたらどうだ?と思ったのだが、うっとうしいからストレートは止めた。ならばポニーテールとかアップは?いやいや、それこそ可愛さが溢れて周りから可愛いだの言われるから、もうこのフィッシュボーンを相棒にする事を決意したのだ。
三つ編み姿へと変貌した俺は飯を食べる為にリビングへと移動し、西園寺家勢揃いのメンバーを目撃。ちなみに父親だけは仕事に行っている。
「わぁ、似合っているわよ?美仁香ちゃん」
「そ、そうですか?」
母親は俺の三つ編み姿を見た瞬間褒めるのだが、娘想いのいい母親で良かったなぁ。
「あとお父さんからの伝言。美仁香ちゃんは病気じゃないだって」
「「「え!!?」」」
母親の発言に驚く俺達三兄妹。な、何で分かるんだ?一度も病院で調べてもらってない筈なのに?どうしてなんだ?
「実はお父さんが面白い資料を見つけたらしくてね?で、美仁香ちゃんと同じような事を言っている患者が何人かあったらしいのよ」
俺と同じような事?どういう事だ?
俺は分からないので首を傾げ、分からないとを母親にアピール。そのアピールを理解した母親は頭を縦に振り、柔らかい笑顔を浮かべ俺を安心させるかのようだ。
「私達を知らないって今年の春に言ってたわよね?」
「は、はい。言いました」
「で、八極拳を習っている、と言ったわよね?私達家族は美仁香ちゃんを道場もそういった資料も与えてなかったのに、これはおかしいと思ったらしくて、今まで色々調べるのに時間がかかったんだって」
「・・・」
俺はこの母親の言いたい事は分かっていた。
でも、それを家族全員の前で言うつもりなのか?俺が西園寺美仁香という女の子じゃなく別の人間。つまり、多重人格のせいでこの西園寺美仁香の人生をめちゃくちゃにしてしまっている事を・・・いや、母親は病気では無いと断言したから病気の線じゃないとするとどうなんだ?母親よ。
「美仁香ちゃんは『前世の記憶』を持ってるわ」
「「ええっ?!!!」」
兄妹は驚きの声をあげる。それはそうだろう。前世の記憶なんて小説や漫画じゃあるまいし、そんなもんファンタジーの世界のみで適用されればいいじゃんと信じてはいない。実際、俺も信じないのだが美仁香になる前の記憶はある。八極拳も中学生までの記憶も。実の両親や友人の事だってな。
「でも、一つだけ分からない事があるんだって。前世の記憶を持っているとはいえ、私達家族の事を知らないなんておかしすぎるって。物心だってちゃんとついていた筈だし、ほら、透や麗香の事はお兄ちゃんお姉ちゃんって言ってたでしょ?」
ま、マジでか!?俺は驚きの表情で兄妹の表情を見ると、俺の言いたい事が分かったのか頭をこくりと頷けさせる。
「その事をお父さんは私に話した後、すごくいい顔して『医学にはまだまだ分からない事があるんだ。だから面白い!』って♪うふふふふふっ」
母親は微笑みを浮かべ俺を見るのだが、俺はただただ呆けるしか出来ない。
「だから頭もいいし、僕なんて言い始めるし、敬語も使い始めるし、いい子にもなる訳だわ~。さすが私の子!」
母親から頭を撫で回され、髪がクシャクシャになるのだが、どうにか解放し髪を綺麗にハネを直す。
「と、いう事でこの美仁香ちゃんは私達が知っている美仁香ちゃんよ!ちょっと変だけど」
ちょっと変は言い過ぎなのだが母親よ、それでいいのか?俺は釈然としないのだがな。
「まぁ、それはそれでいいけどね」
「病気じゃなかったら何でもいいよ」
兄妹は安心のあまり胸をなで下ろす。はぁ、皆がいいなら俺もいいって事でいいんだな?
「あ、それはそうと、今日ね?お爺ちゃん来るんだって~」
母親はのんびりとした声で誰が来る事を全員に報告するのだが・・・誰だ??お爺ちゃんという人は?
