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第四章 はじめての贈り物 2





「ぜっ────んぜん! 仕事が終わらないわ!」



 鉱山の街、高山たかやまへとやってきた。

 険しい山の中に守られるように広がる街は、ここが山里だと忘れてしまうくらいに豪華絢爛に造られている。煌びやかな家々が連なり、飯処も高級志向、大通りには宝石店が立ち並ぶ。ネオ大江戸の一等地をも思わせるこの街は、鉱山産業で潤っている大富豪の街なのだ。良質な鉄鋼が取れ、採掘の際には様々な宝石も採取される。

 将軍様一族である、徳川家へ献上される飾り物も、ここ、高山で採れる貴金属が使われるのだ。

 

 もちろん、私の所有する七姫の証である首飾りも、ここ高山の宝石と職人が作ったもの。


 宝石に興味はないけれど、豪華な中に繊細さを秘めるこんな仕事ができる職人のいる街を訪れるのを、私はとても楽しみにしていたのだ。


 そ! れ! な! の! に!


 到着と同時に宿屋入りを迫られ、現在私は、目の前に山積みになった書類の山の中で埋もれている。

 高速簡易音声伝書鳩デンショバトは、先ほどから次々と届いており、私はその一つ一つに目を通しながら、領地運営の指南書を作成し、デンショバトにそれを託していた。



 そう。

 私の領地である東の土地は、この時期は農作物の収穫の真っ只中。収穫の報告・それに基づく領地内での食物の供給量・年貢の配分、など、この時期は一年の中でも繁盛期。

 それに加えて、花の都、花京町の領地運営も、なぜか将軍様から名指しで指名されてしまったのだ。


 ……花京町の悪代官成敗はお忍びで成功させたはずなのに! 領主がいなくなったあの町の管理を、どうして私がすることになっちゃったのよ! 花京町に隣接する領主がする仕事じゃないの! しかも──しかも!!! どうして、将軍様が直々に私を指名するのよぉぉぉぉぉ!


 なんて、愚痴をこぼしたところで仕事は減るものじゃない。

 それに、任されたのであれば最後まで責任を持って領地運営をするだけ!


「それにしても、花京町の内情は……、あの華やかな都とは思えないほどに、ずさんだったのね。これは、裏の花街で大金が動いてしまうのも……嫌ですけど、納得だわ……」


 蓋を開けてみれば花京町の内政は、私が思っているよりも深刻なものだった。

 民が苦しみ、一部の金持ちが甘い汁を啜る──まさに、狸に拐かされた惨状。

 私は切ないため息を漏らしつつも、私が領主になって良かったのかも──と考えを改め直した。このまま他の領主へ引き継がれていたら、きっと、また同じことの二の舞になっていたはずだ。


「姫様? これはなかなかに骨の折れる改革になりそうですね……」


 宿屋にいるときは私のことを『姫様』と呼ぶスーさんとカカさんは、私の書類整理を手伝いながら私と同じようにため息を連発している。


「スーさんの言うように、これは改革になるわね。それだけの大義、口で説明するだけでは、要領が悪すぎるわ! だから、私、考えました! 私の領地から何人か仕事のできる子たちを、指南役として送らせることにするわ!」


「ですが、姫様? 差し出がましいかもしれませんが……他の領地からの指南役を快く思わない者もいるでしょう?」と、カカさんが遠慮がちに声を出す。


「えぇ、わかっているわ。だから、表向きは貿易として行うつもりよ。花京町は山の中の街、つまり、流通が滞る場所。私の領地との直通貿易をすることで、花京町で入手することのできない品を卸すことができる。領地運営に長けた者を、その貿易相として花京町へ着任させるわ」


「姫さん、俺は領地とか運営とか頭の良いことはわかんねぇけどよ。それじゃ、俺たちの街のが不利じゃねぇか」


 お茶を啜りながら私たちの話を聞いていた銀之助が口を挟む。


「ふふふ、そこでよ! 花京町に送る貿易相は女の子にするわ! 仕事の名目で花の街に赴きたい子はいっぱいいるだろうし、これを機会に『私の領地の女の子は頭がいいのよ』って、外の領地へ見せることもできる!」


「あら、やだ! 姫様ったらしたたかですわね! 花京町を改革しながら、この国の意識改革までしてしまうおつもりかしら」


 カカさんが「ふふふ」と楽しそうに声を上げる。


「私の二つも領地運営をさせるのよ! これくらいの採算は取らせてもらうわよ!」



 私は自慢げに鼻を鳴らした。仕事は山積みだ。だけど、楽しい気持ちは止まらない。

 やってやろうじゃない!?


 ダメダメ領地を、名実ともに『花の街』へと返り咲かせてあげるんだから!





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