「「やったー!」」
二人の兄妹はガッツポーズ。どうやらお爺ちゃんとやらを好いている様子だ。
が、俺だけが知らない存在なので母親に聞いてみると・・・
「あ、そっか。お爺ちゃんはね、美仁香がまだ小さい頃にね?ある仕事に熱中してて、今の今まで仕事が忙しくて会える機会が無かったのよ」
「な、何の仕事ですか?」
「それはね・・・」
母親がお爺ちゃんの正体を明かしてくれる・・・が、タイミング悪く玄関からインターホンが鳴り、母親は来客の元へと向かいに行き、しばらくすると・・・
「おー!元気ー?!」
ガリガリに痩せていた坊主頭の小柄な60歳ぐらいの爺さんと母親が登場。爺さんの身長は約155センチ程の小ささだ。そんなお爺ちゃんを見た兄妹はというと・・・
「「勝負だぁー!!」」
兄妹はお爺ちゃんに向かって猛突進!
な、なんて事を爺さんにやってやがる!爺さんはガリガリだし年寄りだから大ケガするぞ?!
「またかい・・・」
「あ、危ない!」
俺は二人の突進を止められず、母親すらも止めず、そればかりか笑顔を浮かばせていたのだ。ぎ、虐待しているのか?この爺さんを。
しかし、俺は目を疑ったのだ。爺さんが二人にやった事を。
「ふんっ!」
「うわ?!」「キャッ!」
爺さんは二人の手首を掴んで身体をふわり、と軽々しく浮かばせ、二人は驚きのあまりトスンと床に尻餅をつく。
「へ?へ?へ?」
俺は大混乱。細い身体の爺さんがまだ子供とはいえ二人もの人間を軽々しく持ち上げる力があるとは思えない。何者なんだ?こいつは。
「ん?誰?この子は」
爺さんは俺と目を合わせ母親に俺の正体を聞く。爺さんは俺が末っ子である西園寺美仁香という女の子だという事を知り、爺さんは。
「あー!はいはい!あの子か!」
手をポンと叩き俺を思い出す。そんなに会っていなかったのか?俺達は。というか、美仁香と爺さんは。
「もうこんなに大きくなったのか!ん?名前は何て言うのかな?お嬢ちゃん」
爺さんはしゃがみこみ俺と目線を合わせ、俺の名前を聞きたい様子。俺は名乗る事にした。
「さ、西園寺美仁香です。お爺さんは?」
「おー、よく出来た子だ。ワシは西園寺豪三だよ」
「よ、よろしく」
爺さんに握手する。握ってみたが、やはり年のせいかその力は弱々しい。今の俺よりも力が同等以下と思われるが、やはりおかしい。
「うん?お前さん、武術を習ってたりはしてないかね?」
爺さんは俺に何かを感じたのか武術を習っているかを聞いていたのだが、何故そんな話題を言えるのかサッパリだ。
「い、一応八極拳を・・・」
「おおっ!!それはスゴい!どうだ?近所にあるワシの道場に来てみんか?そこでワシと一勝負しよう!」
な、何を言っているんだ?この爺さんは?それに道場?何の道場なんだ?
俺の頭の中で疑問が疑問を呼び、最終的には思考回路がショート。
そんな俺を見かねた母親は、俺に説明してくれるので、その説明を聞いてみる事にしたのだ。
「このお爺ちゃんはね?合気道の達人なのよ。その道の人達からは格闘技の神様と呼ばれていてテレビの取材とか色々あったらしいのよ~」
「あ、合気道?!」
合気道とは円の動きを多用して合理を持って相手を制する旨とする武術。
が、爺さんが世界最強だと?な、何だか背中がゾクゾクしてくるのだが・・・戦いたいと言いたいのか?俺よ!たとえ無謀すぎる戦いという事が分かっていてもそれでも戦いたいのか?
あー!くそっ!俺はこんな戦闘狂じゃない筈なのに!ちくしょう、戦えばいいんだろ?俺よ!
「う、うん。ならジャージとかに着替えていい?一応、動きやすい格好で・・・」
「もちろん、いいとも。好きなように」
一応、敬語は止めておく事にした。何故ならばこれ以上俺に興味を持たれたくなかった。今後もそうしておこう。目上の人とかは例外でな。
「爺ちゃん!俺も、もう一回戦いたい!」
「私もっ!」
なかなか会えないからか透や麗香は爺さんに詰め寄り、爺さんは笑顔で承諾し二人はこれまでない喜びを分かち合っていた。
「ただし、美仁香ちゃんの後だね。今さっき戦ったばかりだからね」
「「うん!」」
こうして俺達は爺さんの道場に行く為に、そしてこれから戦う為にジャージへと着替え、近所にあるという道場へと母親同行も付き、歩んでいたのであったーー。
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